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2-9. 弱点属性(2)

・・・これはとある蜘蛛の記憶。


その蜘蛛の母はとても強かった。

多くの眷属を従えている母は、その蜘蛛からするとそれ以上強くなる必要なぞ無いように思えた。


「世の中にはどうしようもなく強大で、理不尽な暴力がある。」


その蜘蛛にとって十分に強大な母はそう言った。


「その暴力が自分を狙ったのであれば、どんなに研鑽しようともなす術はない。」


その言葉は、「どうしてまだ強くなろうとするのか」という蜘蛛の問いの答えになっているとは思えなかった。


「しかし無為な戯れであるならば、能力の向上で凌ぎきれるやもしれぬ。」


母の黒く沈む瞳は、その蜘蛛も初めて見るものだった。


それから長い時がたって、その蜘蛛は十分に成長した。

その蜘蛛は少し変わり者であったので、別れを告げる目的で母の元を訪れた。


しかし、巣にたどり着いたその蜘蛛が見たのは、1人のエルフと、息絶えた母の黒い瞳だった。


母を殺したエルフは隅でおびえるその蜘蛛には微塵も気にもかけず、踵を返してその場を立ち去った。


蜘蛛はその時はじめて、どうしようもなく強大で、理不尽な暴力がこの世に存在するということを理解した。


母はおびえていたのだ。

どうしようもなく強大で、理不尽な暴力に。


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