2-6. 人間の村(1)
6.人間の村
ということで、峠で仲間を入れ替えて、薄ちゃん、ここちゃん、よいっちゃん、ふみちゃんと私の5人で人間の村に来ています。
人間の村はレンガ造りの家が10件ほど並ぶ素朴な村で、農耕用の牛の声がどこからともなく聞こえ穏やかな時間が流れていた。
村外には地平線まで伸びる広大な畑が広がり、本来はのどかで牧歌的なのだろうが、どこもかしこも作物は萎びて無残な光景となり果てていた。
私を待ちわびていたらしい村人は、私の姿を確認すると大仰にひれ伏し、村の教会的な場所に私を担ぎこむと、彼らなりの精一杯のもてなしを開始した。
犬のようなモンスターの姿揚げやら、鶏のようなモンスターの丸焼きを目の前に山のように積み上げられ、獣の血らしき飲み物が巨大な盃に供せられる。
邪神を呼ぶ儀式かな?
それはそうと、峠での儀式魔法のこともあり、村人に対して私達も一応警戒していた。
しかし、ここまでの様子を見る限り、少なくとも村人たちが私をだまそうとしていた印象はうけない。
そもそも、ななんちゃんが魔法陣を読み解いたところ、あの儀式魔法は“この村”を狙ったものである可能性が高いということだ。
私たちの“敵”がこの村ごと私たちを消そうとしたのではないか、ななんちゃんはそう分析していた。
毒見係を申し出たよいっちゃんが、料理をお皿に小ぎれいに盛り付け、私のところに持ってくる。
「鑑定を行いましたが毒はありません。見た目はよくありませんが、味はまずまずといったところです。」
「よいっちゃん、君は食レポというものをわかっていないようだね?いいでしょう、私がお手本を見せてあげましょう。・・・うん、このお肉の揚げ物は弾力があるけど、それなりにやわらかくて、まったりしていておいしいね。うん、ここちゃん、どう?」
「この鳥料理は、あふれる肉汁がジューシーな印象を受けます。また、肉の焼けた香ばしい香りが食欲をそそられます。では、一口頂きます。・・・肉は濃密で重厚な深い味です。味付けは塩のみのシンプルなものですが、肉そのもののうま味を引き立て、素材本来の甘さが口に広がります。」
はい、ここちゃんが文句なしの優勝です。
「村長さん、雨が降らないと聞いたのだけれど・・・なにか心当たりはあるの?」
「このあたりでは数十年に一度、こういうことがありまして、そのたびに村は餓死者を大量に出しているのです。」
話を聞く限りでは、雨不足は単純に今年が“雨の少ない年”というだけのよう。
雨を降らせること自体は容易なのだけれども、1回降らせてはいおしまい、というわけにはいかない様子だ。
助けてあげるとするならば、少なくとも今年いっぱいは継続的に援助する必要があるだろう。
正直、ちょっと面倒。
しかし、目の前の肉の山だ。
村をパッと見た印象では、決して豊かな村ではない。
おそらくだが、この量の肉は、相当の覚悟のあらわれだ。
「ん~、まぁ、御馳走になったし、とりあえず雨を降らせればいいのよね?ここちゃん、やってもらっていい?」
「みょんみょん様のお心のままに。」




