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異能×屍 -終末における俺の異能の有用性について‐  作者: ペリ一
異花の章

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第5話

「……あれが異能学習人形って事だよねぇ……」


「隊長……どうします?」


 マーキスは目の前で蠢く不気味な人形から目を離さず、隊長に支持を仰ぐ。


「そうだねぇ……ちょっと大人しくしてて貰うとしようか……ッ!」


 そう言いマーティンが人形を地面にめり込む程に重くする。


「……わざわざ学習材料を渡すのか」


 地面に伏したまま異能具売りの男が呟いた。


「それはどういう……!?」


 その男の呟きに反応しようとした瞬間、バチバチと何かが激しくぶつかり合うような音が響く。

 そして、地面にめり込んでいた人形がゆっくりと、立ち上がり始めた。


「た、隊長!!」


「分かってる!!おそらく私の異能を学習した……ぐっ!!?」


 瞬間、マーティンが頭を抱え倒れこむ。


「隊長!!」


 心配するマーカスをよそに、マーティンは口元に笑みを浮かべながらふらふらと立ち上がる。


「はははは!!!凄いな、脳を直接地面にぶつけたみたいな痛みが襲ってくる……領域系の異能がぶつかり合うとこういう事が起きるんだねぇ!!この脳の痛みは……やはり異能に観測という行為が密に関わっている事の証明かもしれな……がぁっ!?」


「隊長!!無理をしないで下さい!!……このままでは……」


 再び倒れ込んだマーティンを人形から守るように立ちつつ、マーティンに撤退を促す。


「はぁ……っ……はぁ……っ……撤退するべきかもしれないね……だけどね、思い出したんだ……何故今まで忘れていたのか……まぁおそらくそれも含めて彼女の能力なんだろうけどね」


 正に満身創痍といった状況の中、息を整えマーティンは。


幸運猫フォーチュンキャット……マリア嬢は、どこに消えたんだい?」


 そう、マーキスに問うた。


「……!!……ルーカス!見てないか!?」


「……あー、畜生、俺だけでも助かろうと思ってたんだがなぁ……マリアちゃんはヘリ降りてからは見てねぇよ」


「……だ、そうです隊長」


 マーティンは部下2人を一瞥し、立ち上がろうと抵抗を続けている人形を見据えた後。


「こりゃ駄目だね……正直甘く見てたみたいだ……まさか初手で詰むとは……しかも撤退も出来るか怪しいレベルと来た」


 せめて。

 この可能性を幸運猫フォーチュンキャットが選ばずに、他の可能性を選び収束してくれたら。

 マーティンはそう願いつつも、この世界が選ばれなければ自分達はどうなるのか。このままこの世界は続くのか、それとも……

 そんな、恐怖とも畏怖ともつかぬ感情を抱いていた。


「直面して初めて分かる恐ろしさ……か。なるほど、これはお偉いさん方が恐れるはずだ」


 勝手に世界が産まれ勝手に死ぬ。

 自分がその死ぬ世界の住民にならないという保証も無い。


 自分を心配する部下の声が何処か遠くから聞こえるようだ。

 ……いや、なんとなく直感で分かってしまう。

 収束の時が近い。

 そして、おそらくこの世界は幸運猫フォーチュンキャットには選ばれない。

 この世界は死ーーーーーーーーーーーーーー

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「馬鹿じゃねぇの!?」


 俺の背後に居た男が起動した異能具により発生した衝撃波に貫かれる。


「ぐっ……!?」


「んな事に付き合ってられるか!」


 一瞬、地面に引っ張られるような力を感じつつも、それよりも先に転移の異能具を起動した。

 この異能具は一定範囲内のどこかにランダムで転移するという少し使い所に悩む物だ。

 だが俺が転移系で持っているのはこれしかなかった。

 この異能具は地中に転移する事は無いようだが半身が壁に飲み込まれ死ぬ事は容易に起こる。

 死亡確定な宴に付き合わされるよりはここで賭けに出るべきだろう。


 そんな事を加速させた思考の中で考えながら、俺はその場から消えた。



「……っと、どうにか壁に飲まれずには済んだらしいな」


 次の瞬間、俺は妙に薄暗いじめじめとした場所に立っていた。

 ……どうやら何処かの民家の地下室のようだ。


「お、外にはなんとか出れそうだな……なるべくアイツから離れられてるといいが」


 そう呟き、光が差す方向へ移動する。

 そしてその地下室の廊下の角を曲がると、外の光が見えた。


 歪に裂けた空間の先から漏れ出た外の光が。


「……は?」


 歪に裂けた空間の先には、あまり馴染みのない街並みが見える。

 そしてお世辞にも綺麗とは言えない字で国名や地名のようなものが書き殴られていた。


「よく分からんが……逃げられそうならそれに越した事ぁないわな」


 一瞬の躊躇いの後、ジョンはその空間の裂け目へ飛び込んだ。


 そして、すぐさま地面に足がつく。


「こんなアッサリと……ね」


 まるで少し狭い入り口をくぐっただけのような、転移とは違う……そう、言うなれば違和感が無い事への違和感、といったものを抱いた。


「うげ」


 そんな事を考えている間に、その裂け目は何処か慌てたように縮み、消滅した。


「……まぁ閉じちまったものはぁしょうがないわな……さて、と……とりあえずここがどういう場所か把握する必要がある、か」


 若干田舎臭いがそれなりに建物が並んでいる。

 だが、人気は存在しない。

 島国という事もあってか、なんとか難を逃れているのでは、という希望はあっさりと砕かれたようだ。


「オーストラリア……ね……コアラでも見に行くかぁ?」


 ははは、と力無く笑う。


 国名の下に何か都市名のようなものも書いてあったが字が汚過ぎて分からなかったし、オーストラリアの都市など殆ど知らない為、知ったところでどうにもならない。


「とりあえず食料確保しますかね」


 はぁ、と嘆息しつつ歩き出す。

 とりあえずの目標は……まぁあのデカいショッピングモールか?


 そもそもあまり人が居たような場所では無かったのか、ゾンビの姿は今の所見受けられない。


「いやぁ、楽で助かる」


 のびのびと街を歩き、ショッピングモールの前に到着する。


「おっじゃましまーっす!」


 上機嫌で扉を開け、中に進んで行くと、店の中央の筒抜けに並んでいた顔が一斉にこちらを向いた。


 そう、並んでいた顔が。


 それは人間の死体を握って固めたような悪趣味なオブジェクト……いや、こちらを向いたという事は何かしらの意思がある生命体と見て良いだろう……そんな物が鎮座していた。


「ヒュー……変異体、ってやつ?」


 頬を端を引きつらせながらじりじりと後退する。

 だが、ジョンが店の扉に手を掛けた瞬間、その悪趣味なオブジェクトは金切り声をあげた。


「だぁーー!!もう!!馬鹿なんじゃねぇの!?」


 悪態をつきながら扉を開け逃げ出す。


 そのジョンの背中を、そのオブジェクトから最早ゾンビとも言えなくなってしまった、人型の肉塊達が生み出され、追いかけた。


「最悪だ!!最低で最悪の日だ!!!」


 そんなジョンの叫びに呼応するように、バックの底で何かが少し、蠢いた気がした。

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