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異能×屍 -終末における俺の異能の有用性について‐  作者: ペリ一
偽花の章

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第7話

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「……変わってねぇな」


 変わらず書かれている

『生存者の方は裏口からお入り下さい』の文字。


 まだ、学園からの脱出を試みて、不毛な会議をやっているのだろうか。


「……じゃ、ここの説得は頼むわ」


「任せといて」


 そう、ここで俺と赤嶺は二手に分かれ、俺はマンションへと向かう手筈となっている。


 ショッピングモールの連中は優等生である赤嶺に説得されればホイホイとついて来るはずだ。


 だが問題は……


「……大丈夫だと良いが」


 お詫びの品を入れたバッグを背負い直しつつ、俺はマンションへと向かった。



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「……久々、だな」


 相変わらずボロいマンションだ。


 今ではもう懐かしさすら感じてしまうバリケードを乗り越え、食料庫……の隣の歓談室へ向かった。


「……ん」


 どうやら誰かいるらしく、歓談室から何か聞こえてくる。


 ふー……と、ゆっくり息を吐き、精神を落ち着かせる。


 あんだけ滅茶苦茶な事をした挙句、出て行ったのだ。

 怒っていないはずがない。


 ある程度心の準備をした後、俺は扉をノックする。


「……?…はーい、どうぞー」


 少女の声と共に、トタトタと扉の近くに寄ってくる足音。


 え、ちょっと待ってくれ自分のタイミングで開けさせてくれ……


 そんな俺の思いは通じるはずもなく、無慈悲にも扉が開かれる。


「……!!……あ、日光浴の、人……」


 ……そうですね。名前は言ってなかったですね。


「…青葉 茂だ…………先日の件は本当に申し訳ありませんでした」


 少女含め歓談室の面々全員に対して頭を下げる。


 この程度で許されようと思っている訳ではない。だが、謝らない、というのも違う。


 ……とはいえ、俺は皆がどんな表情をしているのか見るのが怖くて。


 頭を上げる事が出来なかった。


 すると、唐突に低音の、熟年の深みのある声で。


「……いえ、こういう状況ですから……取り乱す日があるのは仕方ないと思いますがね」


 そう、言われた。


 驚き顔を上げると、奥の席に座る老夫婦と目が合った。


 そして。


「……確かに、雨が続きすぎて僕も参っていた所でしたし……日光浴好きな青葉さんの動揺の具合は相当な物だったという事ぐらいは察せますよ」


 そんな言葉を発したのは老夫婦の隣に座る青年。


 ……俺は確か、あの青年にも酷い物言いをしたはずだが……



 ……ふと、何かを感じ横を見る。


 すると、膨れ面で俺を睨む少女がいた。


 ……


「私、廊下で青葉さんに怒鳴られた事忘れてませんからね!」


 ……それは。


「……すまん」



「まぁ、いいですけど」


 そう言うと、プイっと顔を背け席に座った。


 ……なんだか簡単に許されてしまって拍子抜けだが……


 俺はチラリと老夫婦……特にその夫を見る。


 すると、その夫は俺に意味ありげな笑みを浮かべると。


「とりあえず、座りませんか?」


 俺に、席をすすめた。


 ……そういえば、この男が最初に口を開いて居なければ、こんな空気にはなっていなかったのかもしれない。


「……ありがとうございます」


「いえいえ……助け合いは大切な事ですから」


 そして、席に着き改めて面々を眺める。


 そこでようやく、先程俺と会話を交わした者以外の人間に気が付く。


 ……タンクトップ姿で頭にタオルを巻き、忙しなくウチワをパタパタと動かしているその男は。


「……もしかして、あの焼き鳥の屋台の……」


 発火(プロキネシス)の異能で串を焼いて売る変人として、校下街では有名な人間であった。


「おぉ?俺を知ってんのか?……そりゃ嬉しい限りだねぇ」


「ええ……有名人ですし」


「……そうかぁ?……というか…今は俺の話をする時じゃないんじゃねぇの?」


 ……っと、そうだった、そうだった……



 屋台の変人店主……名は確か首藤(しゅとう) 炎造(えんぞう)


 まぁ、この名は偽名であるという説が一般的だが。


 その炎造に促され俺は口を開く。


「……皆さん、この学園から脱出したくはありませんか」


 俺が言葉を発した瞬間、部屋の空気が変わる。


「……我々は、数十人にも及ぶ異能者のグループを作っています……」


 そう俺は話し始め、時折言葉に詰まりながらも、作戦決行の日程、作戦の詳細を説明した。



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 ……今、俺はマンション住人の中にいた異能者を集め、北野に関する注意事項を話していた。


 マンション住人の中にいた異能者は2人。


 俺を入れても3人だ。


 1人はあの屋台の変人店主。炎造だ。


 そしてもう1人……これが意外だったのだが……


「……えぇと、北野さんって人……生徒会長ですよね?特に悪い噂は聞かないですけど……」


 例の少女である。


 ちなみに異能は爆弾射出(インジェクションボム)

 しっかりと補助用のワンドも所持していた。


「……表では、ね」


 セルフスプラッタショー等の部分は流石にぼかして伝えた。


 だが北野という男の異常性が少しでも伝わればいい。


 最悪、俺の……俺達の思い過ごしという可能性もゼロではないのだから。


「とにかく、奴は何をするかわからない……気を付けておいてくれ。無条件に信用しちゃいけない」


「……おうよ……そういや俺の屋台の客で似たような事を言ってた奴がいてなぁ……ソイツが北野だったのか……」


 炎造は何か思い当たる節があるようで思慮深げに頭のタオルを撫でている。


 ……どうしよう、この2人、かなり不安だ。


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「……という訳なのよ」


「なるほど……確かに、北野先輩はどうも裏が有りそうなタイプでしたからね!」


 ……この子ちょっとアホっぽいなぁ……


 うんうん、と必死に頷く京介を見て私……赤嶺はそんな感想を抱いた。


「……な、なるほどー」


 そして適当に頷いている剣士(ザ フェンサー)の異能持ちの男の子。


 ……コイツもアホっぽいなぁ。


 隣にいる女の子も適当に笑ってるだけだし……


 唯一、マトモそうなのはちっこいオカッパの子くらいか。


 ただ、皆からの扱いを見るにあまり有能な異能を持っている訳では無いらしい。



 ……この集団、不安だな……


 頼りないショッピングモールの面々に、思わず眉を顰めてしまう赤嶺であった。


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 ……かくして、学園の生存者グループが一所へ集結する事となった。



 この小さな花達はどう集まり、どう開花し……





 どんな偽花を作り上げるのだろうか。




偽花:意味


小さな花が集まり、あたかも1つの大きな花のようになる事。

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