第二話 はい。只今異世界に到着しました。だけど字が読めません。自動翻訳機とか有りませんか?
「さあ、今日も張り切って行ってみよう!おはようございます、こんにちは、こんばんは、ヤッハロー 異世界!」
と、能天気な事を言いながら最初の駆け足は良かったものの、『あっちの世界』では絶賛『ひきにーと』中だった俺にはコミュ力なんて無いんだと再確認。
そしてその歩みを止めたのはやはり、群衆の視線であった。
もう二の舞は踏まないと決意を新たにして。違う言葉で言うと、開き直ってが正しい。日本出身の話せる言語日本語オンリーのカズマの足は、再び足早にして大通りに向かわせた。が、幾度も激しく行き交う行商人と思われる馬車の数に見惚れて、カズマの足は途中で止まった。
だがしかし、ちょうど止まった場所が悪かったのだ。大通りのど真ん中で行く足を止めてしまった。
そんなカズマに向かって放たれた言葉は、馬車に跨り馬に鞭を入れる、見てくれは商人だろう。
だが、ヒトではない様子。ファンタジー世界的に言うと『ドワーフ』に近い生き物に、「邪魔だよ!なに変な格好してんなとこに突っ立てんだよ!」であった。
が、兎にも角にも精神的には倍率二百倍くらいのダメージを負ったが、嬉しい誤算だったのは間違いない。
何故なら、今こうしてカズマの目的のひとつである、この世界に存在するヒト型生物との対話が成り立ってしまったからである。
馬車の勢いと『ドワーフ』商人の勢いに負けて、後方に吹っ飛ばされながらも勢いよく立ち上がって、はい。決めポーズ。と、言わんばかりのガッツポーズをとると、
「ためしてガッテン。嬉しい誤算ハッケンガッテン、ゴッテン。やっぱし日本語通じるじゃねえかあーー」
結果としてまあ確かに日本語は通じるし、日本語での会話は可能なのだ。
しかしそんな嬉しい誤算を運任せのように引き当てたカズマには、再び肩を落としてしまう事実が判明してしまうのだ。
ここ大通りだけあって、雰囲気的に商店や飲食店に近い店がざらりと並ぶ中、そおっとその事実がカズマを襲うのである。
「看板の字が読めねえーー」
うん。異世界で字読めないのは致命傷であり、もはや『詰み』に近い状況に陥って、散々肩を落としては何度もした溜息をまた繰り返す。
色々とこれまでの情報やら置かれてる立ち位置的なものを整理しながら、『最後の手段は何か?』って事をぐるぐる頭を回転させては迷走モードに突入しようとしていた。
あれだけ妄想して脳内イメージ沢山したのに、いざ本番になると弱い。なんでこうなる?と、あまり褒められた事ではない事をまた考えてるカズマである。
「こりゃあ参ったな」なんて言いながら、さっきの振り出し地点である裏路地に再び逃げて来たのだ。
ここまでコテンパにされて、精神ダメージ倍率二百倍の攻撃を喰らった後ってのもあって、もう流石に開き直る勇気は無い。そんな精神状態を迎えつつ。
「よく見てたラノベのストーリー展開ってこっからどうだっけな?」と、再びの戯言を繰り出す。
ここまではまだ良かったが、「女神にさえ会えてればこんな事にはなってないんだ」と悲壮モード全開である。
確かにその通りなのだ。
おろ?ここに来て前世の記憶が蘇って真の実力発揮する展開か、それとも何かしらの理由で真の実力を発揮出来ない的な……どこぞの『うずまきな◯と』展開になんてならないよな。
「うひゃー俺にだって真の実力はあったんだーからの美少女幼馴染ヒロインともふもふハフハフ展開。ローアングラー立ち位置確認ヨシ、ミッションコンプリーツ!そこはモザイクにしないとダメだろじょーこー。今日のお前にだけは言われたくないスレはここですか……。ってほんと自分で言っててマジ情けねーー」
「この世界も俺を愛してくれないんだな――」
最後の最後の一滴まで絞り出して召される。そんな感じである。そんな意気消沈したカズマには、ある思い付きが頭を巡っているのだ。
良くありがちなラノベ展開に照らし合わせると、異世界に飛び立つまでのイベント全てを完全スキップされて、気付けば異世界『ココドコ』展開にして、ひとり降り立ったは良いがもはや詰み状態で身動き出来ない。
簡単に言えばこうだ。
ここまで来てしまうと、次の展開はもう察しはつく。
ただ、ラノベではしっかりそこに案内してくれるものがいるからまだ成り立つのである。が、このカズマは違う。
絶賛『ひきにーと』のカズマはコミュ力低過ぎて、そう簡単に自分から会話なんて出来ない。まず話したところで、テンパると『無駄に早口』の癖が出てしまうから、まともな会話は成立しない。
まあこの時点で何故、神はこのカズマを選んだか。に尽きてしまうが、これを言ったらお終いだ。いやもう既に詰んでいるのだが。
加筆予定です