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異世界投資ファンド〜剣も魔法も使えないので、利回りで世界を救います〜  作者:


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第12話:小瓶に宿るみんなの願い

翌日。

ポーションファンドの出資金を手に、私は父と道具屋へ向かった。

店先には、昨日見たポーションの大瓶がずらりと並んでいる。


「こんなに残ってたんだね……」


「ああ……売れなくてなぁ……正直、置いとくだけで気が滅入るよ」


店主のおじさんが苦笑した。


私は大瓶のひとつを持ち上げ、透き通った液体をじっと見つめる。


(売れ残りは悪いことじゃない。価値が“動く前”の段階だ)


「店主さん。これ、全部買います」


「ぜ……全部!? 本気かい……?」


「はい。村のみんなのファンドなので」


おじさんは、一瞬だけ呆然として、すぐに顔をほころばせた。


「いやぁ……助かるよ。本当に助かる……!」


正直に言えば、大瓶全部でも利益はそこまで大きくない。

でも今回大事なのは利益じゃない。


(みんなの安心と“信用の種”を作ることだから)


父と店主さんが受け渡しの準備をしている間、私は倉庫の瓶を検品した。

品質は悪くない。むしろ保存状態が良い。


「じゃあ、持って帰るか!」


「うん。これ、今日中に全部小瓶に分けよう」


「きょ、今日中に!? こ、こんな量を!?」


父は驚いていたが、やらねばならない。


―――


小瓶詰めは戦いだった。


家に戻ると、既に母と近所のおばさんたちが集まってくれていた。


「カイちゃん、聞いたわよ! 大瓶買ったんだって?」


「手伝うよー! こういう細かい作業、得意だからね!」


「あなたのお母さんにも頼まれたのよ」


……すごい。

村の連携力は予想以上だ。


「じゃあ、お願いしてもいいですか?」


「もちろん!」


作業台の上に並べられたのは、小瓶、小瓶、小瓶。

その数はざっと見ても百本を超えていた。


「カイ、これどういう順番でやればいい?」


「瓶を熱湯で消毒して、乾かしてからポーションを注ぐ。瓶の口はしっかり密閉してね」


「なんか本格的ねぇ!」


作業が始まると、家中がぽんぽんと賑やかになった。


「ちょっとこれ蓋が固いわよ!」

「こぼれたから布ちょうだい!」

「え、こんな香りするんだポーションって!」


まるで収穫祭の準備のようだ。


(うん、これだけで来てよかったって思えるな……)


―――


夕方、小瓶詰めが終わり、テーブルの上には美しく並んだポーションの小瓶たち。


「うわぁ……こんなに綺麗にできるのねぇ!」


「これなら持ち運びやすいわ!」


「怪我したらすぐ飲めるってだけで安心するよな……」


ひとつひとつに、出資者の“権利分”を割り当てていくと――


「カイ、この量……私の取り分はこれで本当にいいの?」


「はい。出資額に応じて等分した量です」


「いやぁ……こんなに貰えると思わなかったわ……!」


「むしろ安く済んだ感じだな!」


そんな声が次々とあがる。


そして村の鍛冶屋のおじさんが言った。


「これさ、次も頼めるか?」


「そうそう! 怪我多いからストックしておきたくてな!」


「ファンドってすごいじゃないか!」


どうやら、思っていた以上に好感触だった。


父がこっそり私に耳打ちした。


「カイ……これ、成功って言っていいか?」


「うん。これは成功だよ」


父は胸を撫で下ろし、肩の力を抜いた。


―――


余った小瓶を道具屋で売ったところ、少額の利益が出た。

銅貨数枚。それでも大事な一歩だ。


(利益より大きいのは“信用”だね)


ポーションファンドの出資者が増えれば、村のお金の流れにも影響が出る。

それはやがて“地域単位の投資”につながる。


そして私は、作業台に残った小瓶をじっと見つめながら思った。


(薬草の値上がり。ポーションの値崩れ。今は嵐の前の“静かな歪み”なんだな……)


でも、その歪みは――正しく使えば、商売のチャンスにもなる。


村のみんなの信頼を背に、私は静かに拳を握った。


「次の一手を考えないとね」


父と母が優しく笑った。


「カイの次の一手は、いつも楽しみだよ」

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