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自作小説倶楽部 第9冊/2014年下半期(第49-54集)  作者: 自作小説倶楽部
第52集(2014年10月)/「ススキ」&「裂ける」
31/49

02 E.Grey 著  裂ける 『公設秘書・少佐、黒澤商事事件3』

   黒澤商事事件

.    

    05

.

 事件発生から二日目、明日には事件を公表することになっている。それまでに事件を解決しなくてはならない。

 それはともく。

 マンションの壁には、ゴッホの『ひまわり』の複製が飾ってあるのだが、佐伯は気づかない。可憐にして情熱的、されど燃ゆる乙女心満載っていうか、いっぱい詰まった贈り物。男子三日あわざれば括目して待つべしみたいな。絵をもっとみろ、佐伯!

 しかし通勤時間がきた。

 私と佐伯は黒澤商事にでかけた。

 前日に引き続いての捜査の続きだ。

 『サザエさん』のお父さん・波平さんみたいなヘアスタイルの総務課長を呼び出して、体育会系タラコ唇の酒巻についてきいてみることにした。

「酒巻健司君ねえ――それなりに仕事はこなすんですが、突出してできるというほどのこともないといったところで、まあ、普通ですよ。最近は秘書課の別嬪さん・小泉志保に熱を上げていて、追っかけやってるみたいですがね」

 また同僚を呼び出してきいた話。

「酒巻ですか、また例の美人秘書のケツを追っかけてて仕事でポカやったことがあるんですよ。課長から職務怠慢だと叱責を受けましてね、そのあと理不尽だといって屋台でクダをまいていましたよ。酒につきあって腹が立ちました」

 また別な同僚の話。

「酒巻さん、競馬にはまっていて、三百万円の借金を抱えていてたんだそうですよ。そんなところに、新聞社からスクープ記事の情報提供の話があったんだそうです。さっききいたら、もう借金はチャラになっているっていってました。なんだか怪しいですよね」

 要は困ったチャンだ。

 ここまで皆にいわれると、なんだか酒巻さんがかわいそうに感じてきた。

 それはさておき。

 長身黒スーツの佐伯が私の長い髪の間に手を入れ耳を触った。

「なあ明菜」

「なによ、急に」

 まさか、こんなところでキスでも……。廊下よ、ここ。ああ、人がくる、みられる。でもそんなスリリングさが、いいかも。

 ドキドキ。

 しかし捜査の話だった。

 ちぇっ。気持たせちゃってさ。

「酒巻が、借金を抱えていたこと、上司への不満という点に着目した。犯行の時間帯にアリバイがない。その時間帯に社長室に入ったところを、同僚が目撃している。もっと嫌疑のかかる容疑者だ。……なら、問題の書類・隠し場所はどこか?」

 佐伯と私は、総務課にゆき、酒巻の机だというところをみると、引きだしが少し開いていて。中から辞表届の封筒がみえた。事件の嫌疑がかかる前にウヤムヤにして辞めるというのか? それでは、書類は家か?

 佐伯は、また酒巻のことで、また別の同僚から話をきいた。

「事件の日あたりから、親御さんと喧嘩していたみたいで、酒巻は家に帰っていないって話ですよ」

「その間は?」

「安宿に泊まっていたみたいです」

「なるほど」

「話かわりますが酒巻さんの交通手段ってどんなのつかってます?」

「ああ、オートバイですね。駐車場にあるでしょ」

 早速、私たちは駐車場にいった。

 五五〇CCバイクが停めてあって、後部座席には、トランクケースがくくりつけてあった。佐伯は鞄から泥棒の七つ道具みたいな工具を取りだして、こじ開けた。

書類はなかった。

.

    06

.

 酒巻さん周辺の聞き込み捜査・駄目押しで、佐伯は秘書課にいって、そこの女性にきいてみた。応対しのは、お水な泉志保じゃなく、ふつうにOLをやっている感じの人だった。

 こういうところは女同士で話したほうがいろいろききだしやすい。

 佐伯に目配せされて、私が代わりに質問した・

「佐伯さんと泉志保さんってどんな感じでした?」

「どんな感じって?」

「ラブラブしてたとかシカトしてたとかいろいろです」

 ふつう系秘書さんは、顎に指をあて視線を天井にやった。

「うーん。そういえば、佐伯さん、うちの課にいる泉志保さんに、デートを取りつけたんですって。それはもう狂喜乱舞って感じ。けど、泉さんはあまりにもしつこいので、一度限りということで、食事に応じただけだっておっしゃってました」

 佐伯はパンと手をはたいた。

「なるほど、そういうことか!」

「そういうことって?」

「泉志保が事件に関わっている可能性がある。彼女を介して、真犯人はファイルを入手して、それを交際相手である、新聞記者に渡したのだ。酒巻は、泉志保と共謀している。秘書課である泉志保を通じて、ファイルを入手させ、酒巻に渡した。ファイルは泉志保が持っている」

 そのときだ。

 お化粧の濃い泉志保が現れた。

「あらあ。佐伯さん、明菜ちゃん。こんにちは」

 毎度、どうしてあなたは、ねっとりした目を佐伯にむけるて舐めまわすの? エッチ!

 隙あらば抱きつこうって感じだった。

 そして、つまずいたふりをして、ほんとうにガタイのいいスーツ姿の佐伯の胸に、頬を寄せる感じで抱きついてきた。

 佐伯、張り倒せ!

 しかし佐伯は抵抗せずに、巨乳が密着した感触を楽しんでいるふうにさえ感じた。

 ああ、裂ける~、二人の仲が~。

     つづく 


   //事件概要//


 長野県月ノ輪村役場職員・三輪明菜は、休暇をとって東京の婚約者宅に遊びにきていた。婚約者は佐伯佑。「少佐」と仇名される切れ者の公設秘書だ。明菜が二人の時間を楽しんでいると、彼が仕えている代議士・島村センセイから電話がきた。

 内容は、センセイが懇意にしている黒澤社長が、ビジネスのため渡米している最中に、社長室の金庫が破られたというものだった。なにか弱みがあるらしく、極力警察に踏み込ませたくないから、内部捜査をやった上で、犯人を捕らえて突き出したいところ。それには佐伯の頭脳が必要だというのだ。

 二人は窃盗事件の現場である黒澤商事にむかう。

   //登場人物//


【主要登場人物】

佐伯祐さえき・ゆう……身長180センチ、黒縁眼鏡をかけた、黒スーツの男。東京に住む長野県を選挙地盤にしている国会議員・島村センセイの公設秘書で、明晰な頭脳を買われ、公務のかたわら、警察に協力して幾多の事件を解決する。『少佐』と仇名されている。

三輪明菜みわ・あきな……無表情だったが、恋に目覚めて表情の特訓中。眼鏡美人。佐伯の婚約者。長野県月ノ輪村役場職員。事件では佐伯のサポート役で、眼鏡美人である。

●真田幸村警部……七三分けの髪型で四角い顔をした、大柄な男。東京都警視庁のキャリア組。三輪明菜の住む村月ノ輪村に駐在する、長野県警・真田巡査の甥。その気になれば自力で解決できる事件でも佐伯利用して捜査費用を浮かせようとする。

●島村代議士……佐伯の上司。センセイ。古株の衆議院議員である。


【事件関係者】

●黒沢社長(社主)……依頼人。島村代議士が親しくしている学生時代の後輩。

江口仁志えぐち・ひとし……渉外課の係長。コロンを効かせた長身の美男で、デキル男の評判がある。

酒巻健司さかまき・けんじ……さえない感じをした総務課所属の若い社員。タラコ唇。筋肉質。

小泉志保こいずみ・しほ……一見してお水系な美人秘書。


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