幕間:森のお散歩①
幕間:森のお散歩
今日もおいしい朝ごはんをおなか一杯食べた私ことみょんみょんです。
今、8時40分、上位ナンバーの子たちのお部屋の前に来ています。
昨晩、今朝のお散歩はいつものメンツじゃなくて上位ナンバーの子たちと行きたい、と言ったらちょっとざわついちゃったんだよね。
薄ちゃんは自分も行きたいと子供みたいに駄々をこね、カラスちゃんはろくろちゃんよりも自分の方が探索係<シーカー>としていかに優秀かぷちプレゼンし始めた。
既得権益に固執するのは蜘蛛も人間も変わらないみたい。
散歩の付き添いを権益っていうのも変だけど。
なお、濃ちゃんは窮したらしく、自分たちには主の散歩の付き添い以外仕事がないからそれさえも奪われたら困るって、苦しい反論してた。
仲間NPC達はどんだけ働くのが好きなの?ワーホリなの?
そもそも、上位ナンバーの子たちと散歩行こうと思ったきっかけも、ななんちゃんが寝てる時間以外ずっとせわしなく働いてて心配っていうきゅ~たんの小言を薄ちゃんから聞いたことなんだよね。
「ななんちゃんを職務から強制的に距離を置かせようと思って散歩を提案したけど・・・その時間休めって命令した方がよかったかな。もしかして、激務で疲れている部下に、気分転換と言って休日にバーベキュー提案している糞上司になっちゃってたりする?」
それはマズイ。かなりマズイ。
ちょっとでも嫌そうな雰囲気あったら中止にしよう、そう心に決めて、私はドアをノックし、部屋に入る。
「あ、あっ!みょんみょん様!」
部屋の中央のスペースでちょこんと椅子に座っていたはっち君が立ち上がる。
さらによんよん君とろくろ君が私の前に駆け寄ってきて、片膝をつく。
『わたくし共の方からお迎えに上がるべきところを、申し訳ございません。』
「私の方こそ、早く来ちゃってごめんね。」
いつもは朝ごはん食べ終わったら軽く身支度して濃ちゃん達の部屋に行き、3人がそろそろ行きますかね~みたいな感じでゆる~く出発する。
私はいつものノリで部屋に突入してしまったけど、上位ナンバーの子たちはだいたい9時ごろに出発するつもりでみんなまだ準備中だったのだ。
気にしなくていい、と言おうとしたところで、閉じていたカーテンが勢いよくあけられた。
「お待たせいたしました、では、出発しましょうか!」
日よけ布付きの麦わら帽子にカーキ色のつなぎの作業着を長靴にインしたななんちゃんが現れる。
どうみても田舎にいる農作業休憩中のおっちゃんの恰好なのに、真夏の農作業着コレクション!とか銘打ってるこじゃれたメンズ雑誌に出てきそうな感じに仕上がってるの、本当にななんちゃん顔がいいな。
毎度のことながらいつ裏切るんだよって言いたくなるけど、そんなこと言ったらななんちゃんが大量吐血して死んじゃうから絶対言いません!
「それ、あなたに言われたから作ったけど、今着るの??ご散策の差添えとして品位ある姿がいいに決まってるじゃない!」
と言って自室から出てきたここちゃんは、豪奢なドレスで現れた。
深紅のドレスがここちゃんの白い肌とあでやかなブロンズの髪を引き立てていて、ふんだんに使われている白いレースがとても華やかだ。
今から馬車に乗って王族が集まる舞踏会にでも行くのかな?
「ご散策に森の中を歩くのを忘れているのかな、ここ。それともまさか、みょんみょん様に頂いた衣装よりもその服の方が品位を備えているとでも言いたいのかい?」
「まさか!みょんみょん様より賜った至高の衣装を汚すわけにいかないから着替えているんでしょう?でも栄光あるみょんみょん様の眷属として品格ある衣装を精一杯作ったのよ!」
「みょんみょん様、くだらない口喧嘩なぞで貴重なお時間を使う必要はありませんよぉ。あの二人は置いて行きましょぉ?」
医務室の方からきゅ~たんが出てくる。
だが、その背には恐ろしく大きいカバンが背負われており、あまりの重さに心なしか脚が震えている。
「あ、きゅ~たん、そのレースかわいいね。おしゃれ!とりあえずカバンには何が入っているの?」
あまりにも大きすぎるカバンに対してなんて言及しようかと思ってきゅ~たんを見ていて、頭巾や袖に普段ないレースがあしらわれていることに気づいた。
「カバンの中には緊急時に使用する薬品や道具を入れておりますぅ。」
「流石きゅ~たんね。でも、いつもの散歩コースなんだし、魔法で十分よ、置いていこう?」
どうやら救急カート(病院にある、緊急時の道具を入れいる棚)を背負っていこうとしている様子なので、やんわり拒絶しておいた。
「ななんちゃんの動きやすい服も素敵だと思うわ。ここちゃん作ってくれたのね、ありがとう。ここちゃんの服はとても素敵だけど、散歩するには動きにくそうだから、これなんてどうかしら。」
私は織糸スキルを使用してその場でレースワンピースを一つ作ってここちゃんに手渡す。
ここちゃんのアバターも神アバター師に作ってもらったものとはいえ、何度もリテイクして熟考を重ねて完成させたものなので、サイズやらなにやら全部把握しているのだ。
「あ、そんな・・・しかし・・・。いえ、はい、すぐに着替えてまいります。」
服を受け取ったここちゃんは顔を真っ赤にして自室に飛び込む。私の見間違いじゃなければ目を潤ませていた。
私の作った服はガーリーな趣向でここちゃんの趣味には合わなかったのだろう。
でも、ここちゃんは主である私にノーは言えない。
つまり完全にパワハラだ。
「あ、ここちゃん。」
申し訳なさ過ぎてここちゃんの部屋の前に来た私に、ここちゃんは振り向いて笑顔を作る。
その頬には涙が伝っていて、私は言葉を失ってしまった。
「すぐ追いかけますので、先に出発してください。」
「あ・・・うん。」
やってしまった。
私はかける言葉も思いつかず、仕方なく散歩に出かけた。




