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異能×屍 -終末における俺の異能の有用性について‐  作者: ペリ一
異花の章

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閑話休題 幽霊の悪戯

 異能者は隔離される。


 人によっては「その言い方は不適切だ」と言うだろう。


 だが事実は事実。異能者は隔離されているし、されるべき存在なのだ。


 それは何故か。

 この現代社会は、異能者というとびきりの異端者を許容できる程の幅を持っていないからだ。


 異能者達の為に作られた学園都市…

 アレは端的に言ってしまえば檻だ。


 これに異を唱える者も多いだろう。

「保護しているだけだ」「選択の自由はしっかり保証されている」


 だが目的が何であろうと檻は檻であり、その選択というのも檻の中で調教された結果導き出される物だ。



 …少なくとも、俺はそう考えている。


 そう考えた上で、その措置は正しいと考えているのだ。


「こんな事が出来ちまう訳だしなぁ」


 このクラスで一番…ではなく五~七番目程度の成績の奴等の解答を適度に覗きつつ、俺は自分のテストの答案用紙にそれを書き込んでいた。


(完全にチートだよなコレ)


 この俺に宿った異能は、自分の幽体のようなモノを飛ばし、そいつと感覚共有ができるという物だ。


 さて、話は少し遡り、檻…学園都市についての話に戻る。


 檻はあるだけでは意味が無い。

 中身が必要だ。

 むしろ中身こそが檻の本質であると言っても良い。


 中身を得るためには捕縛し、収容する必要がある。


 その捕縛、収容の手段が学校毎に年に数回行われる異能検知、或いは…

 異能隊による確保、だ。


 異能検知に関してはそこまで特筆するような事はないだろう。

 あるとすれば、俺が何故その検知に引っかからなかったのか、という事だろうか。


 まぁとりあえず今は異能隊について語ろう。

 異能隊というのは、暴走した異能者や、犯罪に手を染めた異能者を捕縛、及び無力化する為の組織だ。

 この暴走した異能者や犯罪に手を染めた異能者の中でも、特に悪質な者は『特別指定異能者』と呼ばれる。

 特別指定異能者として、実質全世界で指名手配状態となった者は、常に米国の異能精鋭隊達に目をつけられ、事ある毎に命を狙われるようになる。


 …俺も異能所持の未申告がバレたら、異能隊にしょっ引かれる羽目になるのだろうか。


 さて、ではお待ちかねの俺の異能が如何にして検知をすり抜けたかについてお話…




 キーンコーンカーンコーン…




「もうこんな時間か」


 俺にとってテストは作業だ。

 だからこうやって誰に語るでもない自分語りを脳内で展開していた。

 さて、今回も良い感じの成績をとってそれなりの評価を得るとしますかね。


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「あー、疲れた」


 ホームルームも終わり、皆がこの後の予定やら部活の話題やらでがやがや騒ぐのを尻目に、一人呟く。


 全くもってつまらない場所である。

 友人を作る事には何度か挑戦したがどうも俺は根底に選民意識というか、他人に対する優越感を抱いており、しかもそれが表面に出てしまうらしい。

 つまりは、全て失敗に終わっていた。


 傍から見れば俺は中の上程度の成績の根暗男だ。

 そんな男から見下されて不快な気分にならない者などいないだろう。


「まぁ徐々に上げて、上の中程度にしてそこそこの大学にゃ行くつもりだが」


 廊下を歩きながらぶつぶつと一人喋る。


 正直異能なんて要らないからイケメンにして欲しい。

 そう思った事も一度や二度ではない。


 だがまぁ


「こうして楽してそれなりの人生歩めるんならまぁ、それでいいか」


 そんなもんである。


 別にそこまで大きな物は望んじゃいない。


 そんな事を考えながら下駄箱から靴を取り出す。

 何故か解けていた靴紐をせっせと固く結びなおしていると、コツコツという足音とその足音の主であろう生徒達の話し声が聞こえてきた。


「見たかよ?あの狂人のニュース」


「あー、見た見た。やっぱアレってゾンビなのか?」


「え?何?巨乳のニュース?」


「お前の耳おめでたすぎるだろ」


「え?巨乳がおめでた?」


 …一人、ド級のアホが混じっているようだ。

 ようやく履き終えた靴のつま先をトントンと軽く床にぶつけて足に馴染ませた後、置き傘をパクり、雨の中校舎を出た。


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「うーん、暇だ」


 課題は解答を写せば済むような物をピックアップしてやっている。

 その為、結局は単純作業しかやっていない。


「あー、そうだ。テスト中やってた自分語りの続きでもやるか」


 俺が検知をすり抜けた理由。

 それを説明するにはまず、異能が局所的に宿る事がある、というところから説明せねばなるまい。


 異能が局所的に宿るというのは

 例えば右腕だけに反映される異能や、ある臓器にだけ異能が宿るという現象の事だ。


 酔い知らずアンリミットブーザー模写の右腕コピーアームなどが最たる例か。


 これらの異能は、ある特定の部位以外を検知しても、異能者判定が出ないという点で共通している。

 酔い知らずアンリミットブーザーなら肝臓、模写の右腕コピーアームなら右腕。

 その部位にしか異能が宿っておらず、他は一般人と変わらない。


 つまりは、模写の右腕コピーアームの保有者は、右腕をなんらかの形で検知装置内に入れないように出来れば、異能者判定をされる事はないのだ。


 ここまで言えばだいたい想像がつくだろうが、俺の異能は局所的に宿るタイプの異能だったのだ。


 この俺の異能。

 それは


 幽霊の悪戯ポルターガイスト精神に宿る・・・・・異能だ。


 精神というとかなり曖昧な物ではあるが、そうとしか形容出来ないのだから仕方ない。


 異能の効果について詳しく説明しよう。


 この異能は自分の姿をした幽体のような物を操れ、その幽体と感覚を共有できるという物だ。

 そして、幽体にはある程度実体を持たせる事が出来る。

 だが、実体を持たせれば持たせる程、最初は透明だった幽体の姿がハッキリと見えるようになってしまう。


 そして、実体を持たせすぎると、おそらく、その幽体が俺になる。


 試した事はない。

 …もしかしたら、擬似的な転移が出来るのかもしれないが…


 それ・・は果たして俺なのか。

 俺と同じ記憶と思考を持った何かなのか。

 それとも単純に位置が入れ替わるだけなのか。


「…異能名、沼男スワンプマンでも良かったかもな」


 自嘲を浮かべ、解答を写し終えた課題をバッグの中に放り込む。


 そもそも幽霊の悪戯ポルターガイストなんて名前は俺が考えたものだ。

 まぁ…その時が来るまで異能名はそのままでいいか。


 …そんな日がくるとは思えないがな。


 そんな事を考えながら消灯し、ベッドに横たわる。


「静かで、平凡で、平和な日々だ」


 人生ってヌルゲーだな。そんな事を考えながら俺は眠りに落ちた。





 その根拠の無い虚妄が打ち破られるまでそう時間はかからなかった、というのは言うまでも無い事だろう。

沼男スワンプマンというのは、とある思考実験の事です。

興味を持った方は是非検索してみてください。

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