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「お互い干渉しない」という条件で偽装結婚した冷徹上司ですが、私の無防備な部屋着姿を見てからタガが外れたらしく、毎晩の『夫婦の義務』が激しすぎて腰が持ちません

作者:
掲載日:2026/04/23

「『夫婦間の過度な身体的接触は求めない』――契約書には確かにそう書かれていたはずなのに、今、私の両手は彼のネクタイでベッドのヘッドボードに縛り付けられている」


「ひ、氷室部長……っ、話が、違っ……!」

「黙って。君が悪いんだよ。そんな無防備な格好で、俺の理性を試すような真似をするから」


 荒い息を吐きながら私を見下ろす漆黒の瞳には、社内で「氷の魔王」と恐れられる冷徹な上司の面影は微塵もない。そこにあるのは、飢えた獣のような、ドロドロとした熱い欲望だけだった。


 事の発端は、わずか数時間前に遡る。


 私、佐倉結衣さくら ゆいは、営業部エースにして鬼のトップである氷室蓮ひむろ れん部長と、偽装結婚をしている。

 理由は互いの利害の一致だ。私は実家からの執拗な見合い攻撃から逃れるため。氷室部長は、社長令嬢からの強引な縁談を断るための「盾」として。

『生活空間は完全に分ける』『互いに干渉しない』『身体の繋がりは持たない』

 分厚い契約書にサインをして始まった同居生活は、驚くほどドライで快適だった。家の中でも彼は冷徹で、必要最低限の業務連絡しかしない。完全に「上司と部下」の延長だった。


 ……そう、今日の夜までは。


「ふふふん〜、今日は部長も出張だし、天国〜!」


 金曜日の夜。氷室部長は関西への二泊三日の出張で不在だ。

 完全に気を抜いていた私は、風呂上がりにノーブラのまま、ペラペラの薄いシルクのキャミソールと極小のショートパンツという、絶対に人には見せられない姿でリビングをうろついていた。

 おまけにソファで胡座をかきながら、ちょっと高めのカップアイスを幸せ気分で頬張っていた、まさにその時だった。


 ――ガチャリ。


 玄関のドアが開く音がして、静まり返ったリビングに重い革靴の足音が響いた。

「……え?」

 スプーンを咥えたまま振り返った私の視線の先には、出張中のはずの氷室部長が立っていた。スーツのジャケットを片手に持ち、少し疲れたようにネクタイを緩めている。


「あ、れ……? 部長、出張は……?」

「先方の都合で明日に延期になった。……それより、佐倉」


 氷室部長の動きが、ピタリと止まった。

 彼の冷たい三白眼が、私の全身を舐め回すように動く。濡れて滴る髪、ノーブラのせいで胸の突起がはっきりと浮き出ている極薄のキャミソール、そして胡座をかいたことで露わになっている太もも。


「あっ……! ち、ちがっ、これは……!」

「……お前、俺がいないと家でそんな格好をしてるのか」


 声のトーンが、いつもより一段階低かった。

 ぞくりと、背筋に冷たいものが走る。アイスのカップをテーブルに叩きつけるように置き、慌てて胸元を隠して立ち上がった。

「すみません! すぐに着替えてきます!」

 逃げようと足を踏み出した瞬間、ドサリと床にジャケットが落ちる音がした。


「きゃっ!?」


 次の瞬間、私の腕は強く引き寄せられ、そのまま背中からソファに押し倒されていた。

「ぶ、ちょ……?」

「逃がすわけないだろう」

 私の上に馬乗りになった氷室部長が、ネクタイを乱暴に引き抜きながら、見たこともないほど甘く、そして暗く濁った瞳で私を見下ろしていた。


「あ、あの! 契約書! 身体の接触はなしって……!」

「あぁ、あれか。あんな紙切れ、今すぐ破り捨ててやる」

「えっ!?」

「佐倉、君は本当に鈍いな。俺がただの利害の一致で、わざわざ自分の戸籍を汚すと思うか?」


 氷室部長の大きな手が、私のキャミソールの細い肩紐を指でなぞる。それだけのことで、肌が粟立った。

「偽装結婚なんて、君を俺のモノにするための口実に決まってるだろう」

「……え?」


「君が入社してきた日からずっと、俺がどれだけ我慢してきたか。職場で君が他の男と笑うたびに、どれほど気が狂いそうになったか……君には一生わからないだろうな」

 彼の口から紡がれる信じられない言葉に、私は息を呑んだ。

 あの、冷血漢で仕事の鬼の氷室部長が? 私を?


「だから外堀を埋めて、誰も君に手を出せないように俺の妻にした。……本当はもう少し時間をかけて絆すつもりだったが、君が悪いんだ。こんな姿を見せられて、これ以上理性を保てるほど、俺は聖人君子じゃない」


「ひゃっ……!」

 冷たい指先がキャミソールの裾から滑り込み、私の素肌を直接撫で上げる。ビクンと身体が跳ねると、彼は満足そうに口角を上げた。


「待っ、だめ、心の準備が……!」

「必要ない。君の身体ごと、俺が今すぐわからせてやる」


 ――そして、冒頭のシーンへと至る。


 縛られた両手。逃げ場のないベッドの上。

「泣いて許しを請うても、朝まで逃がさないから覚悟しろ、結衣」


 初めて名前で呼ばれた声の甘さに、私の頭はあっという間にショートした。

 その後の記憶は、ひたすらに熱く、甘く、そして溶かされるような快感の連続だった。普段の冷静さなど微塵もない、ただの「オス」になった彼に、私は何度も何度も貪られ、身も心もドロドロに溶かされていった。


 ◇◇◇


 翌朝。

 小鳥のさえずりで目を覚ました私は、全身を襲う激しい筋肉痛と腰の痛みに顔をしかめた。

「……痛いっ……」

「おはよう、結衣。よく眠れたか?」


 声のした方を向くと、そこにはシャツのボタンを開けっ放しにした、信じられないくらい色気ダダ漏れの氷室部長……いや、蓮さんが、トレイにコーヒーと朝食を乗せて立っていた。

 その顔は、長年の憑き物が落ちたように清々しく、そして甘い。


「……ひどいです、いくらなんでも、あんな……」

 抗議しようとした私の目の前に、彼は一枚の紙をヒラヒラと見せつけた。

 それは、私たちが交わした「偽装結婚」の契約書だった。


 ビリッ、ビリビリビリッ!


「あ……」

「これで、俺たちを縛るくだらないルールはなくなった。結衣、これからは本物の夫婦として、俺の激重な愛を一生受け止めてもらうからな」


 呆然とする私の唇に、チュッと軽いキスが落ちる。

「さて、朝食を食べたら、昨日の『続き』をしようか」

「む、無理です! 腰が砕けます!」

「大丈夫だ。君の身体が俺以外を受け付けなくなるまで、優しく教えてやる」


 ……どうやら私の平穏な生活は、昨日をもって完全に終了したらしい。

 でも、私を抱きしめる彼の腕はたまらなく温かくて、私自身もこの状況を「悪くない」と思ってしまっているのだから、救いようがない。


 鬼上司との偽装結婚は終わりを告げ、今日から、とてつもなく甘くて過激な、本物の新婚生活が始まるのだった。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!


もし本作を読んで、

「面白かった!」

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