1-3. 急襲(1)
3.急襲
目を開ける。
時計を確認すると朝の6時過ぎだった。
目を覚ましたらいつもの私の部屋で、私は人間の神原美音で・・・となっていればよかったのだが、眠りから覚めてもここは岩のくぼみで、私は蜘蛛の化け物だった。遺憾の意。
とはいえ、愛情を注ぎこんで育成した仲間NPCと会話できたりすること自体は嬉しいし、悪いことばかりじゃないので現状を受け入れるしかない。
とりあえず脚である。
昨日も少しなら歩けたが、それはものすごくぎこちない歩みだった。
岩のくぼみを利用した寝床は広くはないが、数歩は歩くスペースがある。
ので、まずはその場で足踏みをしてみる。
うん、だいぶ慣れてきた、いける。
まだ走るのは難しいが、この調子だと少し歩けば慣れそうだ。
そこでカーテン代わりの布の向こうに意識を向ける。
夏なので日は十分にのぼって外は明るいが、特に物音はしない。
仲間NPC達の会話や足音も聞こえない。
もしかして私、見捨てられた?
あわててカーテンを翻し、ぎこちないものの昨日よりは格段に自然な歩みで外に出た。
私はこんなにシビレる景色を見たことがなかった。
仲間NPC総勢23名が、そこに整然と居並び、跪いている。
時間と労力をかけて愛を注ぎ込んで育て上げた(育成中もいるが)NPCが、だ。
それはもう、壮観だった。
心揺さぶられて立ち尽くしていると、一人が私の前まで歩み寄り、片膝をつき低頭し畏まる。
ななんちゃんだ。
「我ら御身の御栄を崇め、拝礼奉る。
我ら忠実なる御身の僕、
この世の全て御こころのままに」
呪文のようにそう唱えてから、ななんちゃんは頭を上げ、その端正な顔をほころばせて見せた。
「遅ればせながらホームにいた眷属19名でお迎えに上がりました。」