閑話休題 プロサバイバー
投稿がかなり遅れてしまいました!
申し訳ありません!
……プロサバイバーの朝は早い。
「……ん」
それは何故か。
……この終末の世において明かりは貴重品だ。
ならば太陽の出ている間にその明るさを最大限活用しなければならないからだ。
「……」
まだ微かに残る眠気を頭を振って取り除き、寝室を出る。
寝室を出ると、そこには食料や日用品等の倉庫代わりとなっている部屋。
朝食の分の食料を取ると、備蓄品を記載したメモに斜線を引く。
「……このままだとビタミンが不足するな」
メモの横の紙束を引っ掴み、必要な品を記入する。
それをポケットに突っ込むと、再び寝室へ戻った。
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「……はぁ」
何度やってもネットに繋がる気配の無いスマホ。
今ではただのライトとしての役割しか果たさなくなったソレをベッドに放り投げる。
「なんで必死に生きようとしてるんだかな……俺は」
未だに一人称を変えていない辺り、自分も大概だな、と思う。
誰に対して自分を偽ろうとしているのか。
もう、誰とも交流する事など無いというのに。
「……っと、いけない、いけない」
あまり余計な事を考えてしまうのは精神を病む事に繋がる。
こういう時は何かを考える余裕も無くなるような……
「買い出し……行くかな」
……生きるために死に近付く。
矛盾しているようだが、これしか道は無い。
「……さて、と」
買い出しとは言っているものの、実際はただの略奪行為である。
……まだ、法律が機能しているとすれば、だが。
そんな事を考えながら、買い出しの準備を行う。
刺叉にマチェットを固定した、あたかも悪魔の槍のような形状の武器を手に取る。
「……うん、欠けは無い」
状態を確認し終わるとソレを壁に立て掛け直す。
そして、もぞもぞと服を着替え始めた。
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「……よし」
服を着替え終え、武器を手に取り歩き始めた辺りで違和感に気付く。
「……さらし巻き忘れてた……」
慌てて服を脱ぎ、機動の妨げとなるその双丘を布で押さえつける。
「これで良し……と」
少しは動きやすくなった体に満足し、武器を持ち直す。
そして腕に防具を着け、ドアに手をかける。
レンズを覗き、周囲の安全を確認した後、ドアノブを回した。
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最良の策はゾンビと遭遇しない事だ。
ゾンビと遭遇しない為には長期間にわたる観察が欠かせない。
「……」
ゾンビは生前の場所からあまり離れたがらない。
機動力が弱いというのもあるが、広範囲にわたって探索するという発想が無いのだ。
……だがその法則も、人の気配が一切無ければ、という前提条件があるのだが。
ともかく、そういったゾンビの縄張りの隙間を縫うように移動する事で格段に遭遇率を減らす事が出来る。
「……」
メモ帳を開き、改めてその縄張りを確認する。
「……ここのゾンビは最近異常行動が目立つな……」
そして数秒の思考の後に、ルートを変更した。
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その後、何事も無くスーパーへと到着出来た。
到着して真っ先に行うのは、店内の探索だ。
ゾンビが居れば処理し、生存者が居れば帰るまで待つ。
「……」
そして、何者かの存在を確認し思わず舌打ちが漏れそうになる。
唸り声はしない。
と、なると長期間何も食べていないゾンビか……それとも生存者か。
ゾンビは、人を食べていればいるほど唸り声を頻繁にあげるという傾向がある。
……だが、危険なのは長期間何も食べていないゾンビだ。
唸り声も出さず、飢餓の概念があるのかはわからないが、他の個体と比べ人肉への異様な執着を見せるのだ。
「……やはりか」
飢餓ゾンビ、と勝手に名称をつけているゾンビは、やはり1つ先の通路にいた。
無言でこちらへ駆けてくるゾンビ。
刺叉で腹を突き、ゾンビの体勢を崩す。
そして仰け反ったゾンビの喉笛を一刺し。
未だに無理やりコチラに駆け寄ろうとするゾンビを刺叉で突き再び仰け反らせる。
そして喉笛に……
……この一連の動作を繰り返しゾンビの息の根を止めた。
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「……はぁ」
帰るなりドサッとベッドに倒れ込む。
このまま寝れば良い夢が見られるかもしれない……
そんな数ヶ月振りの感覚と共に、意識を手放した。
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「……ん」
深夜、妙な気配で目を覚ました。
幸い、買い出し後の格好のまま寝たため武器も防具もある。
「……」
勢いよくドアを蹴り開け、武器を構えながら部屋に入る。
すると、部屋に人影が確認できた。
そこに居たのは、食料をぼりぼりと貪る……
「……少女?」
童女と称すのが一番しっくり来るだろうか。
そんな、少女であった。
「……誰?」
フードを被っているため解りづらいが、髪色は淡い金色をしている。
……そして、よく見るとどうも日本人とは思えない顔立ちであった。
「……日本語、喋れる?」
「……」
わからないなりに何かを察したのか、横に首を振る少女。
「……はぁ」
あからさまな厄介事の気配に思わず肩を落とす。
……良くも悪くも、暫くは余計な事を考える暇は無くなりそうである。




