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異世界投資ファンド〜剣も魔法も使えないので、利回りで世界を救います〜  作者:


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33/40

第33話:世界初の“不労所得”という革命

魔動車と飛空艇の運用が始まり、

世界の移動がほんの少しだけ速く、便利になった頃。


私は新しい資料を前に、静かに息を整えた。


(次は……人々の“お金の流れ”そのものを変える番だ)


これまでのファンドはすべて「事業から出資者へ利益を返す仕組み」だったが、まだ“個人の小さな投資”は扱っていなかった。


(でも、村人たちは今……貯蓄がある)


農業ドーム、物流改善、加工工場の恩恵で、食費は下がり、収入は増え、村人たちは初めて“余剰金”を持つようになった。


そこに私は、そっと新しい種を落とした。


―――


「みんな。今日は……新しい投資の話があります」


広場に集まった村人たちは、どこかそわそわしていた。


「次の投資先は――魔動車の製造工場 です」


「お、おお……!」

「今あちこちで話題になってる乗り物だろ?」

「王族が乗ってるって噂の……」


私はうなずいた。


「この工場に“株”という形で投資してもらいます。株を持っていると、季節ごとに分配金が支払われます」


「……季節ごと?」

「というと……年に四回!?」


「はい。つまり、春・夏・秋・冬――年に四度、お金が増える仕組みです」


ざわっ、と広場の空気が揺れた。


―――


「でもカイ、それって……働かなくてもお金が増えるってことかい?」

「そうです。これが――不労所得 といいます」


その言葉に、どよめきが一斉にあがる。


「働かずに……お金が……」

「そ、そんな夢みたいな……」

「いや、でもカイの言うことだ。きっと……」


私は続けた。


「魔動車は今、王族や上流貴族の間で非常に高額で取引されています。工場の儲けの一部、協賛総額の5% を出資者に返します」


村人たちは、分かりやすい数字で計算し始めた。


「銀貨一枚投資したら……銅貨一枚が戻る?」

「一年で四回……? 銅貨四枚……!」


「銅貨四枚って……半月分の食費じゃないか!」


「働かずに……稼げるなんて……」


その時、村のパン屋のおばさんが震える声で言った。


「……カイちゃん。そんな仕組みが本当に……私たちにも許されるのかい……?」


私はまっすぐに答えた。


「みんなが“支えた技術”の恩恵は、みんなが受け取っていいんです」


―――


物価が下がり、生活に余裕が生まれ、村人たちはこぞって株を購入した。


「うちも銀貨二枚いくよ!」

「私は一枚だけだけど……絶対買う!」

「こりゃあ……じいさんの老後が安泰だわい!」


生活支援投資会社は慌ただしくなったが、仲間たちの表情は嬉しさに満ちていた。


そして私は……もうひとつの仕掛けを用意していた。


―――


「株を買ってくれた人には、株主優待 があります」


「また新しい言葉が……」

「今回は何だい?」


「魔動車の乗車券、一回分です!」


「!!」


広場が大きく揺れた。


「魔動車に……乗れるのか!?」

「夢の乗り物じゃないか!」

「貴族様しか乗れないって噂の……!」


子どもたちが目を輝かせ、大人たちはそわそわと落ち着かない。


(こういう“小さな夢”が、生活を豊かにする)


優待の存在は、想像以上の効果を生んでくれた。


―――


株は売れに売れた。

むしろ、足りないほどだった。


すると――他の産業も黙ってはいなかった。


「うちの牧場でも、株を発行してみたい!」

「農家組合でもできるか? 収穫物を優待にできるぞ!」


調理加工工場、酪農家、織物工房……次々と 株式ファンド を立ち上げ始めた。


●牧場株式ファンドの人気優待

・牛乳毎月一瓶

・バター一塊

・干し草の優先販売枠


●農家株式ファンドの優待

・季節の野菜詰め合わせ

・薬草の定期便

・新作作物の試供品


村に生まれた“株主”たちは、口々に笑っていた。


「優待で届いた野菜、美味しかったよ!」

「株ってすごいなあ……本当に届くんだ!」

「お金が増えるだけじゃなくて、生活も豊かになるねぇ!」


―――


私は、書類棚いっぱいに積まれた“株式配当計算書”を見ながら思った。


(投資って……不思議だな)


誰かのために作った小さな仕組みが、いつの間にか世界を巻き込み始めている。


父が肩を叩いて笑う。


「カイ、お前……これ本当に世界変えちまうぞ」


「えへへ……でも、これでようやく“未来への土台”ができたよ」


おじいさんは穏やかに目を細めた。


「坊。金の流れが変われば……世の価値まで変わる。その変化を恐れない心が、大事なんじゃよ」


魔動車は工場で動き続け、

飛空艇は空を舞い、

村には“新しい経済”の風が吹いていた。

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