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2-6. 人間の村(4)

「ねぇ、あなたは、好きなこと、ないの?」


5番目の眷属であるここは、快楽にゆがんだ顔を隠すように両手で顔を覆う。

すぐそばでげんなりしている末の眷属であるふみに、気を使った結果の声掛けではあるらしい。


「みょんみょん様のお役に立てることが私の望みのすべて。褒美に人間を所望するなど私には理解できません。」


杉の大木に糸を貼り、そこに寄りかかるようにここは横たわっている。

喘ぎ声が出そうになるのを噛み殺しながら、息を荒げ快感に身をよじる。


「あうっ、ま、まだ動くのよ、ふふ、でも流石に痙攣かしら。動くと膣が刺激されて、気持ちいいの。」


ここの巻きスカートの下からは、8本の蜘蛛の脚と袋状の膜に覆われ消化液によって溶かされた人間の脚らしきものが見え隠れする。


「ニンゲンを丸呑みにできると聞いてはいましたが、そこにも口があったのですね。それにしても、あんな汚げなものをよく洗いもせずに食べる気になるものです。」


少し前、こことふみは目的の場所に来た。それは山賊が根城としている洞穴だ。

事前の調べによると、山賊は30人ほどの規模で、それなりに繁栄している人間の巣と解釈されていた。

しかし、予想に反して洞穴の中は静まり返っており、中は腐臭が満ちていてとてもではないが奥深くに入ろうという気にならない。

あきらめて帰ろうとしていたところ、一人の人間の男が現れた。

聞くと、昨晩“化け物”にアジトが襲われ、その男は命からがら逃げだしたが行く当てがなく、戻ってきたとのことだった。

そんな男をここはあの手この手で誘惑し、ついに行為に及ぼうとしたところを体よく丸のみにしたのだった。


「私の設定にあるのよ、『虜にした人間を丸呑みして苦しみもがくのに快感を覚える』って。あなたにはそういうの、ないの?」


ふみの設定には、“好きなもの”として書かれているものはなかった。

指摘されると、ふみはわずかに羨望の感情が沸いているのに気づいた。


「あぁ、至高なるみょんみょん様、今日も貴方の望まれた通りの私でいられたことに感謝いたします。どうか、末永く、貴方様のおそばに・・・。」


それはまるで祈りだった。

それまでは一刻も早く帰りたいふみだったが、もう少しだけ待つ気になり近くの倒木に腰かけた。


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