004. スラム
「はぁ、余計に遅くなってしまったわ…」
ユアナを説得したレイラは身支度をすませて、何度も馬車を乗り継いでいた。
(さすがに、侯爵家の馬車で行くわけにはいかないもの…)
「お嬢様、また別の馬車に乗るのですか?」
「そうよ、私が侯爵の娘だと知られたら面倒だもの」
スラムにいる人間は貧しく身寄りのない者も多い。
また、貴族の中にはそういう人達を蔑む者もいる。
(過去の私もそうだった…。平民だからとマリアナを嫌っていたけど、もし私が嫌っていなかったら本当の姉妹のように仲良くなって、私は死ななかったかもしれない…)
でもできなかった。
平民を蔑んでいたから。
そして平民もまた、自分たちを蔑む貴族を憎んでいる。
(だからこそ私が貴族であることを知られてはまずいわ)
「ここがスラム…」
(思っていたよりも酷い状況ね…)
ボロボロの家が立ち並び、悪臭が漂っている。
道端で倒れるように眠る人や、パンを盗む子供。
この場所が秩序を欠いているのは明白だ。
「でも、いったいここに何が…?私の思い過ごしだったのかしら…」
レイラは雷が落ちた正確な場所を思い出そうとしていた。
(…思い出せない)
そのとき白い何かがレイラの視界に映った。
(あれは…人?どこかで見たことあるような)
気づけばレイラはその人物を追いかけていた。
「お嬢様?一体どうされたのですか!?」
ユアナたちのことを気に留めている暇はなかった。
走り続けて数分後、レイラは真っ白な髪の少年に追いついた。
同い年くらいの少年。
そして真っ赤な瞳。
少年を見てレイラは思い出した。
(どこかで見たことがあると思ったら…あのときに見た人に似ているんだわ…!)




