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序章

「あなたには申し訳ないのだが。‥私は『白い婚姻』を望んでいる」

彼女の夫と今日なった男アルフレイド•クルシルス•アーバンインは、申し訳なさそうに言った。

ベッドに腰掛けていた彼女は目を見開いた。

「‥心に決めた方がいらっしゃるのですか」

この婚姻に至る騒動を思い出してそう聞いた。恋人でもいるのかと思ったのだ。

「そのような人はいないな」

はっきりと否定する。なんとなく『同じにしないでくれ』と言っているようだ。

「では何故?」

「私の要望を口に出す前に説明を行うべきだった。ロゼリアーナ嬢は、理由を知る権利があるのに。すまない」

そう謝罪して頭を下げる。初夜の夜に告げられるには酷い言葉だった。真摯な謝罪に耳を傾けようと思った。 

今回の婚姻はかなり変則的なものだった。

公職では帝国軍の最高指揮官の任についている。

戦は帝国が形となってからは起こっていないが、帝国軍は国内の治安維持にもあたっている。都市から村、街道などでの事故、事件。盗賊や魔物の討伐など多岐に渡る。

帝国に四家しか存在しない公爵家の当主。

彼女は侯爵家の後継者で現在は爵位はまだ彼女のものではない。

「もうあなたの妻となりました。どうぞロゼとお呼びください。なにかご事情があるのでしょう?」

彼女は笑った。『嬢』は未婚の令嬢へ敬称だ。それを夫なった人が妻に対してつけて語りかけるのがすこし面白かった。そしてとても誠実な人なのだろうとも思う。

「私は婚姻を望んでいなかった。あなたに不足があるわけではない。誰とも結婚するつもりはなかったんだ。だが、一連の騒動でそうも言っていられなくなった」

ため息をつく。

「私も。生家から出て『嫁入り』するなんて考えてもいませんてましたから」

彼女の生家はベルルシア侯爵家という。帝国となる全身国から存在している。その家の後継者として育った。

17歳の彼女はゆるやかにカーブした栗色の髪と琥珀色の瞳を持っていた。際立った容姿を持ってはいない。だが仕草のひとつひとつは洗練され、会話は男女問わず楽しませた。才女と呼ぶに相応しい女性だ。

家を存続させ血を繋ぐため、婚約者がいた。目の前の男ではなく五つほど上の公爵家の三男。

婚約したのは三年前で、貴族同士約であった。双方納得した上での婚約であり、跡取りの伴侶として彼は婿入りする予定だった。

元婚約者の実父は現宰相。彼も宰相補として働いており、将来、父のあとを引き継ぐ予定であった。数年後には結婚するはず、だった。

夫となった男の家も公爵家。ただし爵位を継承しアーバイン公爵家当主で現在28歳である。

スラリとした長身の体は鍛えられていた。肩甲骨あたりまでまっすくに伸びた銀色のと同じく銀色の瞳を持った彼はかなりの美丈夫で男の老若男女や身分を問わず魅了している。特に高位貴族女性はかれの妻になることを一度は憧れるのは、彼が婚姻していないからだ。

彼が、婚姻したら女性が暴動を起こすからだとか、死んだ恋人を今も思っているからだとか噂は絶えない。本人は問われても笑うだけだ答えない。

二人は一般的な社交の範疇では話をしたことがあった。

その程度の関係が、婚姻になぜ至ったのか。

それは、帝国の第一皇子が宴の場で婚約解消と新たな婚約を結ぶと宣言した。

皇子の若さゆえの過ちかと思われた。もちろん皇子だからこそ軽率な行動は許されない。だが、それ以外の問題があったのだ。


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