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異世界投資ファンド〜剣も魔法も使えないので、利回りで世界を救います〜  作者:


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34/40

第34話:知ることが、人を守る

魔動車工場の株式ファンドが成功し、村にも周辺地域にも“株主”が生まれ始めた。


春の分配金が支払われた日、村のあちこちから喜びの声が聞こえてきた。


「これで今月は楽ができるなぁ」

「株ってすごいねぇ、本当にお金が増えるんだ!」


その光景はとても嬉しかった。

しかし――そこに、“微かな違和感”も混じり始めていた。


―――


「カイくん! 株買ったら絶対儲かるんだよね?」

「え……いや、絶対は……」


「カイちゃん、借金してでも買った方がいい?」

「だ、だめだよ!?」


「この村の株買わないと、損しちゃうの?」

「損しないために買うものでは……ないんだけど……」


私は頭を抱えた。


(これは……やばい)


お金に余裕ができた人たちが、投資を“魔法の袋”のように誤解し始めている。


分配金が確かに嬉しいのはわかる。

けれど投資はあくまで事業の一部を持つことで受け取れる利益だ。


誤解したまま広まれば、“投資を理由に破産する人”も出てしまう。


(技術だけじゃなく……お金も、人を傷つけることがある)


それは、過去の世界で嫌というほど見てきた光景だった。


―――


私が頭の中で整理していた頃、父が分配金の計算書を持ってきながら言った。


「嬉しい声が増えたな、カイ。でも、中にはちょっと……心配になる声もあるぞ」


「父さんもそう思った?」


「思ったとも。投資が“ギャンブル”みたいに扱われてしまっては、危なっかしい」


おじいさんも深くうなずいた。


「坊、金の流れを扱う者ほど、教育には敏感になるべきじゃ。知らぬ者は、悪い奴らに狙われるからな」


(……その通りだ)


私は机に広げた紙へと視線を落とした。


「これは、一度ちゃんと“学んでもらう場”を作る必要がある」


―――


「みんな、今日は特別な発表があります!」


村の広場に集まった人々が、期待に満ちた表情で見つめてくる。


(みんなの気持ちに水を差すことになるかもしれない……でも、言わないといけない)


私は深く息を吸った。


「株は……素晴らしい仕組みです。でも、“学ばなければ危険”な仕組みでもあります」


ざわ……と広場が揺れた。


「知らないまま投資をすると、いつか大きな損をするかもしれません」


不安そうな顔が増える。


だからこそ、私は続けた。


「だから――教育に投資するファンド を作ります!」


その瞬間、空気が変わった。


―――


◆教育ファンドとは何か(カイの優しい説明)


「教育ファンドでは、読み書き計算だけでなく、“お金を守る方法”まで学べます」


紙に簡単な図を描く。


●教育ファンドの内容

 お金の増やし方

 減らないように守る方法

 投資と借金の違い

 詐欺の見分け方

 株価変動の理由

 事業計画の読み方



「これらを学ぶことで、みんなが“自分で判断できる力”を持てるようになります」


すると村の人々から、ポツポツと不安と期待の入り混じった声があがった。


「……カイ……わたしにもできるかな?」

「読み書きも苦手だけど……」

「難しい言葉ばかりじゃ、頭が追いつかないよ」


「大丈夫です。全部、やさしく、わかりやすく伝えます」


―――


その日のうちに、投資会社の入り口には長蛇の列ができた。


「子どもと一緒に学びたい!」

「商売をやってるが、基礎をやり直したい!」

「冒険者向けの“報酬管理の講座”はあるかい?」

「老後が不安だから、勉強させてくれ……!」


(あぁ……本当は、みんな学びたかったんだ)


株は“夢”を見せてくれるけれど、裏には必ず“知識”が必要になる。


教育ファンドは、村だけでなく他国からも申し込みが来た。


王国の大臣からは、


「これを国立教育にも導入したい」


という手紙まで届いた。


―――


「カイせんせー! 株ってなにー?」

「お金が増えるの?」

「減ることもあるんだって!」


子どもたちが、黒板を前に真剣な顔をするようになった。

その姿は、どんな魔動車よりも輝いていた。


「いいかい、投資は“未来に期待すること”なんだよ」


「みらいー?」


「そう。未来に頑張る会社を応援すると、そのお礼としてお金が返ってくるんだ」


「じゃあカイせんせーを応援したら増える?」


「えへへ……がんばるよ」


子どもたちの笑い声に、父も母も、おじいさんも目を細めていた。


―――


(投資は、人を救う。でも、知らなければ人を傷つける)


だからこそ、“知ること”を当たり前にしなければならない。


「教育が広がれば……きっとこの世界はもっと優しくなるはずだ」


私は書類にそっとペンを置いた。


(これでやっと……投資の世界を“安全なもの”にできる)


そして広場の向こうでは――魔動車が走り、飛空艇が空を横切り、村人たちが新しい学舎に入っていく。


世界は、またひとつ前へ進んだ。

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