第21話:再編、そして新しい息吹
キャラバンが“生活支援商会”として生まれ変わり、最初に私がやったのは――
「役目の再編成」 だった。
人は得意な場所に置かれると輝く。
だから最初に、全員の話をじっくり聞いた。
「遠くへ行くのが得意な者」
「村の人と話すのが好きな者」
「品質を見抜く目を持っている者」
「お貴族様相手でも肝が据わってる者」
思った以上に、人材は豊かだった。
―――
◆① ファンド屋台担当:村を笑顔にする仕事
「まずは“屋台担当”です。近隣の村でファンドの受付をし、小瓶ポーションを配ります」
元気な若者たちが「任せてください!」と胸を張った。
彼らが小瓶を山ほど積んだ荷車を押し、次々と村へ向かっていく光景は、まるで祭りの行列のようだった。
そして夕方。
「カイ坊! すごかった!!」
みんなキラキラとした顔で戻ってきた。
「子どもが泣いて喜んでくれたんだ!」
「おばあさんが手を握って離さなかった!」
「“あんたたち来るだけで安心するわ”って……!」
彼らの輝きは、まるで陽だまりの反射だった。
(あぁ……この仕事は、誰かの“ありがとう”を直接受け取る役目なんだ)
屋台担当は、支援の灯りを直接届ける人たちとして完全に定着した。
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◆② 仕入担当:市場の裏側と真剣勝負
次に出したのは「仕入担当」だった。
「遠出をしても大丈夫な体力、そして、値段と品質を見極める目が必要です」
何人かの商人が手を挙げ、出発した。
遠方の市場で強欲商人の目をかいくぐり、良質の薬草や素材、加工品を集める――これは商会の基盤を支える大事な仕事だ。
三日後。
「ただいま戻りました!!」
荷馬車を引きながら、仕入担当の商人たちは胸を張っていた。
「相場より三割安く仕入れました!」
「品質は薬師殿の七割基準をクリアしております!」
「まさか俺たちがこんな交渉できるとは……!」
彼らはまるで勝者のような顔をしていた。
誇りと自信が芽生えている。
それは商会全体が強くなる証だった。
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◆③ 交渉担当:国と商会の狭間へ
最後に、最も責任が重い役目を説明した。
「仕入先、商人ギルド、国の役人……さまざまな相手と交渉し、契約を守り、支援の道をつなぐ役目です」
沈黙。
しかし、一歩前に出たのは――見た目は細身だが、誰よりも冷静で気品のある商人だった。
「わたくしに、お任せいただけますか?」
続けて二人、三人と名乗り出る。
「なら俺は補佐をする!」
「字は書ける。書類仕事なら誰にも負けん!」
彼らが旅立ち、そして戻ってきた時――
「カイ様……話が通じるお役人も、ちゃんといるのですね」
どこか満足げで誇らしげな顔だった。
「“信頼で動く商会” と説明したところ、“それは今の国に必要だ” と言われました」
そう言った時の彼らの目は、まるで新しい武器を手にした騎士のようにギラギラと輝いていた。
こうして三つの部署は、美しく機能し始めた。
―――
◆◆ 生活支援商会、正式発足 ◆◆
屋台担当が“支援と安心”を運び、
仕入担当が“品質と価格”を支え、
交渉担当が“道”を拓く。
三つの車輪は噛み合い、商会はゆっくりと、しかし確実に動き出した。
村の人々は言った。
「なんだか、この村……前より明るくなったなぁ」
「商会が来るだけで、人が集まるようになった」
冒険者たちは言った。
「ここまで信用される商会、他にねぇよ」
「次のダンジョン行く時も、この商会に売ろうぜ」
キャラバンの商人たちは言った。
「この仕事、誇りがある」
「買い叩かれることがないって……こんなに楽なんだな」
そして――噂は“彼らの思っていた以上の速さ”で広がっていた。
―――
商会再編からわずか一週間。
中央の商人ギルドで、ひそひそ声が漏れた。
「聞いたか? あの辺境の村で……」
「生活支援ファンド? なんだそれは」
「国境のほうまで届いたらしいぞ」
貴族の執務室にも、影がささやく。
「商会の動きが妙に活発です。監査を……?」
「いや、まだだ。興味深い仕組みだ……少し観察しよう」
そして王城の一室。
「“生活支援”……か。名は地味だが、民が喜んでいるなら放っておけん」
噂は静かに、しかし確実に上へ上へと登っていった。
(そろそろ……大きな波が来るかもしれないね)
私は風を感じながら、胸の奥の緊張をひっそりと締めた。
“生活支援商会” は、いよいよ本格的に世界へ踏み出す。




