流れる時
町外れの小さな家
二階の小さな窓から見える景色と
自分の家だけが
彼のすべて
陽射しの降り注いでいる
明るい朝、彼はふと気づいた
まだ開けたことのない
扉があることに
ドアノブに手をかけると
想像よりずっと軽く開け放たれた
まぶしいばかりの光が
視界をうめつくす
そう、そこは彼にとって
未だ見知らぬ世界
かつて知ることのなかった
『外』の世界
土には草が根を張り
吸い込まれるほどに青い空があり
花が一面に
咲き乱れている
そこは正しく
生命の上に創られた世界
緩やかに流れつづける
『時』の中に、ここは在る
止められていた、時計の針は
今
ここで
動き始めた
お読みいただき、ありがとうございました。