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異能×屍 -終末における俺の異能の有用性について‐  作者: ペリ一
異花の章

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第4話

投稿が遅れてすみません

「さて、いったい何人が出席してくれるかな」


 暗闇の中で心底愉快そうに男が呟いた。


「そりゃあもう世界中の戦術級兵器共が集結しますよ」


「いやぁ楽しい宴にしたいもんだねぇ」


「うっかり世界が滅ぶ、なんて事が無ければいいがね」


「全くだ……」


 …………


 ………………


「所で、幸運猫は来るのかい?」


「来るとも……何人かお供を連れて、ね」


「そりゃあ楽しみだ」


 はははははは、とあらゆる感情の篭った泥のような笑い声が、その空間に響きわたり、そして……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー


「疲れた」


「……は?」


「疲れたって言ってるの……誰か運転代わって」


 滅茶苦茶だ。

 そうマーキスは思った。


 だいたい疲れているのはこちらの方だ。

 ポーションで回復したとは言え、精神的な疲労はほぼMAXに近い。


 それにこの場にヘリの運転が出来る人間が1人しかいない事もおかしいし、そもそも自分がこのヘリに乗って因子数値上位者の宴へ向かっているのもおかしい。

 さらに言えばそんなヘリに独断で異能精鋭隊の総隊長が乗り込んできたのはもっとおかしい。


「……あ、隊長殿、ヘリの運転は……」


「出来ないよ」


 意外とこの人は無能なんじゃないだろうか。


「ん?今、無能とか思ったかい?」


 なんでそういう所だけ鋭いんですか。


「あのね、私だってそこまで来たい訳じゃなかったんだよ?」


 嘘をつかないで下さい。


「……まぁ、ちょっとは来たい気持ちはあったけど。ともかく、生半可な異能者じゃ今回の旅では足でまといにしかならない。私は一定の領域においてはほぼ無敵だし、それを使って身体強化系最強クラスの君達をサポートする事も出来る」


 ……なるほど。


「このメンバーが異能精鋭隊の最強メンバーな訳だ」


「最強……ですか」


「ああ。因子数値上位者なんていう災害を相手取るには最適な災害チームさ」


 災害を相手取るにはこちらも災害級のメンバーで……と。


 ……やっぱり、おかしい。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー


「さぁて、何故かお呼ばれしちまった訳だが」


 俺は異能具売り(タレントツール・ディーラー)のジョン。


 ジョンというのは勿論偽名だが、何となく名乗り始めて定着してしまった。


 異能というものは人間や他の生物にも宿る。

 だが意外と知られてないのは、物にも宿る事があるって事だ。

 それらは場所により、付喪神やら神具やら……色んな呼ばれ方をする。


 単なる異能を宿した物だってのにな。


 俺はそれらを買い取ったり、回収したりして各国のマニアや軍に売り捌いている。

 まぁハッキリ言って単なる“タチの悪い武器商人”だ。


「そんな奴がなんでこんな……因子数値上位者の集まりなんかに」


 まぁ心当たりはあると言えばある。

 俺の持っている異能具の中にはあまり人には売りたくない恐ろしい物が幾つかある。

 それに因子数値をつけるとすればランキングの上位にくい込むであろう事は分かる。


「不死者の新譜……悪夢の坩堝……まぁそこら辺の呪い系かね」


 それとも毒物系か。

 それとも……


「まさか、コイツの存在がバレてんじゃねーだろうなぁ……」


 その言葉に応じるように、バックの底で何かが蠢く。


「……ったく、勘弁してくれよ」




「動くな」




「……ッ!?」


 唐突に当てられた殺気と、首筋に何かを押し当てられた感触。

 とはいえ、俺のような武器商人ともなれば、似たような修羅場は幾つか潜ってきている。

 すぐに心を落ち着かせ、慎重に言葉を紡いだ。


「まぁまぁ落ち着いてくれ。俺も命が惜しい……何が目的だ。抵抗はしない、何でも条件を飲む」


「……話が早くて助かるな」


「あぁ、命あっての物種だからな、何が欲しい?俺が今持ってる商品か?取引の履歴か?」


 少しの間の沈黙。

 そして今自分に何かを押し付けているであろう者の後ろから男の声が聞こえてきた。


「いやぁ?商品に関してはすこぉし、調査の必要がありそうだけど、今はそれどころじゃないんだよね」


「……もしかして、あんたらも招待されたクチか?」


 だとすれば……目的はなんだろうか。

 やはり商品の強奪か……?

 それとも宴前に上下関係を叩き込む、だとかそういったマウント行為の類いだろうか。


「異能精鋭隊、と言えば分かるかな?」


 後ろの方にいる男がそう言うと同時に背後の……声からするとおそらく……男がヒュッと妙な音を立てた。


「隊長……あの」


「いいじゃないか、これから一時的に仲間になる人だぞ?なぁ?……協力してくれれば、しょっぴくのはまた次の機会にしておいてあげるよ」


 そっち方面だったか。


「因子数値者上位の奴等の糞みたいな宴でいったい何をするつもりなんだ?……俺的にはしょっぴいて安全な場所に監禁してくれるならその方が良いんだが」


「……ふむ、そうだね……じゃあ協力しないならその場で死刑という事で」


 拒否権はハナからない、と。

 なるほどね。

 クソ国家権力共が……


「いやぁー…こんな状況だからこそ、助け合いが大切ですよねぇ!」


 だがこんな所でこんな奴等に殺されるのは勘弁だ。気に食わないがなるべく媚びを売るべきだろう。


「話が分かる人で良かったよ…じゃあ、行こうか」


「あ、あぁそうだな。じゃなかった、そうですね……ところで、俺は何に協力すればいいんですかね?」


 場合によっては死ぬ気で逃げる。

 …どうも、嫌な予感がするのだ。えげつない厄介事に巻き込まれそうな…そんな予感。


「簡単な事さ。因子数値上位者の一斉検挙だよ」


 それを聞いた瞬間、俺は右手に仕込んでいた異能具を起動した。

 ドッ、という衝撃が周囲を貫く。


「馬鹿じゃねぇの!?」


 相手を罵りつつも逃走用の転移系異能具、そして攻撃用の異能具を起動する。

 だが俺は気が付けば地面に身体を叩きつけられていた。

 いや、地面に崩れ落ちた、という方が正しいか。


「お……あ゛……!?」


「困るねぇ…なんでそんな事しちゃうのかなぁ」


 そこで俺は、ようやく背後に居た男達を視認することが出来た。


「この異能……重力場グラビティゾーン……!?……それにその顔……いやまさか、そんなはず……ッ」


「そのまさかだよ、異能具売り(タレントツールディーラー)のジョン君」


 クソが……こんな場所に米軍の異能精鋭隊隊長のマーティンがいるなんて予想出来るはずがねぇだろうが……!


「そう言えば、アレも持っているんだろう?ついでに押収させたまえ。抵抗した罰だ」


 アレ……?どれの事だ?


「すまんが選択肢が多くて分かりかねるな……どれの事だ」


「異能学習人形……だったかな?」


 うげ……アレだけは存在すらバレてねぇと思ってたのに……


「ははは、悪いがアレはやれないねぇ」


「それは死にたいという事かい?」


「どうも俺に懐いちゃってるみたいで、な」


 さて、いったい何処まで知ってるのか……それが重要だ。


「君が勝手に愛着を湧かせてるだけだろう。ギミークなんていう名前まで付けて」


 ……おい、お前……


「……中途半端にしか知らねぇんだな」


 俺は後ろのバックの底からバリバリと不穏な音が鳴るのを聞いた。

 もう手遅れか。やってくれるじゃねぇか異能精鋭隊隊長さんよ。


「あの子は賢いからな、名前を呼ばれたら起きる……起きて、学習を始める……やってくれたねぇ。もう俺には止められない」


「……なんだと」


 その瞬間、俺の後ろにあるバックが爆ぜた。


「……へへ、お前ら、終わりだよ……」


 鉛のように重い首を無理矢理動かし俺が視線を移した先には。

 数十センチ程の大きさの、全身に様々な色の真珠のような物を縫い付けられ、顔と思しき場所に深い闇のような色をした2つの宝玉が埋め込まれた異様な人形が佇む姿があった。

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