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異世界投資ファンド〜剣も魔法も使えないので、利回りで世界を救います〜  作者:


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第36話:風より速く、夢より自由に

運送ライダーたちが魔動二輪で各地を駆け回るようになってから、ある変化がゆっくりと、しかし確実に生まれ始めていた。


「おい見たか!? あの若い運転手!」

「曲がり角で魔動二輪を倒し込みながら旋回してたぜ!」

「危なすぎる! ……いや、かっこよすぎる!!」


若者たちの間で、“走りの技術そのもの” が注目され始めたのだ。


(こうなる気はしていたけど……早いなぁ)


ただ乗り物が誕生するだけで、人は必ず“競い”たくなる。


そしてついに――その流れは一つの形となる。


―――


ある日、R&D企業の前に数十名の若者が集まっていた。


「カイ様! 我々は、お願いがあり参りました!」

「魔動二輪で……レースをしたいのです!」


代表の青年は、頬を紅潮させながら言った。


「運送ライダーの仕事とは別に、魔動二輪そのものの性能を競う“競技”が作りたいのです!」


「競技……魔動二輪競技……」


私は静かに考える。


(危険性は高い。でも、きちんと管理すれば“文化”になる)


「……いいよ。協賛ファンドを開いて、“公式レース” として開催しよう」


「お、おおおおおおおお!!!!」


若者たちの歓声が村に響き渡った。


―――


魔動二輪レースの構想が発表されると、驚くほど多くの企業から協賛の申し込みがあった。


「魔動車工場からの協賛を申し込みたい!」

「護衛会社としても、新たな訓練の場になる!」

「加工工房としては、選手用の軽量装備を支援したい!」

「商人組合としては、観客席と屋台を担当したい!」


さらに――


「王国も、公式競技として後援したい」


という書簡まで届いた。


空、陸、物流、加工、教育、護衛……ありとあらゆる産業が、このレースに興味を示していた。


(魔動二輪だけじゃない。“若者が熱狂する場所”は、産業の母体になるんだ)


―――


「ここをもっと広く!」

「カーブは魔動二輪の特性に合わせて傾斜をつけて!」

「観客席は風向きに合わせて配置します!」


R&D企業とインフラ整備ファンドが手を組み、世界初の “魔動二輪レース場” が建設された。


地形を活かしながら、

高速走行に適した直線と曲線、

観客席、救護施設、安全管理塔まで完備。


「これ……村とは思えないな」

「いやもう、王都超えてるだろ……」


村人たちも圧倒されていたが、誇らしげでもあった。


―――


大会前から、村は賑わいを見せていた。


「この装備、レース用に軽量化してるんだって!」

「魔動二輪の柄を好きな色に変えられるらしいぞ!」

「推し選手のマーク入り布旗だって!」


子どもたちは選手の真似をして走り回り、若者たちは魔動二輪の飾りつけや整備に夢中。


最初の運送ライダーたちは、いつの間にか“若者の憧れ”になっていた。


(世界は本当に……どんどん変わっていく)


―――


レース当日、観客席は満員。

王族も視察に訪れ、商人たちは屋台の準備で大忙し。


「カイ様、すごい人の数だ……!」

「まさかこんなに集まるとは……!」


私はスタートラインに並んだ選手たちを見つめた。


彼らは緊張よりも、期待で震えている。


「今日、俺たちは歴史を走る……!」

「うちの家名の名誉にかけて!」

「いや、今日は純粋に楽しむぞ!」


そして合図。


「位置について――スタート!!」


魔動二輪のエンジンが一斉に唸り、風を切る音が会場を包む。


地面を削るように走り抜け、カーブで車体を傾け、まるで生き物のように滑らかに進む。


観客は立ち上がり、歓声を張り上げた。


「すごい速さだ!!」

「魔力の軌跡が見えるぞ!!」

「あそこは危ないカーブだが……!!」


私は胸が熱くなった。


(たったひとつの技術が……こんなにも人を笑わせることができるんだ)


―――


レースは大成功だった。


優勝者には魔動二輪の新型が贈られ、スポンサー企業の紹介と広告が大々的に流れる。


協賛企業はどこも満足そうだった。


「売り上げが上がりました!」

「うちの装備を使う若者が増えている!」

「観光客も増え、宿屋も満室です!」


そして村の周辺では、いつの間にかこんなものまでできていた。


・魔動二輪専門店

・整備工房

・公式グッズ屋

・若者向けカフェ

・レース観戦ツアー宿



(……完全に“文化”になってる)


魔動二輪は、ただの乗り物ではなく、若者にとっての“自由の象徴”になっていた。


―――


レースが終わった夜、私は少し抜け殻のように空を見上げた。


「カイ、お前……また一つ世界を変えたな」


父が笑い、おじいさんが杖で地面を叩いた。


「坊。技術はのう……人の心を動かす時が、一番価値を放つんじゃよ」


(たしかに……そうだね)


魔動車も、飛空艇も、魔動二輪も。

すべては人々の“生活の喜び”を増やすためにある。


私はそっと呟いた。


「次は……この世界を、どこまで広げようか」

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