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幕間:森のお散歩③

追いついてきたここちゃんはいつも通りの様子で、少し安心した。

よんよん君がフォローしてくれたのかもしれない。


私はもっと仲間NPC達にパワハラしないように気を付けないとね。

パワハラダメ、絶対!


そうして私はお気に入りの湖に来ています。


「はっち君、ヒル君もありがとうね。」


私ははっち君の土竜、ヒル君の頭を撫でる。

はっち君は聖騎士だが、竜騎士職も取得しているので、空竜、土竜、水竜の3種類の竜を従えている。

そのうち土竜のヒル君は人が乗れるサイズで4足歩行のオオトカゲのような竜だ。トゲトゲした鱗がかっこいい。


今回そのヒル君は、体力のないななんちゃんときゅ~たんを乗せてここまで運んできてくれたのだ。


「そういえばさ、この子たちの食事ってどうしてるの?」

「は、はい、僕たち眷属と同じようにちろさんが作ってくれています。料理というより、ぶつ切りにしたいろいろなお肉をお皿に盛ったもの、ですけど。3匹とも、喜んで食べていま、す!」

「じゃあ、トゥエル君ところの子たちもちゃんと食べてるのかな。」

「は、はい、ポーはヒルと仲が良くて、よく、一緒に食べて、います。」


トゥエル君というのは12番目の仲間NPCで、テイマーなのでいろいろなモンスターを従属・使役できる。中でもヒポグリフのポー君は移動にとても便利なのだ。


にしても、ワシ(ヒポグリフ)とトカゲ(土竜)が仲良くしているのって違和感あるな。いつかそこにお邪魔したい。


「ちなみに、さ。もしはっち君が、好きに使えるお金を大量に手に入れたら、何買う?」


私は意を決し、たずねる。

というのも、NPC達はこんなにも働いているのに給料を得ていないのだ。

与えられた仕事をこなせば衣食住提供されることが報酬だともいえるけど、遊ぶ金欲しさに働いていた神原美音からすると、彼らにお給金を渡さないことに罪悪感に苛まれる。

かくいう私は現在絶賛ニート中なわけだけれど。


「お、お金ですか?え、えっと、防衛班は、特に足りないものはありません。必要なものは、ななんが詳しいと、お、思います。」

「防衛班のリーダーとして、じゃなくて、はっち君が個人的に欲しいものよ。」

「ぼ、僕の、ほしいもの、ですか?う、う~ん、んん~」


はっち君が悩んでいるその横で、ここちゃんが織糸スキルでピクニックマットとクッションを作ってくれる。

さらによんよん君がパラソルまで作ってくれた。

ここに来る道中、木の枝を拾ってきれいに拭いているなと思ったら、パラソルにするためだったようだ。

きゅ~たんはアイテムボックスからアイスティーを出してくれる。事前に用意していたらしい。

ななんちゃんはアイスボールという氷魔法で氷を作り、それをろくろ君がアイスピックで砕いている。


その間ずっと悩んでいたはっち君は、悩みすぎてだんだん顔色が悪くなってきた。


「何もない?じゃあ、はっち君は何か楽しみにしていることはある?」

「みょんみょん様にお会いできる報告会と夕食はとても楽しみです!僕たち眷属の生きる糧です!!」


こっちの質問には目を輝かせて即答だ。

なんというか、欲がない。


「あ、あわわ、で、でも、お会い、お会いできなくても、みょんみょん様のためなら、何でもが、頑張り、ます。」

「ふふ、はっち君がいつも頑張ってるのは知ってるわ。」


私はここちゃんに差し出されたアイスティーを飲む。

キンキンに冷えたアイスティーを口にふくむと、ふんわりとさわやかな香りが広がる。

この世界で採れる紅茶だと聞いているが、なかなかおいしい。


「他のみんなは、もし自由に使えるお金をたくさん貰ったら、何を買いたい?」

「私は・・・・・・・・・いえ、なんでもありません。私も特に何もほしいものはありません。」


ここちゃんは何か欲しいものがあるようだったけど、私にはどうやら言えないようだ。

うんうん、他人には言えない欲しいもの、あるよね。

そういうものも、お金があればこっそり買いに行けるんだよなぁ。


「自分の為のもので購入できるもの、であれば私は紙がたくさんほしいところです。メモに多量に使いますので。特別なものでは、魔法を封入した巻物を購入してみたいものです。メガラニカでは宝石に魔法を封入していましたが、この世界では魔法を封入した巻物があるとのことです。どのような仕組みなのか、見てみたいものです。」


ななんちゃんはなんというか、優等生なんだよな。

回答にそつがない。


「人間やケンタウロスが使っている薬草を買ってみたいですねぇ。薬は十分にストックがあるんですけどぉ、あるに越したことはないのでぇ。」

「それはきゅ~たんの仕事上絶対必要なものよね。今日、人間の村に行くし、手に入りそうならもらってくるね。以前助けたブラハさん、薬師だって言ってたし。」


今日、この散歩の後に、渇水で困っているという人間の村に行ってみることになっている。

その村人を助けるかどうかは話を聞いてみて決めるが、森で迷子になっていたブラハさんはすでに助けているので、相談できるはずだ。


「私的に欲しいものとおっしゃられてもぉ、みょんみょん様の寵以外をあげる眷属なんてぇ、いますかねぇ・・・」

「失礼ね、みょんみょん様から賜った“設定”に欲しいものがある眷属だっているんだから!」


私はNPC達のことが大好きなので、寵はすでにいっぱいあげてるだろうとかも思ったりする。

とはいえ、確かに「みんな大好きだよ!」と毎朝みんなに言っているわけじゃないので、給料云々考える前に、私はもっとNPCに大好きだよって伝える努力こそすべきなのかもしれない。


「じゃあ、ここちゃんは本当はお金で人間のオスを買いたいってこと?」


そう、ここちゃんは設定に“虜にした人間男性を丸呑みして苦しみもがくのに興奮する”と書いているのだ。


「い、いえ、みょんみょん様が特別に慈悲を与えている人間を・・・そ、その・・・」

「え~、私は確かに人間好きだし、残酷なことあまり好きじゃないけど、残酷なことを好むここちゃんは好きなのよ。」


もっと正確に言うと、人間が人間に残酷なことをするのは勘弁願いたいのだが、蜘蛛が他種族に残酷なことをしているのは好みというか。

難しいね。


「では、私が人間を丸呑みして快感を得るのも、許されることなのですか!?」

「当然よ、私がそう決めたのだもの。」


ここちゃんにはもっとオブラートに包んで発言してほしかったが、とりあえず冷静にうなづいて見せる。


「大好きなみんなのこと、もっと知りたいし、何か欲しいものあるなら聞きたいな。よんよん君は?」

『すみません、特に何も思いつきません。』

「それはそれでよんよん君らしいね。じゃあ、ろくろ君は?」


私は少し離れたところにいるろくろ君に声をかける。

ろくろ君、一人が好きだという設定だし、探索係として周りを警戒しないといけないしということでちょっと離れた見晴らしのいいところにいるけれど、多分私たちの話も聞こえてる。


『もしその金が、みょんみょん様より賜ったものなのでしたら・・・俺はその金を手放したくありません。』


ろくろ君からのその伝達<コール>に、他の子は「なるほど確かに」とうなずく。

私はまさか君からそんな言葉を聞くとは思ってなかったよ。




そのあと、ななんちゃんの慰労ということで私の膝枕での睡眠を強要したり、織糸スキルを用いた魚釣り対決をしたり、みんなで人狼ゲームをしたりでなんだかんだホームに帰ったら12時前になっちゃった。

濃ちゃん、薄ちゃん、カラス君がか~な~り不満そうだってけど、ここちゃんとふみちゃんを加えた6人でランチは外でピクニックしながら食べよう?となんとか言いくるめて人間の村に出発する次第です。


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