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異世界投資ファンド〜剣も魔法も使えないので、利回りで世界を救います〜  作者:


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第25話:国家契約という、大きな扉の前で

冬の冷気がまだ村の道に残るある日。

ついに――国から正式な書簡が届いた。


「生活支援商会 殿

 薬草定期購入ファンドおよびポーション定期供給に関し、

 正式な契約交渉の場を設けたい」


父が手紙を震える手で持ち、「か、カイ……ついに、国が……」と呆然としている。


私は深呼吸を一つ。


(ここからは“本当の国相手”だ。遊びでも、偶然でもない。しっかりやらなきゃ)


気を引き締めて、商会の仲間を集めた。


―――


案内されたのは、石造りの厳格な会議室だった。

長い机の向こうには数名の役人と、軍務の代表らしき人物もいる。


前回よりも、空気はずっと重く、冷たい。


(当然だけど、今日は“試される日”だ)


役人たちは私を見て、小声でひそひそ囁く。


「噂の子どもか……」

「本当に商会を回しているのか?」

「契約の責任を負えるのか……?」


疑念が渦巻くが、それは仕方ない。

疑われるのは、実力が認められる前触れでもある。


私はゆっくりと頭を下げた。


「生活支援商会、代表のカイです。本日はよろしくお願いします」


―――


最初に提示された国家側の条件は、一見すると厳しいものだった。


「薬草の供給量は年間で一定以上」

「ポーションは品質を均一に」

「輸送ルートの整備は商会側の責任」

「納入遅れは罰金」


さらに――


「国は、商会の人員と帳簿を随時監査する」


という項目まであった。


(これは……元会長の悪評の影響も残ってるな)


私は書類に目を通し、ひとつずつ確認しながら言った。


「納得する部分もあります。でも――この条件のままでは国も損をしますよ」


役人たちが眉をひそめた。


「どういう意味だ?」


―――


「薬草とポーションは、どちらも自然や戦況に左右されます。だから“供給量を固定”すると、不足した時に国は追加で高額な調達をすることになります」


「……!」


「つまり、固定量+追加費用で、国は無駄な出費を抱えるリスクがあるんです」


軍務の代表が静かに頷いた。


「たしかに……戦地では常に不足が起きる。定量契約だけでは補えぬことが多かった」


「だからこそ、ファンド方式が有効なんです」


「薬草定期購入ファンドに加えて――ポーション定期お得便ファンド を併せて使ってください」


役人たちが身を乗り出す。


「どのような仕組みだ?」


「まず国が“定額”を出資します。商会はその資金を基に、薬草とポーションを安定供給します。不足の時期は定期ファンドから補填し、余剰時には備蓄として蓄えられます」


軍務代表の目が鋭く光った。


「不足の時期……つまり戦時にも、か?」


「もちろんです。むしろ国ほどの顧客なら、ポーションは喉から手が出るほど欲しいはずですよね?」


役人たちは黙り込んだ。


「それが、安価で、大量に、均一品質で手に入るとしたら? 損をするのは……誰だと思いますか?」


私は微笑んだ。


「たぶん、誰も損をしません」


沈黙。


そして――


「……この子は恐ろしいほどの発想をするな」

「国の財政負担が減る……」

「軍の補給線も安定する……」


空気が一気に変わった。


「しかし……理屈は理解したが、我々は“目に見えるもの”が欲しい」


「そのために持ってきました」


私は合図を送り、薬師さんが前へ。


そして――冒険者が持ってきた“バラバラ品質のポーション”三本と、薬師が加工した“均一品質のポーション”三本を並べる。


「まずは差をご覧ください」


役人たちの表情が変わる。


「色も粘度も……まったく違う」

「均一化にここまでの技術が……!」


薬師さんは穏やかに言った。


「カイ坊の商会が確保した薬草と装備があれば、これくらいの均一化は容易ですよ」


私も続ける。


「国は“結果”を買っています。その結果は、こうしてお見せできます」


しばらくの沈黙。


やがて、軍務の代表が口を開いた。


「……国家として、正式に契約を結びたい」


別の役人も続く。


「薬草定期購入ファンド――前向きに採用する」

「ポーション定期お得便ファンド――今後の軍用として期待したい」


父が小さく息を呑み、商会の仲間たちは泣きそうな顔で喜んでいる。


(よかった……これで本当に一歩進めた)


役人のひとりが帰り際に言った。


「カイ殿……国として、あなたほどの商才と誠実さを持つ者は珍しい。これからも協力したいと思っている」


私は深く頭を下げた。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


(信頼が……人脈が……本当に“国”に届いたんだ)


胸の奥がじんわり熱くなる。


―――


こうして――生活支援商会は国家公認の大商会としての第一歩を踏み出したのだった。

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