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異能×屍 -終末における俺の異能の有用性について‐  作者: ペリ一
異花の章

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第3話

 

「ほら、運転の腕は信用に足る物だったでしょ?」


 H、と印された場所の中心にヘリを止めマリアが後部座席の男2人に笑いかけた。


 数分程前のマーキスの発言を少し揶揄するようなニュアンスの発言であったがマーキスは特に表情を変化させることもなく呟いた。


「……そうだな」


 その“そうだな”はあらゆる……例えば皮肉、嘆息、諦観……そういった物が入り混じって出て来た言葉であったのだが、当のマリアはそういった事は微塵も感じさせないような無邪気な笑みを浮かべたままだった。


 毒気を抜かれたマーキスは、溜息を一つ吐き、窓の外へと目を凝らした。


「……援軍……精鋭、か……いったい誰だろうな」


 そう呟いた瞬間、マーキスの耳元に愉快そうな声が響いた。


「異能隊の最高の精鋭と言えば、私に決まっているだろう?」


「……ッ!!!?……た、隊長ッ!!?」


 そう、そこに立っていたのは


 米軍の異能精鋭隊の総隊長である、マーティンであった。


「……ハハハハ!!面白い!こいつは面白ぇ展開になったなぁ!ブラザー!?」


「……全く面白くないぞ……隊長、考え直して下さい。貴方が居なくなったら、指揮系統はめちゃくちゃになってしまい、数少ない生存者が更に減ってしまいます」


「いやぁ、マーキス君は真面目だね。……大丈夫、他の隊員に仕事を全て押し付けてきたから」


「……」


 笑みを浮かべながらとんでもない事を言ってのけた総隊長に対し、二の句が継げなくなったマーキス。

 それを余所に、マーティンはマリアに対しこう告げた。


「援軍は私だ。快適な空の旅を頼むよ、可愛いパイロットさん」


「……ふーん」


 当のマリアは、可愛いと言われた事が満更でも無いのか、マーティンがこの地獄の宴へと向かうメンバーに加わる事に特に抵抗はないようだった。


 それはこの場でマーティンがついてくる事に反対する人物が完全にゼロとなってしまった事を意味していた。


「……じゃ、出発するからちゃんと捕まってね」


「ああ、了か……ッ!!?」


 突然かかったGに対しなす術もなく座席に頭を打ち付けたマーティン。


 一方その犯人である少女は楽しそうにケタケタと笑っている。


「た、隊長殿ッ!!?」


「ハハハ!!!」


 それはマーキスの悲痛な叫び声、ルーカスの心底愉快そうな笑い声


 そして総隊長マーティンの呻き声と混じり合い


 再びヘリ内を混沌の渦へと沈みこませていた。



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 ここで幸運猫について話をしておこう。


 この幸運猫(フォーチュン キャット)という異能


 分かりやすく言ってしまえば

 幸運を引き起こす異能、である。


 ……分かりやすく言ってしまえば、の話だが。


 幸運猫という異能は実際はもっと複雑で、恐ろしいものである。


 とある異能学者は幸運猫をこう表現した。


「幸運猫は蓋然性を操る」


 実に簡潔にまとめられ、かつ核心をついた表現であるが、一つだけ誤りがある。


 実際は「異能者本人にも、コントロール出来ているのか把握出来ない」のだ。


 これでは操っているとは言えないのは明白であろう。


 幸運猫は一度発動すると周囲をある状態にする。


 そのある状態を説明するには、シュレディンガーの猫を用いて説明するのが一番良いだろう。


 シュレディンガーの猫。

 簡略的に言えば箱の中に入れた猫が50%の確率で死ぬ、という実験だ。


 この50%という絶対的な確率により箱の中の猫は死んでいる猫、死んでいない猫。

 この2つの状態が並列して存在している。

 この状態を、拡散状態という。

 この拡散状態こそが幸運猫の能力が与える状態なのである。


 拡散があれば勿論、収束もある。

 その拡散状態の猫がいつどちらかの状態に収束するのか。


 この永遠に答えが出ないとも思える議題に解をもたらしたのもまた幸運猫だ。



 さて、実際に幸運猫を使用したとして、順をおって周囲がどうなっていくか説明しよう。


 まず周囲が拡散状態となる。

 拡散状態ということは

 例えば右足から歩き出す場合や左足から歩き出す場合。

 そもそも歩かない場合。

 あらゆる行動等の可能性が並列して存在するようになる。

 つまり、パラレルワールドがほぼ無限に作られる。

 そして本人が能力を解除、もしくは


 何者かに観測の意を持って観測された時。


 パラレルワールドは一つの世界を残し消滅。

 あるいは収束する。


 この時に選ばれるたった一つの世界。

 それはどんな基準で、誰が選んでいるか異能者本人にすらよく分からない。

 ただ、たいてい自分にとって都合の良い選択となる、くらいしか法則性がない。


 これが、幸運猫という異能である。



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「さて、ルーカス君、マーキス君……君達2人には素敵なお土産を用意してるんだ」


 そう言うとマーティンは嬉しそうに背負っていたバックから妙な瓶を取り出した。


「うちの錬金術師(ザ アルケミスト)が作った“ポーション”だ……さぁ毒味……じゃなかった是非飲んで感想を聞かせておくれ」


「それ隊長用ですよね……確か瀕死の人間がそのまま完治して踊り出すって噂の劇物」


 眉を潜めながらマーティンの持つ瓶を睨むマーキス。

 警戒心丸出しのマーキスを見て諦めたのか、マーティンはその矛先をルーカスに向けた。


「ルーカス君、先程私が頭をぶつけた時、笑ったね?……不敬罪だ。飲み給え」


「隊長そりゃねぇぜ!」


 また矛先を変えられてはたまらないと思ったのかマーキスもそれに便乗し、そうだそうだ不敬罪だと囃し立てる。


「ブラザー!?俺を裏切るのかい!?」


「いやまぁ寄生状態だしルーカス君とマーキス君のどちらが飲もうと変わらないんだけどね」


「だってよブラザー!!ははは、あの世で会おう!」


 そう言うやいなやルーカスはマーティンから瓶を引ったくり一気に飲み干した。


「ば、馬鹿野郎何を勝手に……う゛っ」


 それと同時にマーキスが口を抑え悶え始めた。


「ちょっと!車内にゲロるようなら降ろすわよ!」


 今にも嘔吐しかねないマーキスを見てマリアが悲鳴をあげるような声で怒鳴る。


「だ、そうだ。マーキス君……頑張りたまえ」


 出発から数十分。


 やはりヘリの車内は、混沌の渦から抜け出せずにいた。

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