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異能×屍 -終末における俺の異能の有用性について‐  作者: ペリ一
異花の章

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第6話

かなり遅れてしまいました。

これから投稿ペースを上げていきますのでご容赦を。

 とある民家。

 そのリビングにてその男達は集まっていた。


「着いて早々ドンパチ……愉快な奴等ですねぇ」


 ヒャヒャヒャ……と勘に触るような引き笑いをするのは、ギラついた眼に生え際の後退し始めた髪を諌めるかのように撫で付けている小太りの中年。


「元気が良くてよろしい……さて、幸運猫嬢はどうしてる?隙がありそうなら攫ってしまおうじゃないか」


 その中年に対し幾分か偉そうな態度と口調で話しかけたのは、身体中に宝石の装飾品をつけ、高価そうな服を着込んだ若い男。


「ええ、そうですね……攫うってぇと」


「俺の空間接着スペースグルーでちょちょっとやっちまえば簡単だろ?」


「ひへへ……そうでしたね」


 はっ、とその中年を鼻で笑うと若い男は身につけた宝石をジャラジャラと触り、満足気な笑みを浮かべた。


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「だいたいこの辺ね」


「運転お疲れ。じゃあ行こうか」


 マーティンが軽い足取りでヘリから降りる。

 そしてそのマーティンに慌ててついて行くマーキス。

 そんな2人……厳密には3人なのだが……を見送ると、マリアも地上へと降り立った。


「ちょっと待ってよ!」


 マリアを置いてずんずん先に進んで行く2人に対し声を張り上げる。

 だが、2人は何故か、気が付かない。


「……そっか」


 これだけで何かを察せる程に、マリアはこの状況を知っていた。

 自らの異能、幸運猫フォーチュンキャットは他者に観測の意を持って見られると発動出来ず、またそれを維持できない。

 従って一度この異能が発動すると、収束する地点まで誰にも観測されない世界が選ばれる。


「私は発動したつもりなんて無いけど」


 その抗議の声を聞き入れる者も当然居ない。

 とはいえ。

 この異能は意味なく発動した、という事はマリアの経験上存在しない。

 とりあえず何か、何かを成す必要があるのだろう。


「じゃないと世界ごと捨てられちゃうし」


 そんな達観したような独り言を漏らすと、マリアは歩き出し……そして地面に沈んだ。


「……!!」


 自分が地面と一体化したような意味不明な感覚。

 だがその感覚もすぐに終わった。


 ポス、と地下にある空間に着地する。

 来た道を慌てて起き上がって確認してもそこにはただ壁があるだけであった。


「何……今の……」


 未だに身体の震えが収まらない。

 何かの異能だろうか。

 だがアレは明らかに……


「トンネル、効果……?」


 所謂、壁抜けである。

 だがそんな事が起きる確率はゼロに限りなく……いやゼロと言っても良いレベルで低い。


 ……そう


 人は日々、あらゆる物に接触している。

 だが、身体の部位が急にめり込んだ、などという話は古今、聞いた事が無いはずだ。

 それは最早、ゼロと言ってしまっても差し支え無いのではないだろうか。



 ……だが、ゼロでさえ無いのなら。


 並行世界を無限に広げる事が出来れば。


 無限に試行を重ねれば、どんな確率も100%にする事が出来る。


「う、おぇ……」


 いったいこの現象が起きる世界が出来るまでいくつの並行世界が生み出されたのか。

 それを考え、そして自分はその世界の屍の上に今から立つ事になるのだ、という事実に思わず吐き気を催した。


「う……はぁ……はぁ……」


 なんとか吐き気を堪え、周囲の状況の確認を行う。


「……何あれ」


 すると、外の光が……いや、歪に裂けた空間の向こうに街並みが広がっていた。


「……ジャパン……フクオカ?」


 その空間の近くに下手くそな字で掘られた地名を読み上げる。

 おそるおそる手を伸ばし、向こう・・・の地面に触れる。

 そしてそのまま恐る恐る、といった体で向こう側へ降り立った。


 すると、マリアが降り立つと同時にその歪に裂けていた空間が閉じていった。


「む……文字が読めないのは困るわね」


 その街の至る所にある看板。

 一部、外国人向けに英語の表記もされているものはあれど、何のガイドも無しにこの場所に何があるのか把握するのは難しい事であった。


「まぁ何にせよ、とりあえず食料確保よね」


 この天性の切り替えのはやさが無ければこの少女はとっくに壊れていたであろう。

 たはー、といった感じでお腹をさすりつつ、マリアは屍の闊歩する街へと歩みを進めたのだった。


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(非常に不味い事になった)


 ある民家の一室、煌びやかな装飾に身を包んだ男は焦っていた。


空間接着スペースグルーで作った通路……誰か勝手に通りやがったな!?)


「……どうした?」


 動揺が表情に出ていたのだろうか、隣で退屈そうに雑誌を読んでいた男がこちらの様子を伺うように身を乗り出してきた。


「いや、何でもない……所で、あの異能具売りの男は一体何処に消えた?」


「そぉれがさっぱりでして」


「……ッチ」


 使えない奴だ。

 だがまぁ正直聞くまでも無いだろう。


 あいつは俺がここの民家の地下室に作った通路……海外への通路の目の前に転移したに違いない。


「最悪の場合も考慮して動くとしよう。少し出る」


 何者かの出入りを認知した後、反射的に閉じていた空間を再び開く。


「何やらしくじったみたいだな。まだ続いている現象なら無かった事にしてやるが?」


 空間をくぐる際に、部屋の最奥で偉そうに椅子に座り踏ん反り返っていた男が嘲笑と共に声をかける。


「まだ起こった事かどうかわからねぇよ。ただ確認するだけだ……それにそんな小さな現象、あんたには掴めないだろ」


 けっ、と吐き捨てると空間接着の保有者は、空間の穴の向こうへ飛び込む。

 そして、その穴はゆっくりと閉まっていった。


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「完全に逃げられてしまったようだね」


「そのようです」


 マーキスとマーティンは途方に暮れていた。


 突如として消えた異能具売りのジョン。

 転移系の異能具を使った事はすぐに分かったが、転移の座標までは割り出せずにいた。


「……マリア嬢も気が付けば消え……いや、単に拡散状態に入っただけかな?」


「と、なるとこの世界線はどうなるのでしょうか」


 マーキスの問いにマーティンは少し考えた後。


「さて。どうなのかな……そもそもあの異能……幸運猫フォーチュンキャットはマリア嬢の意思だけで決まる訳でも無いみたいだしね」


「とは言えあの男に逃げられるのは不都合なのでは」


「そりゃ僕達にとっちゃ不都合だろうさ。でもマリア嬢……もっと言えば大いなる意志にとってはどうかな?」


「はははは!!隊長、あんた大いなる意志なんて俗説信じてるのか!?あんなカルト宗教染みた考えを!」


 マーキスの肩からニョキっと顔を出したルーカスが可笑しくて堪らない、と言った感じで言葉を発した。


「……だが、それに準ずる物があるはずだ。じゃなきゃ説明がつかないだろう?」


 ……大いなる意志。

 大いなる意志……つまり全ての創造神はこの世界を見ており、幸運猫の異能はその意志を伝える為の媒体であり、マリアはその巫女だ、という考え方……いや、宗教の1つである。

 この教団による研究所強襲事件は度々起きており、異能研究団体や政府から危険視されている。


「……隊長。それは異能隊である我々が間違っても言って良いような事ではありません」


「確かにそうだけどね。でも教団員や教団のやり方はともかく……僕はあの思想が全くのデタラメとも思えないんだ」


「ここでの話は聞かなかった事にしておきます……とりあえず、因子数値の上位者及び異能具売りの捜索にうつりましょう。マリア嬢はあちら側からアプローチが無い限り接触は不可能ですし」


「そうだね」


 そう言うと一行は町の奥へと歩を進めた……

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