『酔興伯爵』
『酔興伯爵』ことリフレイ・グランディール伯爵はこの国の物流を支える、有力者の一人だ。貿易で得た資金で豪遊の限りを尽くし、その金遣いの荒さと彼の容姿から平民たちの間では「金食い豚」と呼ばれている。
「もし奴隷商の正体が彼なら、彼の貿易業が怪しそうね」
(貿易相手に人を売っていたとすれば、伯爵の金回りの良さにも納得がいく ... )
貴族たちの間でも彼の資金の多さが話題になることもしばしばあるのだが、彼はいつも「私は運が良いんだ」と笑ってはぐらかしていた。おそらく平民一人だけでも労働力になるため、奴隷として売り、大金を稼いでいたのだろう。
「 ... ねぇ、おねぇちゃん」
「何かしら」
「何でもします!だから、だからっ、みんなを助けてくださいっ」
と言って男の子は土下座をした。
「もちろん、そのつもりよ。それより ... 何でもすると言ったわね」
男の子はビクッと体を震わせて頷いた。
「なら今すぐ体を起こして、私の屋敷に来なさい」
「へ ... ?」
予想外の言葉だったのか、男の子は驚いたように顔を上げてレイラを見た。
「あら、顔を上げていいとは言ってないわよ」
それを聞いて「ごめんなさいっ」と慌てて土下座をし直そうとする男の子を見てレイラは面白くなってしまい、今度は、
「体を起こせといったのよ。なぜ座ろうとするの」
と言うと、男の子はどうすれば良いのか困り果ててオロオロしてしまった。
それを見て笑っているとユアナにじっと見られていたので慌ててにやけ顔を引っ込めた。
「んんっ、あーあー。 ... それで、カミルはどうするの?ここに残りたい?」
するとカミルはこれまでの会話を黙って聞いていたが「いや、俺はここに残る」と言った。
「もしあいつらがまた来たらその時に何かできるかもしれないだろ」
「そうね ... なら、もし伯爵が来たら手紙を書いてこれで送ってちょうだい」
と言って伝書鳩を渡した。
「今更聞くのも変だけど、なんで俺達を助けてくれるんだ?」
「そうね ... やっぱり人助けは大切でしょう?」
(もし伯爵の悪事を暴ければ、処刑エンドを避けられるかもしれないもの)
「じゃあ、こっちはお願いね」
レイラはカミルが頷くのを確認して馬車に乗り、スラムを後にした。




