看病
ピピピピッ。
腋に挟んだ体温計の電子音が、鳴る。ディスプレイを見てみると。
「38.6度……完全に風邪だな……」
こりゃ高校に連絡いれねぇとな。
近くにある携帯を開き、ダイヤル。
『おぉ、どうした木原』
電話の相手はうちの担任。生徒に対しフランクなので有名だ。
木原とは俺の事。正式名称:木原 東夜。職業:高校2年生、彼女:いるわきゃねぇだろ?
とまぁ、熱でやられた頭をフルに使い、俺は言葉を絞り出す。
「あー、すんません。風邪ひいたんで今日休みます」
『マジか?馬鹿でも風邪ひくのか』
先生、一言余計だぞコラ。
『ま、了解した。しっかりと治せよー』
「うーい」
とりま、これで学校はクリアした。後は……。
「さぁきー君、お姉ちゃんが体で温めてあげるからね!」
「姉さんはダメ。それをやるのは私」
こいつらを、どうにかしなくては……。
木原 瑠々(きはら るる)。我が家の長女にして俺の姉。役割は掃除担当。
燃えるような赤い長髪をポニーテールにした、まだ幼さが残る顔立ちの美少女。
木原 麗。我が家の次女にして俺の義妹。役割は洗濯担当。
薄いピンクの短髪をアップでまとめた、キリリとした目つきが特徴の美少女
俺と同じ学校で、姉さんは1個上、麗は1個下。
本当は学校に行っているはずなのだが、俺が風邪と分かるや否や。
「お姉ちゃんが看病する!」
「私がやるから姉さんは学校へ行って」
「それを言うなら麗ちゃんだって学校行きなよ!」
とまぁ、ギャーギャー騒がれても疲れるだけなので、2人にやってもらう事にしたがそれが間違っていた。
腹が減ったといえば2人は暗黒物質を生み出して食わせようとするし、汗を拭きたいといえば2人にモミクチャにされ、眠たいといえば無理に添い寝しようとしてくる。
あぁ、この状況。
「誰か助けてくれ……」