何気無い日常とうんざりする日常
「今日の連絡も終わり、さっさと帰れ。」
雑な挨拶も終わり、2-B教室の生徒達が雑談したり、掃除したり、部活に行ったり、帰宅したりと、各々行動する何気無い日常の一コマ。
そんな中後ろの席で背骨をバキバキ響かせながら帰ろうとする青年。
「さてと、帰るか。」
少し大柄で、特長は左頬の薄い傷、黒髪黒目の男、岩木涼二。
彼は一年前までは男女共に良くも悪くも目立っていた青年だった。
涼二が鞄を持ち帰ろうとすると三人の女子が近付く、一人はハーフの金髪美人、一人は目力の強そうな茶髪ロング、一人は眼鏡を掛けたポニーテール、三人とも美人、美少女の部類に入る。
「岩木さん、少しよろしいかしら?」
金髪が交遊的で無い声をかける。
「…‥なんだ。」
涼二は不機嫌そうに返す。それも仕方無い、一年間ずっと同じ質問をされているのだから。
「山神蒼甫さんの情報は有りませんの?」
山神蒼甫
アイツを一言で言うなら、完璧超人。
ルックス良し、性格良し、成績良し、運動良しと、天からいくつもの才能を与えられた存在。
女子からの人気も高く、わざと鈍感な振りをして女子の争いを最小限にしたりと気づかいもできるヤツだった。
そんなアイツと小、中、高と付き合いの有るオレは何かと巻き込まれる事が多く、周りに対しての気づかいはオレにだけは向けてくれなかった。
アイツはオレの事を親友と言っていたが、オレは全否定していた。
事有る毎に巻き込まれ、良く一緒にいるから女子には目の敵にされ、逆怨みした不良を処理していれば、オレの評価は下がる一方。
唯一良かった点は、アイツの写真を売れば高値で買い取るヤツが多かった事ぐらいだ。
そんなアイツが行方不明になったのは一年前、突然姿を消したのだ。
周りは一緒にいる事が多かったオレを疑い、警察等もオレの周りを調べていたが、しかし全くアイツの影も形も見えずオレは関係無いと判断された。
だが、アイツの取り巻きは諦め悪くオレに聞いてきた。
そのせいでオレには色々と噂がついて回った、オレが何も言わないと言うことで噂は一人歩きしどんどん大きくなり、逆に信じられない内容になり消えた。
取り巻き達も少しずつ姿を消し、今となっては話にも出ない。
しかし、オレの次に付き合いの長かったこの三人はいまだにオレが何か隠していると思い聞いて来る、周りはまたかと呆れ顔だ。
「何も無いよ。」
オレがそう言うと。
「では何か知っている事は?」
こんな質問を毎日のようにしてくる。
オレが三人から離れると。
「待ちなさい!」
追いかけて来る。
こんな日々が毎日続いた。
「ここまで来れば良いか。」
学校からかなり離れた場所で足を止め一息ついた、肉体的な疲れは無いが、精神的には有ったからだ。
こんな事がいつまで続くのかとうんざりし、仕方無いと諦める、アイツの事で隠し事が有るのは本当だからだ。
コンビニにでも寄って帰ろうとしたとき、足下が光った。
「マジか。」
愕然としながらオレは半分諦めた感じで身を任せた。
気づけば足下に魔方陣、周りには高校生ぐらいの男一人に女二人、正面には姫のような女一人、後その他大勢。
「勇者よ、良く来て下さった、どうかこの世界を救ってくれませんか。」
その言葉に困惑するイケメンとその他大勢、そして。
「またか!」
本日で五度目の異世界召喚をされ叫ぶオレだった。