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異能×屍 -終末における俺の異能の有用性について‐  作者: ペリ一
開花の章

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第4話

 念話(テレパシー)の扱いは非常に複雑で、難解である。


 それは、念話(テレパシー)を発現した殆どの異能者が、学園に保護されるよりも早く精神を崩壊させてしまうという事実からも、察する事が出来るだろう。


 通常、特殊な訓練を積み異能のコントロール力を上げなければ延々と周りの人間の声を強制的に聞かされ続ける事になる。


 だが、この福部(ふくべ) (わたる)は、少し違った。




 ……念話(テレパシー)は、欠陥の多い異能であると言われている。


 例えば……


 広範囲すぎて発現した瞬間発狂死した者。


 数人までしか念話を交わす事が出来ない者。


 相互による念話が不可能な者。



 そもそも、念話自体が対話する双方が心を鎮めていないと使用できない。

 冷静でないと、まともな言葉にならないのだ。





 ……福部(ふくべ) (わたる)念話(テレパシー)は、欠陥が2つあった。



 一つは、広範囲すぎるという事。



 そしてもう一つ。


 数人……限られた人数としか念話出来ないという事。



 これが、福部が発狂死しなかった理由である。


 このため、福部は念話保有者の中で屈指の範囲を持つようになったのだ。




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「……おかしいですね」


「どうした?」


 先程から青葉さんからの定期念話が届きません。


 ゾンビとは戦い慣れてるはずですし、誰よりも冷静でいられるはずなのですが……


「……誰か、援軍に回せる戦闘系異能者はいますか?」


「……んー……ちょっくら走るか……乗れ」


 走者(ザ ランナー)保有者である崎田さんが背中をこちらに向け、おぶられるのを促してきます。


「……はい」


 ……少し恥ずかしいですが、我慢するしかないですね。




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「がぁああああああ!!!ちきしょおおおおああああああ!!!」


 雄叫びと悲鳴がこだまする最前線において。


 また1人、生徒がゾンビに噛まれ感染した。



「なんでッ……なんでこんなにゾンビが……ッ……うわぁあああ!!!?」




 報告の倍以上の数の通常ゾンビが集まってきている。


 そんな状況を不審に思いつつも……赤嶺は……


「とりあえず倒し続けるしか無いわね」


 淡々とゾンビを狩っていた。


 だからだろうか。



 北野が感染した生徒に何やら囁いている事に気が付いたのは。



「……!!」


 北野に何やら囁かれた生徒は覚悟の決まった表情で最前線へと駆けて行く。


 途中、ゾンビから攻撃を喰らいながらも、前へ。


 他のまだ感染していない生徒を庇い、ゾンビの攻撃を喰らいながらゾンビを切る。


 そして、さらに前へ。




「……あの表情……」



 ……死兵。


 戦場において、命を捨てる覚悟をした兵士の事だ。


 あの生徒の表情は……そんな兵士の表情に似ていて……



「屍兵には、死兵ってわけ?」


 唐突に声を掛けられ驚き振り向く北野。


「……何の事かな?」


「すっとぼけなんていらないから」


 そう言いつつ駆け寄ってきたゾンビを両断する。


「……この異様なゾンビの量……あんたの仕業?」


 そんな赤嶺の問い掛けに、北野は薄い笑みを浮かべながら。



「……赤嶺さん、僕はね………集団が生き残るための合理的な方法をとっているだけなんだよ」


 そう、答えた。



「……ッ!!こいつ……ッ!!!」


「いいのかな?ここで僕らが争えば……彼等、感染した生徒達の犠牲の意味はどうなる?……〝無駄死には嫌だろう?〟……」


「……そのフレーズで唆したわけね」


「まぁ、君の言いたい事を考慮すると…………なるほど、確かに道徳上問題がある行為である事は否めないね……でもね、僕は集団の維持を選ぶよ……そんな甘えたような優しさじゃない、本当の優しさだ」



「……」


 何も言い返さない赤嶺に対し、納得したと解釈したのか、北野は最前線へと戻っていった。




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「撤退!!撤退だぁああああああ!!!」


「出来たらやってらぁ!!クソがぁ!!!」



 一方、阿鼻叫喚の渦と化した門開閉班。


「本体……ッ!!本体は……ッ!!火炎纏の異能ゾンビはどこだぁあああああああ!!!」




 探す……探して殺す……ッ!!!



「……ッ!!念動力(テレキネシス)だ!!!念動力(テレキネシス)で俺を上空に上げろッ!!」


 必死にゾンビの攻撃を躱しながら叫ぶ青葉。


「んな暇ねぇんだよ!!!俺が死んでもいいってかぁ!!!?」


「うるせぇ!!!門を開けねぇと皆揃ってお陀仏なんだよクソが!!!」



 こうなってしまえばもう連携も何も無い。


 完全に各々が生き延びるためにめちゃくちゃに動き回っていた。


「援軍を呼べ!!誰でも良い!!この状況を……ッ!!」


 その時、青葉は物陰に何かがいるのを見た。



「……火炎纏の異能ゾンビかッ!?」


 時折飛んでくる炎を掻い潜り何かが蠢いていたビルの影へ飛び込む。



 その瞬間、青葉は吹き飛ばされた。



「……ガッ……ア゛ッ!!?」


 ドシャリ、と地面に叩きつけられ出した事の無いような声が漏れる。


爆弾射出(インジェクションボム)……」


 勿論、火炎纏(エンチャントファイア)付きだ。


 今ので胸から腹にかけては焼け爛れている。


「……ゲホッ、ゲホッ」


 爆弾射出の異能ゾンビがゆっくりとコチラにトドメを刺そうとしてくるのを見ながら青葉は。



「……何で、だよ……」


 俺は……こんな所になんか来たくなかったのに……


 独りで……静かに眠っていたかった……




 そんな事を考えていた。




 そして、衝撃と共に宙を舞う感覚。





 地面に叩きつけられる感覚と同時に……意識は消え、真っ暗になった。




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 その時福部は、崎田の背中におぶわれ、戦場を駆けていた。



「……ッ!!?」



「おう?どうした!?」


 青葉さんの思念が完全に消えた!?


「……最悪の事態かもしれません」


「なんだ!?」



 動揺で震える口元を無理やり動かし喋る。




「……門開閉班、青葉 茂さんが死亡しました」


「……はぁ!?」


「至急、援軍を……全滅の可能性も視野に入れましょう」



 そして念話を通して青葉の死亡を全陣営の重要人物へと知らせた。




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 心臓が早鐘の如く鳴っている。


『青葉さんが死亡しました。全滅の可能性もあります……至急、援軍を送ってください』


 先程伝えられた情報。


 青葉の死。



 既に死んでいるのだから、自分の行動に意味は無いのかもしれない。


 それでも。


「ちょ!!ほんと1回降ろして!!怖い怖い怖い!!」


 私……赤嶺は、一条(いちじょう) 美弥乃(みやの)を担ぎ、門開閉班の元へと駆けた。



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