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1-3. 急襲(2)

あれから少しして、私は今ホームの医務室にいる。


私がどれだけ気にしなくてもいいと言っても、みんなは私の脚を心から心配しており、医師である仲間NPCのきゅ~たんの診察を受けてほしいと譲らなかった。

挨拶(先ほどのは挨拶らしい)を済ませると、仲間NPCのここちゃんがホームに帰るために門<ゲート>の魔法を使って、私はあっけなくホームに帰ってきた。

説明しておくと、門<ゲート>というのは一度行ったことがある場所にすぐに転移できるという転移魔法だ。


医務室を見渡すと、私がゲーム内で家具として作成した薬瓶がずらりと並んでいる。

ゲーム内では家具扱いであり、当然薬として使用はできなかったが、この世界ではどうなっているのだろうか。

アドレナリンやヒドロコルチゾンがこの体に効くのかどうかも定かではないが。


「それにしても、夜通し歩き詰めてくれたのね。きゅ~たんも、この後ちゃんと休んでね」


きゅ~たんは何やら神妙な表情で私の体を押さえたり、器具でとんとんと叩いている。


「私はぁ、ポーに乗せてもらってただけですしぃ、大丈夫ですよぉ。それよりもおみ脚ですぅ・・・」


甘ったるい声で答えるきゅ~たんだが、表情は真剣そのものだ。

その診察する手を休めることもない。


それにしても、きゅ~たんは多種多様な回復魔法と蘇生魔法を持つ頼りになるキャラだが、私が設定で「医者」としただけあって診察はとても様になっている。

実際、医者クラスは取得しているから医者というのは本当だが、この子はヒーラークラスでは一番有能で最上級クラスである僧正クラスを取得しているのだから、本来は宗教者としての姿を誇るべきだろう。

その実、私が与えたきゅ~たんのアバターは妖艶なシスター姿だ。


なにが、その実、だ。

私はもう少しキャラビルドと設定とアバターに一貫性を持たせた方がいい。

なによりきゅ~たんはオスだ。


「神経も筋肉も問題なさそうなんですけどぉ・・・」


きゅ~たんは傍らにある机の上にいる黒い蜘蛛に持っていた器具を渡し、縞柄の蜘蛛からカルテのようなものを受け取るとなにやら書き込みはじめた。

そして私は、その2匹の蜘蛛に気づいてしまって、気が気ではなかった。


「だから、ね。大丈夫なのよ。ちょっといろいろなことが起こって・・・ほら、腰を抜かしちゃっただけで」


机にいる蜘蛛に熱い視線を送ってしまう。

診察器具を片付け終わった白衣を着た黒い蜘蛛は私の視線に気づくと首をかしげてみせる。

帽子をかぶった縞柄の蜘蛛の方は机を丹念に拭いていた。


このサッカーボールほどの大きさの蜘蛛2匹はメイドNPC・・・通称フットマンであるNちゃんとSちゃんだ。

二人ともきゅ~たんの助手という設定で、長い白衣を着た黒い蜘蛛がNちゃん、ケーシーを着て(リアルでは絶滅した)ナースキャップをかぶっているのがSちゃんだ。


「メガラニカ」内ではフットマンのアバターにまでお金をかけることがまだできておらず、一様に蜘蛛族の初期アバターだった。

しかし、設定は綿密にしていて、Nちゃんは白衣を着たのオスクロハエトリ、Sちゃんはナースキャップにケーシー姿のチャスジハエトリと設定欄に書き込んでいた。

するとどうだろう、こっちの世界では設定欄に書き込んだ通りの姿になっている。

ああ、かわいい。

もっと観察したい。


「良くなってきていらっしゃるようですしぃ、もう少しご様子を見させていただくだけでもよろしいでしょうか」


きゅ~たんの声に我に返る。


「うんうん、そうしよう、そうしよう!」


フットマン達を全員集めて細部まで観察するという急務ができた。

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