2-4. 傲然たる強者(1)
4.傲然たる強者
医務室で濃ちゃんに背中をさすってもらって、きゅ~たんに水を飲ませてもらったりしてだいぶ落ち着いてきたみょんみょんこと私です。
モズのはやにえが来ると覚悟してたのでグロい絵面の蜘蛛にはノーダメでしたが、まさか人間も御登場するとは思っていなかったので、心にクリティカルヒットです。
はい、思い出すのやめましょう。
濃ちゃんときゅ~たんのポンゴ達へのヘイトスピーチがどんどん過激化しているので、そろそろ立ち直らないと仲間NPC達がポンゴ達を杭に飾り付け始めそう。
「だいぶおちついたわ、濃ちゃん、きゅ~たん、ありがとね。」
私はゆっくり立ち上がると、できるだけ平常と同じように歩く。
そして会議室までくると、念のためノックをする。
またあれを目にいれたくない。
「席を外してごめんなさい。扉を開けてもいい?」
すると内側から扉が開かれ、扉を開いたここちゃんは横に退き畏まって片膝をつく。
中に入ると、私用の椅子が改めておかれている。
スクリーンには何も映し出されていなかった。
「誠に勝手ながら、本日17時にこちらから村に攻撃を仕掛けると宣誓させていただきました。」
ななんちゃんは私の前に進み出る。
日時を指定して、非戦闘員が避難できるようにしろと指示したのは私だ。
今日の今日だとは思っていなかったが、私が取り乱したのを見て、仲間NPCたちのポンゴへの拒否感が高まって、ななんちゃんにも抑えづらかったのかもしれない。
「わかったわ。あの様子じゃあこっちの強さを見せつけておかないと、良好な関係を保つのは難しいそうだもんね。排他的な種族のようだったけど、もう少し他種族に友好的になってもらわないと困るわ。」
「おっしゃる通りでございます。」
思い返すと、ななんちゃんは比較的初期から、ポンゴを攻撃しようとしていた。
ポンゴが関係を築きづらい相手であることを見抜いていたのかもしれない。
ななんちゃん高INTだから!
「戦闘員のみが残ったあの村は眷属の方で適度に攻略しておきます。ご報告ですが、20時ごろにさせていただくことは可能でしょうか。」
夜の報告会は、平時は17時と決まっていた。
だが今日は17時に攻撃を仕掛けるので、それが少し落ち着いた20時ごろに報告会をしたいということだ。
そんなことは別にどうでもいい。
気になるのは、ななんちゃんが明らかにポンゴ攻撃の際に私をのけものにしようとしていることだ。
相手がいかに兵士とはいえ、戦闘の際は残虐な映像が流れるから、“心が弱い”私に配慮していることがうかがえた。
私としては、今回の攻撃で兵士が死ぬことの責任は、仲間NPCに指示を出している私にあると思っている。
だから、私にはそれをちゃんと見届ける責務があるのではないか。
でも・・・さっきあんなのを見てしまってる状態で、冷静にみられるだろうか。
あんまり自信がない。
自分が思っている以上に私の心は弱いのかもしれない。
「うん。・・・わかったわ。みんなに任せる。何度も言うけど、安全第一よ。あと、ポンゴ達が降伏してきたら、即座に攻撃をやめてあげてね。」
「承りました。」
時計を見ると、15時前だった。
「気分転換に散歩に行ってきてもいい?3騎士の子たちを借りると都合悪いかな。」
3騎士というのは、濃ちゃん、薄ちゃん、カラス君のことだ。
上位ナンバーの子たちがよく3人をまとめてそう呼んでいるので、私もまねさせてもらった。
「問題ありません。もしも、向こう側に暗殺者等の動きがあれば連絡させていただきますので、その際はホームにお帰りください。」
「ありがとう。ふふ、暗殺ね、油断は禁物だもんね。」




