第3話
「……いいか、作戦はさっき言った通りだ」
錬金術師の斉藤。血の操縦士の杉崎…
この2人は後方にて隠れて貰い、いざという時は真っ先に撤退して貰う。
そしてこの2人には、刃指の大橋が護衛として1人、ついておく。
そして念動力の明石、肉体強化の村上……そして俺と炎造でゾンビ共と戦う。
まず俺と村上、そしてその真後ろに明石、炎造という隊列で敵の前に姿を現す。
すると恐らく……発火の異能ゾンビが炎を放ってくるはず。
それを念動力で逸らし、その隙に炎造が異能ゾンビの顔面に火をぶつける。
そして全員別方向へ拡散。
異能ゾンビは頭を燃やされ感覚機能が著しく低下するため、狙いが雑になる……その隙に他のゾンビを殲滅。
最後に残った異能ゾンビを囲んで殺してめでたしめでたし……
「……うまくいけばすぐに終わる……だが油断はするなよ」
「わかってるわかってる……俺だって死にたくはねぇし……全力でやるぜ」
……まぁ、炎造がちゃんと指示を聞けるタイプで良かった……アホだけど。
……さてと、皆配置についたみたいだし……
「……よし!行くぞッ!」
俺の掛け声と共に俺を含む4人が一気に飛び出す。
「ガァァ……ァアア!!」
俺達に気が付き一斉に唸り声をあげるゾンビ達。
ボォゥ!!という音と共に発射された炎がこちらへと迫ってくる。
「……っしゃオラァ!!」
炎がきた方向に手を向け気合の雄叫びをあげる明石。
すると、グンッと炎が捻じ曲げられ、あらぬ方向へと飛んでいった。
「おっしゃあ!もっと近付いててもいけるぞ!?どうする!?」
そう言う明石に対し。
「そうか!ならもう少し近付いてきてからにするぞ!」
炎造がそう返す。
……勝手に決めるんじゃねぇよ……
そう愚痴をこぼしたくなるのを堪えつつ、前方のゾンビ達を観察する。
……案の定、火炎纏の異能ゾンビは自分にしかその異能を発動させていない。
……これで他のゾンビにも異能を発動させるようであれば、最悪、俺達の中から死者が出る事も考えなくてはならなかったが……
「……まぁ、一先ず安心ってとこか……ッ」
そう呟くと同時に炎がこちらへと射出される。
「余裕だこんちくしょうがぁぁああ!!!なめんなぁああああ!!!」
再び明石が手を向け雄叫びをあげる。
すると、先程よりは少しぎこちないものの、炎が捻じ曲がり、別方向へと飛んでいった。
そしてその直後、一つの、槍のような形状となった炎が飛んでいき……
異能ゾンビの頭に着弾した。
「……炎造さんナイスエイム!!」
それを見た村上が嬉しそうに叫ぶ。
「……各自、散開!!」
4人が一斉に別方向へと走る。
感覚機能が落ち、誰を狙えばいいかわからずのろのろともがくように動く異能ゾンビ。
「まずはてめぇだ!!」
遠くから村上の声が聞こえる。
位置的に、火炎纏の異能ゾンビだろうか。
「……よし」
上々な出だしだ。
いける。
……そう思った時だった。
「うお!?」
「あぁっ!?」
「何だ!?」
あちこちから唐突に悲鳴があがる。
「こいつら唐突に火炎を纏いやがった!?」
それに応じて通常ゾンビ達の動きが格段に俊敏なものへと変化する。
「村上ぃ!!本体を倒せぇ!!!」
突進してきたゾンビを避けつつ叫ぶ。
「もう倒した!!なんでコイツら急に……ッ!!?」
「糞がぁぁああ!!どうなってんだよおおおお!!!」
……不味い。
「……本体をさっさと殺さねぇと……ッ」
その時、先程まで俺がいた場所に炎が着弾した。
「うおっ!?……炎造さん!!もっかい顔面に炎ぶち当ててくれぇ!!」
「出来たらやってらぁ!!くそったれぇ!!コイツらマジで火効かねぇじゃねぇか!!!」
まずい、まずいまずいまずい。
このままじゃ誰かが死ぬ。
俺の考えた作戦で……
俺のせいで皆が死ぬ。
「……本体……本体を探せぇ!!!」
火炎纏の異能ゾンビはどこだ!?
ソイツさえ……ソイツさえ殺せればなんとか……ッ!!
その時、俺は冷静さを欠いていた。
だからこそ、気付けなかった。
物陰から、じっとコチラを伺う視線に。
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「……ァアア!!」
ブオン、と振るわれる斧。
ソレをバックステップで躱しつつ、斧に剣撃を食らわせ、武器を手放させようとするが……
「……死んでるのにどんだけ握力あんのよ……ッ!!」
すかさずゾンビから繰り出される剣撃……いや、斧撃と言うべきか……を避ける。
「……チッ……面倒ね……」
擦り傷すら許されないという極度の緊張。
前線になかなか戻れないというもどかしさ。
その二つが、赤嶺をどうしようもなく焦らせていた。
「……面倒だから、ちょっとだけ……」
本気を出すわよ、そう続け、剣を握り直す。
瞬間、ジャキリという音と共に巨大な剣が二つに分かれた。
「攻撃をくらいやすいスタイルだから避けてたけど……しつこ過ぎよ、あんた」
双剣となった兵装を構えると、勢い良く敵に飛びかかった。
敵の振りかぶった斧を片方の剣で抑え、そのまま脚の間を潜り抜ける。
その瞬間、敵の脚を切りつけ機動力の低下を図る。
振り向くよりも先に首を両断しようとするも、思ったよりもはやく対応され、斧の持ち手部分で弾き返された。
そのまま振り下ろされた斧を両方の剣で受け止め、その隙にすかさず足払いを繰り出す。
それと同時に左前方へとローリング。
だがしかし、再び振るわれた斧を受け止めた衝撃で後ろへと吹っ飛んでしまう。
「……」
無言で再び駆け出す。
そして、目の前に振り下ろされた斧を寸前で避ける。
切断され、ハラリと舞う髪を尻目に、振り下ろされた斧に乗る。
そして跳躍。
……もし、このゾンビにもう少し知性があれば、落下してくる赤嶺に対し、斧を振り上げ、両断していた事だろう。
だが、所詮はゾンビ。
本能で動く屍。
「『咄嗟の行動において、噛み付きを優先する場合が多い』……ね」
間抜けにも、顔をあげ口をガッパリと開けたゾンビを。
赤嶺の双剣が真っ二つに……切断した。
ズシャリ、と崩れ落ちるゾンビの身体。
それに一瞥くれた後、赤嶺は双剣を再び一つの巨剣へと戻し、背中に背負い直した。
「……ふぅ……」
溜息一つ。
緊張状態から解放された赤嶺は。
自分が命を懸けてまで信用したある男に思いを巡らせていた。
「……これで失敗してたらただじゃおかないわよ……」
そんな呟きを漏らし、前線復帰するため再び地を蹴り、駆け出した。




