003. 説得
とてもお久しぶりです。
大変お待たせいたしました。
「お父様、目を覚ましたばかりですが、少し二人でお話してもいいですか」
父は少し驚いた様子だったが人払いをし、部屋にはレイラと父の二人きりになった。
レイラは改めて父の顔を見ると、久しぶりに会ったような気がして、少し涙ぐんだ。
(それもそうよね。前の人生では牢獄に入れられてからは一度も会わせてもらえなかったもの…)
「どうして泣くんだ?何か嫌なことでもあったのか?なんでもパパにいいなさい」
過保護な父の慌てる姿を見ると、まるで昔に戻ったようでレイラの気持ちは少し和んだ。
「実は…急なのですが、行きたい場所があるのです」
「どこだ、どこでも連れて行ってやる」
「…本当に”どこでも”連れって行ってくれますか?」
「もちろんだ」
父は即答した。
レイラは少しためらいながら言った。
「私、スラムに行きたいのです。」
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薄暗くボロボロの家が立ち並ぶスラムに、一人の少年がいた。
真っ白な髪に赤い瞳。
「まだ来ないのか…」
少年は”誰か”を待っていた。
名前も顔も声も何も知らない相手、でも会ったらわかるような気がする。
少年は”誰か”をずっと待っていた。
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「…理由を聞いてもいいか」
(まあ、理由は知りたいわよね…。でも「死ぬ前に見たから」なんて言っても信じてもらえるわけないし…)
「…なんとなく行かないといけないような気がするのです。運命的な何かがあるような気がする、というのでしょうか…」
父はしばらく黙っていた。
許可は出ないだろう、とレイラが思っていたとき、
「わかった。許可しよう」
と父は言った。
レイラは思わず
「いいのですか!?」
と言った。
(本当に…?でも、なぜ?)
「かわいい娘の頼みだから仕方あるまい。その代わり、危険なことがあったらすぐ逃げるんだぞ。一番大事なのはレイラの安全だからな。」
そう言って困ったように笑った。
実にレイラの父らしい理由だった。
(本当に親バカなんだから…。でも…)
「…ありがとうございます、お父様!」
「ユアナ、出かけるわ。支度してちょうだい」
レイラはメイドのユアナに言った。
「お嬢様、お体はもう大丈夫なんですか?先程目を覚まされたばかりですが…」
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ。それより速くしてくれる?お父様から許可はいただいているわ。…あ、そうだ。服はあなたの持っている服の中でできるだけシンプルのものを貸してくれる?あとお化粧は控えめに。それから…」
「ちょっと待ってください!お嬢様、一体どこに行かれるおつもりですか!」
「えっと、スラムよ…」
「危険です!ただでさえ、先程まで目を覚まされなかったのに!だいたい…」
それからユアナを説得するのに何時間も用したのだった。




