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異世界投資ファンド〜剣も魔法も使えないので、利回りで世界を救います〜  作者:


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第24話:信頼は、妨害すら飲み込んで積み上がる

国との契約交渉が軌道に乗り始めた頃だった。

商会では、なぜか“小さなミス”が続くようになった。


例えば――


「カイ坊! えらいこっちゃ! 道の先に大岩が転がっとる!」


キャラバンが通る予定の街道に、突然巨大な岩が転がり込み、荷車が通れなくなる。


例えば――


「こ、これ誰が……!? 商品棚がひっくり返されてる!」


屋台用の棚が、夜の間に何度も倒される。


例えば――


「最近、悪い噂ばかり流されてるぞ……“商会は裏金を動かしてる” とか……根も葉もないものばかりだ」


どれもささい。

だが、積み重なれば商会の信用を削る。


(……会長だ)


すぐにわかった。

あの男がいなくなったはずなのに、その“影”は依然として足を引っ張ってくる。


私は苦い顔をしながらも、こう決めた。


(影に怯えても仕方ない。一つ一つ、確実に解決していこう)


―――


① 大岩の問題 → “インフラ整備ファンド” の誕生


「道が塞がれたら、物流が止まる。なら、道を整えればいいよね」


「整えるって……どうやって?」


私は紙に大きく三つの丸を描いた。


・各村から細かな小銭を集める

・その積み重ねで道の整備を行う

・インフラは“全員の利益”になるからみんな協力しやすい


「これが“インフラ整備ファンド”です」


村人たちが目を丸くした。


「小銭で……道が直るのか?」

「積もれば大金になるってことか?」


「はい。そしてこれは“みんなで作る道”になります」


すると――驚くほどすんなり協力が集まった。


「うちも出すよ!」

「わしも少しなら……」

「冬は動けん。せめて小銭だけでもな」


数日後、大岩はキャラバンと村人の共同作業で取り除かれ、道は以前より滑らかに整えられた。


(……信頼が積まれてる証拠だね)


② 棚の問題 → “仕入担当の工夫” で改良


次に、棚がひっくり返される問題。


「どうして倒れるんだ……?」

「夜の間に誰かが揺らしてるんだろう」


馬車の上に一枚板を置いただけの棚は、風が吹いただけでも揺れる脆さがあった。


私は仕入担当に相談した。


「丈夫な板や布って、安く手に入る?」


「任せてください!」


彼らは遠方市場で値切りに成功し、厚い板と丈夫な布を大量に仕入れてきた。


屋台担当は布を折り重ねて“クッション”にし、倒れにくい高さのテーブルを作り、板を固定して棚を置く。


「これなら子どもが揺らしても倒れないぞ!」


「誰かが蹴っても耐えるな……!」


新しい棚は実に頼もしかった。


(これも……“信頼”の力だ)


役割が噛み合うほど、商会は強くなる。


③ 悪口 → “正しい商売”で返す


最後に、悪口の問題。


「“商会は裏で金を巻き上げている”だと?」

「ひどい話ねぇ……」


役人の噂にも火をつけようとしたらしい。


だが――カイは静かに言った。


「悪口には、悪口で返さないよ。商売で返すのが一番だから」


すると交渉担当が、屋台担当を連れて言った。


「では私たちが行きます。悪口を言われている村へ」


「普通に商売し、普通に礼を尽くします」


「実際の姿を見せれば、誤解は解ける」


その言葉は頼もしかった。


そして彼らは各地を巡り、屋台を広げ、丁寧に商品を扱い、笑顔で接客した。


ただ“正しい商売”をしただけ。


だが――


「そんな噂、嘘だったじゃないか」

「立派な商会じゃないか!」

「また来てくれ!」


悪口は自然と消えていった。


(人は、見たものを信じる。そして積み重ねた信頼は、簡単には崩れない)


―――


妨害は続いた。

しかしどれも、信頼の網の前には無力だった。


そして――ついに会長は追い詰められた。


「奴らはどこだ!? もっと道を荒らせと言っただろう!! 棚も倒してこい!! あの子どもを泣かせるまで――」


部下の賊たちは、黙っていた。

支払いが滞っていたのだ。


「……金は?」

「払ってないだろう?」


「ば、馬鹿者! まだだ! まだ儲けが――!」


「もういい。終わりだ」


次の瞬間。


「やめろ! やめ――」


悲鳴は途中で途切れた。


その後の彼を見た者は、この国には、誰一人いない。


―――


会長の妨害は消えた。

残ったのは、商会を支える人たちの顔だけ。


屋台担当は笑い、

仕入担当は胸を張り、

交渉担当は静かに頷いた。


みんなの表情が、かつてないほど明るかった。


(妨害は辛かったけど……これでまた、少し強くなれた気がする)


私は広場を見渡して、小さく息をついた。


「さて……次は国との正式契約だね」


父は誇らしげに笑った。


「カイ……お前は本当に強くなったな」


おじいさんは鼻を鳴らしながら言った。


「坊。強さというのはのう……“信頼を積んだ者だけが持てるもの” じゃよ」


その言葉に、私はふっと笑った。


(なら、まだまだ強くなれるね)


冬の空は高く澄み渡り、新しい商会の旗が、静かに揺れていた。

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