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異世界投資ファンド〜剣も魔法も使えないので、利回りで世界を救います〜  作者:


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第7話:商売は人と人でできている

次の仕入れを増やすと決めた翌日。

父は珍しく夜明け前に起きていた。馬車の準備をしながら、落ち着かない様子でそわそわしている。


「お父さん、そんなに緊張してどうするのよ。昨日のうちに全部準備してたじゃない」


「いやぁ、今日の仕入れは勝負だからな……気が引き締まるというか……」


母が呆れたように微笑む。

父がこんなに気合いを入れているのは久しぶりだ。なんだか、見ているこちらまで背筋が伸びる。


「じゃ、行ってくる!」


「気をつけてね。薬師さんによろしく」


「カイ、帰ったらまた計算頼むぞ!」


「うん、任せて」


父が馬車を走らせると、家の前に静けさが戻った。

朝の空気はひんやりしていて、どこか今日の結果を予感させているようだった。


(さて、私は家で準備をしようかな)


販売計画の見直し、売れ行きの記録、そして少し気になっていた「顧客リスト」なるものの作成。

前世の記憶が所々曖昧でも、こういうところは体に染みついている。


そんなふうに集中していると――。


「こんにちはー! 昨日の薬草、まだありますか?」


「えっと、それが今日は父が仕入れに行ってて……夕方には戻ると思います」


「あーよかった、じゃあ予約していい?」


「いいよ。名前を教えてね」


昨日来たばかりの冒険者のお姉さんだ。

予約という発想がこの世界にあまりないから、私の言葉に一瞬驚いていたが、それでも嬉しそうに頷いた。


すると、その様子を見ていた近所のおばさんが声をかけてきた。


「ちょっとアンタ、昨日の薬草そんなに良かったの?」


「うん! 効きが全然違うよ! 質のいいの選んでくれてるみたいでね!」


「へぇ……なら私も欲しいわね。腰が痛い時に使うのよ」


「じゃあおばさんも予約していいよ」


「あら、そんな気軽に……助かるわぁ」


(予約が……増えてる……)


あれよあれよという間に、午前中だけで四件の予約が入った。

これは想定していた以上の伸びだ。


(これ、もう完全に小規模ファンドじゃないよね……)


家族三人だけで回すには、そろそろ限界が見え始めている。

でも、それは悪い兆しではなく、成長している証拠でもある。


夕方。父が帰ってきた。

荷台に積まれた薬草の量を見て、母が目を丸くする。


「ちょっと……これ本当に全部売るつもりなの?」


「う、売るさ! いや売れる! そう思って仕入れた!」


「うん。大丈夫。今日の予約、七件あるよ」


「なな……七件!?」


父の膝が一瞬カクンと落ちた。


「父さん、大丈夫?」


「いや……嬉しすぎて……足が……」


母が吹き出した。

父は涙目になっている。


「な、なんでこんなに急に……?」


「噂って、止められないんだよね。いいものを売れば、勝手に広まっていくよ」


父はしみじみと頷いた。


「商売って……こういうことなんだなぁ……」


薬草の販売はその日のうちに、見事に完売した。

父の安堵と喜びが混ざった声は、多分一生忘れない。


(でも……次はもっと大きな波が来る気がする)


家族だけの規模を超えつつある。

資金、労働力、販売網――どれも次の段階に進む時が近い。


商売は人と人でできている。


そう実感できたのは、この日の夕暮れだった。

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