第3話
そして話は冒頭に戻る。
すっかりデッドタウンと化した校下街。
下の方をゾンビが這いずる音、あとは時折聞こえる呻き声。
それ以外は何も無い。
もうわかっていると思うが、やはり狂人はゾンビであった。
「……良い、日光だ」
栄養素が補充されていくのがわかる。
ついでにあの時掲示板に触発され購入したソーラー充電でスマホを充電する。
実はあの後も何故かネットが一部使えているのだ。
特にあの掲示板が使えるというのは俺の精神面なおいて多いにプラスとなった。
「……どういう原理なんだろうな」
そんな事を呟きながら俺は
【超光合成】終末の救世主part14というスレッドを開いた。
あ、このスレッド名は俺が付けたんじゃない。
というかこのスレッド自体が勝手に作られた物だ。
16:超光合成さん
今日は晴天なので日光浴でーす
17:名無しの屍さん
おお!超光合成さん生遭遇!記念日パピコ
18:名無しの屍さん
>>16
またマンションの屋上ですか?w
「まぁ、そこしか無いわな……」
俺は、今この世界において一番死から遠い存在と言えるだろう。
誰がいつ死ぬかわからない中、死ぬ事が無い、という人物と繋がりを持ちたくなるのは当然の事だ。
俺とこのスレッド住民は、互いに精神を保つため、共依存の関係を築いているのだ。
……だが、俺は、今日。
26:超光合成さん
前もさ、「胃に何か入るわけじゃないから飢餓感はえぐい」って言ったっしょ?
なんか食い物取りに行ってみよっかなって。
アドバイスくれない?
ー
行動をおこしたい。
俺は人間だ。植物ではない。
だがこのままこの生活を続けてみろ。
植物と何が違うんだ?
そんなのは、俺が認めない。
俺は、人間だ。
26:名無しの屍さん
ちょwwwwww
そんなお戯れをwwwwww
27:名無しの屍さん
やめとけ。マジで死ぬから
「……」
俺は無言で。
28:超光合成さん
俺は人間なんだ。
植物として生きるくらいなら人生全うして死んでやるさ。
そう、書き込んだ。
すると。
29:プロサバイバーさん
すまん、別スレから失礼する。
俺のスレに来てくれないか?
色々と教える。
30:名無しの屍さん
>>29
プロサバキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
31:名無しの屍さん
神が2人揃った……これは勝つる!
「プロサバイバー……?」
自分のスレッド以外はあまり確認していなかったが、そこそこ有名なやつらしい。
「お前ら俺がサバイバル術教えてやるから生き残れpart9……なるほど」
掲示板の住民達にサバイバル術を教えているスレッドらしい。
そこのスレ主がこのプロサバイバーなんだな。
105:超光合成さん
誘導されて来ました。
ここで良いのかな?
106:プロサバイバーさん
>>105
いらっしゃい。ここで合ってるよ
107:名無しのサバイバーさん
ちょw終末の救世主さんじゃないですかーwww
108:名無しのサバイバーさん
こ れ は 神 ス レ 確 定
「その呼び名はマジで恥ずかしいから勘弁してくれよ……」
誰だ最初にスレ立てしたやつ。
ほんま許さん。
112:プロサバイバーさん
まず周囲の状況を教えて貰っていいかな?
113:超光合成さん
あ、写真送ります。
初期の頃に撮ったのがありまして。
状況はその時と変わってません。
114:プロサバイバーさん
……身元バレとか大丈夫?
116:超光合成さん
来れるんなら来てみろって感じですねw
117:名無しのサバイバーさん
一部の信者が食いつきそうではあるよな。
118:プロサバイバーさん
まあ本人は良いらしいし……
じゃあ写真お願いします。
「えと、コレと……あとコレと……」
写真のデータごちゃごちゃだな……
後で整理やるか。
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216:プロサバイバーさん
んじゃ最後に一応、もしもの時の戦闘手段を確認するよ。
何がある?
217:超光合成さん
マチェット
バール
シャベル
あとは異能の超光合成なんですけど
一応、カロリー消費で肉体強化出来ます。
218:名無しのサバイバーさん
>>217
新事実
219:名無しのサバイバーさん
>>217
おい!俺、あんたのスレ常連だけど知らねぇぞぉ!!
「あれ、言ってなかったっけ」
俺はぽつりと呟いた。
肉体強化と言っても実際の異能の、肉体強化等にはかなり劣る。
カロリー消費を気にせず馬鹿みたいに使えばそこそこかもしれないがそんな事が出来るような環境ではない。
224:プロサバイバーさん
なるほど。いいね。
バールは所持して、マチェットは腰に下げておこうか。
死にそうになったらその異能を遠慮なく使う事!
他の所持品はさっき言った通りだね。
頑張って生き残ってくれ。
実は俺も超光合成さんのスレッドの常連なんだ。
「……そうだったのか」
そうか……やはり持つべき物は常連さん……っ!
プロサバイバーさんっ!俺行ってくるよ!
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呻き声が去ったのを確認し、路地裏をそっと進む。
「……ふー……」
やばい。こんなに緊張感があるなんて。
既に帰りたい。
なるべく腰を屈め、音が出ないよう慎重に歩き進む。
「ヴー」
驚いても挙動に出してはいけない。
そして、1度か2度、戦闘があるのは避けられ無いだろうとプロサバイバーさんは言っていた。
大切なのは、叫ばれる前に殺す。
集団でいたなら即時撤退。
「……」
ちょっと自信が無いので軽く肉体強化を施しておく。
「……ヴァー…ウ……」
スマホの写真機能をうまく使い、道の先の状況を確認する。
持ってて良かった。無音カメラ。
……なるほど。1体か。
他の道にわざわざ迂回するのもあれだ。
近づいて来てるようだし……近くまで来た所をこのバールで……!
もし知人でも……容赦はしない。
ゾンビ共は、既に死んでいる。
なら死体への冒涜を、さっさとやめさせてやる事が一番の供養……ッ!!
そう考えろ。そう、プロサバイバーさんは言っていた。
「……ヴ」
「……ふッ!!」
短く息を吐き一気に力を込める。
そして通り過ぎようとしたゾンビの後頭部目掛けバールをフルスイングした。
まだそれだけでは人体は破壊しきれない。
フラつき倒れたゾンビの首元にマチェットを突き刺す。
ガッ!という硬い手応えの後、ゾンビは完全に動きを停止した。
……やれた。
俺でも、やれたんだ。
「……」
無言でマチェットやバールに付着した血や……肉片を拭き取りつつ先に進む。
「……深く考えるな」
これは殺人じゃない。
だってアレは既に死人だ。屍だ。
……死者への冒涜をやめさせたんだ。
だが、俺は、先程まで最高の味方だと頼もしく思っていた武器達が
「お前はもう後戻りの出来ない所に来たんだぞ」と、罪の意識を膨らませてくる。
バールを握った右手が、どうしようもなく重く感じた。