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異世界投資ファンド〜剣も魔法も使えないので、利回りで世界を救います〜  作者:


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第23話:疑念の視線を、信頼へと変えるために

冬の冷気がまだ抜けきらない朝。

村の広場に、国の紋章が掲げられた馬車が三台、静かに止まった。


降りてきた役人たちは、みな厚手の外套を身につけ、そして――どこか険しい顔をしていた。


「……ここが、“生活支援商会”か」


「例の……妙な噂の……」


「子どもが仕切っているという話、信じがたいが……」


彼らの視線は、冷たいというより“訝しげ”だった。


(……来たね。元会長の影)


あの会長が、役人にコネを使って悪評を吹き込んでいたらしい。


「帳簿をごまかしている可能性がある」

「商品は粗悪品」

「冒険者を騙している」


そんな噂まで流していた。


だから役人は、最初から私を見る目が信用の欠片もない。


でも――ここからが本番だ。


―――


「私は“生活支援商会”の代表、カイです。本日はご足労ありがとうございます」


役人のひとりが鼻を鳴らした。


「たしかに噂通り……子どもだな」

「本当に商会を運営しているのか?」


「はい」


即答すると、役人たちは眉をひそめた。


「ではまず、薬草定期購入ファンドだが……本当に品質が安定しているのだろうな?」


「もちろんです。ですが――」


私は一歩前に出た。


「今日は、別の提案を持ってきました」


「……ほう?」


「国がもっと喉から手が出るほど欲しいものがありますよね?」


「何だ?」


「――“ポーション” です」


空気が一瞬揺れた。


国にとって、ポーションは兵士の命に直結する。

常に不足していて、常に高額。


「薬草よりポーションのほうが重要だと、私は考えています」


役人たちの目が鋭くなる。


「だが、品質の問題が――」


「それを、今から解決します」


―――


「薬師さん、お願いします」


店の奥から出てきた薬師さんは、静かにうなずき、机にポーション瓶を三本、並べた。


これは――冒険者の持ち込み、不揃いの品質の三本。


「まずはこれをご覧ください。匂いも色も、濃度も、全部違います」


役人たちが瓶を見比べる。


「たしかに……均一ではないな」


「では――加工します」


薬師さんは手慣れた動きで調整用の器具を取り出し、薬草の抽出液と温度を絶妙に調整しながら、三本のポーションを一つにまとめ、また三本に分け直した。


時間にして、わずか数分。


「これが調整後です」


瓶の色、匂い、粘度――どれも、完璧に同じ。


役人たちの目が、驚きで大きく開いた。


「……揃っている」

「まさかここまで均一化できるとは」

「本当に同じ品質……?」


薬師さんは胸を張った。


「えぇ。この村の薬草と抽出技術なら問題ありません。腕の良い者に頼んでよかったでしょう、カイ坊?」


「本当にそう思います。あなたを信じてよかった」


薬師さんが少し照れながら微笑んだ。

役人たちの表情がわずかに和らぐ。


(よし……“目に見せる”のは正解だった)


―――


「国は薬草だけじゃなく、ポーションも安定して欲しいはずです」


「……確かに、喉から手が出るほどにな」


役人の声が低くなる。


「そこで、ポーションの定期お得便ファンドを提案します」


「どんな仕組みだ?」


「国が一定金額を出資し、生活支援商会が“定期的に・均一品質のポーション” をお届けする仕組みです」


「量は?」


「薬草定期購入ファンドと組み合わせれば……冬でも、干ばつでも、戦時でも、供給が止まりません」


役人たちが顔を見合わせる。


「……そんなことが可能なのか」

「国家にとっては、これ以上ない利点だぞ」

「だが本当に安価で大量に……?」


「できます」


迷いなく言い切った。


「薬草は定期ファンドで安定供給。ポーションは冒険者と薬師の連携で大量生産可能。そして商会は“買い叩かない”。だから全員が続くんです」


役人のひとりが、深く息を吐いた。


「……お前の仕組みは、誰も損をしないのか?」


「はい。正しい対価を払えば、正しい努力が戻ってきます。それだけのことです」


沈黙――


そして。


「……気に入った」


「これほど理にかなった話は久しぶりだ」


「国として、前向きに検討する」


役人たちの声は、もう“疑い”ではなく、“評価”へ変わっていた。


キャラバンの商人たちが息を呑み、冒険者たちが目を輝かせ、父は胸に手を当てて震えていた。


(よかった……これで一つ、道が開けた)


―――


役人たちが帰り際、ひとりが振り返った。


「……カイ殿。今回は疑ってすまなかった」


「いいえ。疑う人がいてくれるから、私たちはより強くなれます」


その言葉に、役人の口元がわずかに緩んだ。


「また来る。次は正式な契約だ」


馬車が去ったあと、おじいさんがぽん、と私の背中を叩いた。


「坊……だいぶ大物になってきたのう」


「そんなことないよ。ただ、信頼してくれる人が増えただけ」


「それを“大物”と言うんじゃよ」


私はふっと笑った。


(信頼と人脈――どちらも、今日確かに手に入った)


そう実感した冬の日だった。

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