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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

絡繰言

作者: タルト

開いてくださりありがとうございます。


人を失った絡繰り人形を書いてみました。


評価・感想お待ちしています。

「痛いよ」って、隣にいる友達が、てるてる坊主みたいに揺れながらしきりに呟いている。

 ずっと言葉の雨を降らせてくる。今は傘持ってないんだよ。早く止めろ。


「痛いよ」


 掠れているけど、元々は澄んだ声だったのが分かる。

 本当に煩わしい。耳元を飛び回る蝿みたい。


「痛いよ」


 友達の方に顔を向けたら、友達も私のことを見ていた。綺麗な目だった。

 すぐにでも突いてやりたくて、手を伸ばそうとしたけど、何故かだらりと垂れていて動かない。


「痛いよ」


 口を塞ごうとしたけど、手は私に逆らったままだった。

 じゃあ足で、と思ったけど、足も動かなかった。真っ直ぐに下を向いていた。


「痛いよ」


 友達の足が目に入った。白い肌で、産毛のない、すらりとした綺麗な足だった。

 足が動けば、蹴り抜いてへし折ってやったのに。


「痛いよ」


 こんな子がいて、世界にとって何が得なんだろ。別にいらないでしょ。こんなやつ。

 いるだけで不快。とっととくたばれ。


「痛いよ」


 どこからか、幼馴染の声が聞こえてきた。あいつ美人だよな、だって。それに二、三人が賛同していた。

 こいつがそんなに可愛いの?


「痛いよ」


 目を下に動かして、指先を確かめた。爪は長く伸びている。

 すぐにこの忌々しい顔を引っ掻かきたい。手さえ動けば、できるのに。


「痛いよ」


 口を封じられないなら、せめて、耳を塞ぎたい。

 だけど、どうしても身体が動かない。ずっと頭だけぐるぐる回ってる。

 このままずっと目の前のこいつを見なきゃいけないの? 声を聞かなきゃいけないの? 気が狂いそう。


「痛いよ......?」


 急に、こいつが笑った。いつも通り、口を引き裂いてやりたくなるような、優しそうな微笑み。

 でも、ちょっと違う......?


 記憶の中のこいつと比べようと思ったら、何故か暗闇になった。

 目が痛む。折角こいつのことを見ずに済むようになったのに、これじゃ意味ないじゃん。

 あれ、なんか、身体が変......?



 おかしいおかしいおかしいおかしい。

 声が出ない。声が出ない。声が出ない。叫びたい。泣きたい。声が出ない。口を塞がれた。ひどいよ。

 目が痛い。何も見えない。怖い。誰か助けて。

 服を取られた。嫌。嫌。止めて。お願いします。お願いします。許して。痛い。悲しい。早く終わって。

 顔を引っ掻かれた。痛い。治らなかったらどうしよう。

 蜘蛛が背中を這う感触がした。怖い。気持ち悪い。早くとって。もう、いいでしょ?

 百足に足を噛まれた。痛い。離して。早く。


「耳は、最後まで聞こえるんだって。そう、教えてくれたよね」


 大きな声がしたと思ったら、煩わしさが途切れた。

 それだけなら良かったけど、耳の付け根が痛んだ。引きちぎられた。



 痛い。辛い。悲しい。苦しい。憎い。悔しい。どうして?

 身体全部が痛い。感情は振り切れてる。なのに、思考はある程度冷静。まるで心を切り離されてるみたい。

 本当にわけが分からない。

 こいつを今すぐぶん殴って、何でこんなことするの、って問いただしてやりたい。

 でも、この状態じゃ間違いなく無理。悔しい。




 どのくらい経ったんだろう。もう、そんなに痛くない、と思う。

 安心してたら、突然、何かが首に掛かった。


「糸だよ。......これだけは、やってないもんね」


 一瞬だけ、世界が揺れた気がした。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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