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異能×屍 -終末における俺の異能の有用性について‐  作者: ペリ一
開花の章

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第7話

今話は少しだけ、ボリューミーになっております(なってしまいました)

 


「俺は……自由だーー!!!」


 俺の渾身の叫びに対し、返ってきたのは呻き声。


 だが、あの地獄から抜け出してきた俺にとっては、ノーマルゾンビなんて雑魚も同然だった。


 すかさずバールで頭部を叩き潰す。




 ……流石に調子に乗りすぎか。


 走るペースは落とさずに、熱くなっている思考を冷却していく。


 ……うん、叫ぶのは無いな。


 百害有って一利無し。


 もうちょっと冷静に行動しろよ、俺。


 ……まぁ北野や、チームの責任から解き放たれた訳だし、多少開放的になるのは許していただきたい。



「……」


 さて、と。


 当面の目標を考えますかね。



 まずは此処から離れる事。


 出来れば隣の県くらいには行きたい。



 そしてその為に必要なのが食料だ。


 寝たきりライフを送るのなら食料はさほど重要ではないが、こうして移動を続けるからには食料は必須と言って良いだろう。


「いつまでも徒歩じゃいられねぇな……」


 と、なれば自転車が欲しい所だ。


 壊れない限り際限なく走れて、音も少ない。

 この世紀末においては理想的な乗り物だ。


 ……と、なると自転車屋か何かを見つけるか、路上に放置されている自転車を頂いていくか。


 スーパーやらデパートがあれば、そこから食料も調達しておかなくてはならない。



 ……やる事が満載だな……



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「……よし、このくらいか」


 赤嶺達は無事、門の開閉を終え、脱出に成功した前線組と共に周辺のゾンビ狩りを行っていた。


「……青葉……」


 赤嶺がポツリと呟いた言葉に対し、返答する者はいなかった。




 ……北野を除いて。


「……青葉君は、どうしたのかな?」


「……ッ!!?」


 唐突に現れた北野に対し、剣を向ける赤嶺。


「……死にました」


「……そうか……本当に?死んだんだね?」


「……はい」


 北野は探るように赤嶺を見た後、納得したような顔を浮かべ、その場を去っていった。


「……何なの、アイツ」



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『おおかた、ゾンビも処理できたようですので、皆さん、門の前の即席バリケードの中にお集まり下さい』




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「……見事な戦いだった!……犠牲となってしまった者も、命尽きるまで勇猛たる姿を……」


 バリケードの中にに人が集まって来たのを確認し、中央に立っていた生徒が演説のようなものを始めた。


「……ねぇ」


「なに?」


「…………なんで、演説やってるのが北野じゃないのよ」


 そう。


 中央に立っているのは北野ではなく、その取り巻きの1人であった。


 当然、この疑問は他の生徒達も抱いたのか、何処からか


「おい生徒会長はどうしたんだよ!」

 という野次が飛んだ。


「……生徒会長は、門からはみ出てしまった異能ゾンビの処理にあたっています」


 ……異能ゾンビ……


「……はい……えーと、元々、門の開閉組の一員だったようでして、皆に精神的負担をかけたくない、と」


 ……開閉組の、一員?


「……死者は出てないわよ」


「おや、赤嶺さん……いやいや、居るじゃないですか」


「……!」


「青葉君、死んだんでしょう?」


「……北野はどの方向に向かったの?」


「助太刀でもするんですか?……ですが青葉君の異能はそこまで強力なものでは無いですし……ヒッ!?」


 そこまで言ったあたりで、赤嶺は剣を抜刀し、その男子生徒に肉迫していた。


「……何処に、向かったの?」


「……ええっと……あの橋がある方向……です……」


「わかった」


 それを聞くと同時に赤嶺はその方向へ駆け出していた。


 困惑する生徒達を押しのけ。


 駆け抜けた。



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「おや、奇遇ですね」


 ……い、今起こった事をありのまま話すぜ……


 逃走に成功したと思ったら、目の前に生徒会長が立っていた。


 な、何を言っているかわからねぇと思うが俺もわからん。


「……き、奇遇ですねぇ……ははは……」


「死亡した、と聞いていたが?」


「いやぁ、なんか良い感じに生き返りまして」


「……ゾンビでは無いのかい?」


「……ええ?あー、いや、俺感染してませんし」


 ……してない……よな?


 ……あれ、ゾンビウイルスとかのお陰で蘇生出来た可能性もあんのか……?


「……まぁ、いい……それで、何処に行くつもりなのかな?」


「え、いやだなぁ、周囲の警戒ですよ……はは…………うおっ!?」


 そういって愛想笑いを浮かべようとした時には既に、北野が俺の首元に指を突きつけていた。


「……正直に話してくれるかな?」


「……逃走だよ。俺はあの集団には必要の無い存在だ」


 観念した俺が正直に喋ると、北野が小首を傾げた。


 おいやめろ、お前がしても全然可愛くねぇんだよ。


「……そうかな?」


「そうだろうが……いいだろ、見逃してくれ。役立たずなんか居ても迷惑なだけなはずだ」


「いやいや、君単体では、確かに役に立たない。まるで、ね」


 おぉう、ズバリ言うね。


「……でもね、君を使えば赤嶺君を上手く懐柔出来ると思うんだ……他の……あのマンションの人達もね」


 ……赤嶺……ね


「無理だよ」


「いいや?無理じゃない……ほら、見てごらん?」


 北野に指を差された方向を見てみると、なにやらコチラに接近してくる人影。


 その速度は凄まじく、あっという間に俺と北野の場所まで辿り着き……


 ……え、赤嶺?


「……青葉ぁ!!」


 そんな事を叫びながら、北野に切りかかった。


「うおおお!?」


「危ないなぁ」


 危ないなぁ、じゃねぇよ!

 お前は良いけど俺は掠りでもしたら命の危機だからな!?


「赤嶺さん、何か用かな?」


「用も糞も無いわよ」


 ヒュッ、と音を立てながら剣を構え直す赤嶺。


 ……え?何?


「じゃあ、何かな?」


「……まぁ、青葉のピンチだったから?」


 赤嶺さんイケメンすぎませんかね……


「……ほらね?青葉君、僕の言った通りだろう?」


 ……ドヤ顔で俺を見る北野。


「……いや、別に俺だったからとか……そういう訳じゃ無いと思うが」


「いや、あんただったからだけど」


 赤嶺さぁん!?


「……そ、そうだな。仲間……だもんな」


「何を言ってるんですか?逃走した身で」


 うぐっ……痛い所突いてきやがる。


「……まぁ僕は別に青葉君に危害を加えようなんて気はありませんでしたけど……わざわざ逃走した青葉君を助けに来た、という事は赤嶺さんは青葉君に何か個人的かつ特別な感情を抱いているとしか思えないんですが……どうです?」


 ……知らんがな。


「……まぁ、そうね」


 だから赤嶺さぁん!?


「だったら何よ」


 開き直りですか……


 というかどういう意味?そういう意味?そういう意味ととってよろしいの?


「なら……青葉君には是非戻ってきて欲しい……そうですよね?……門の開閉組の決死の作戦は、僕が美談仕立てにして演説で語ってあげますよ……青葉君、君にヘイトが溜まらないような形でね」


「……青葉、どうなの?」


 ……どうなの、って……


「…………俺は、もう戻りたくない……赤嶺とかには、迷惑かけっぱなしですまなかったな……俺はな、もう集団自体に属したくないんだ……嫌われようが、好かれようが……関係ない」


 ……仕方なく、俺は本音を語った。


 ……そうでもねぇと無理矢理戻されそうだしな。


 赤嶺も懐柔されかかってるし。


「……そうか、強情だね……赤嶺さんが可哀想、だとは思わないのかい?」


「……申し訳ない、とは思う」


 でもな、無理なんだよ。


 俺には無理なんだ……


「……集団じゃなければ良いの?」


 ……せやな。


「……2人は?集団の内に入る?」


 ……えっ


 あの……赤嶺さん?そんな詰め寄られても困るんですが……あの……


「いや、まぁ確かに2人は集団とは呼べないけどさ、俺が言いたい事は……」


 くそっ、何ニヤニヤしながら見てんだ北野ぉ!!


 ……まさか、コレが狙いか。


 俺と赤嶺、二つの不安因子を纏めてポイ……そういう事か?


「……北野……てめぇ……」


「何の話かわかりませんね……では、赤嶺さんは動揺からか、ゾンビになった青葉君に噛まれて感染、自害する道を選んだ……という事で」


「あ、おいちょっと待て!!!」


 ふざけんな!!赤嶺を俺に押し付けていく気だなやっぱり!!


「演説があるので、帰らせて頂きます……あ、我々は今から北の方角を目指しますので……少しでもウィルスの少ない場所に行きたいので、ね……では!」


 しれっと俺らから遠ざかれよ?的なアピールしていきやがって!!


「てめぇ……ッ!!次会ったらぶっ殺してやるからなぁ!!!」



 俺の叫びを一笑に付すと、北野は先程、赤嶺が来た方角へと走り去っていった。



 ……残されたのは、俺と……



「で、どうする?とりあえず南に向かう事は決定?」



 ……赤嶺だけだった。


……赤嶺さん、元々は同行させる気無かったんですけどね……


なんか気が付いたら……うん

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