2-3. 森の賢者(2)
ところ変わって、とある村。
みょんみょんたちが暮らすアルジャー大森林の南側、温帯雨林の中にその村はあった。
ポンゴと呼ばれる猿系ビーストマンが暮らす17の村の中で一番大きく、一番豊かで、一番強い王たるオスが暮らす村。
村の中心には祭壇があり、祭壇の周囲は物々しい装飾で彩られている。
その祭壇の手前にひときわ大きな竪穴式の住居があった。
「ガラーネサマのシンライアツいポンゴ、ポーニヌだぞ!」
入り口を固める門番のポンゴに話しかけるその小柄なポンゴの頭には、紫色の小さく可愛い帽子が乗っていた。
門番のポンゴは、その顔を見て入り口を開ける。
中には贅肉を蓄えた、大柄なポンゴが何枚にも折り重なった毛皮の上に腰を掛けている。
他のポンゴよりも少し赤が混じるその毛には、少しだけ品位が備わっているようにも見えた。
大柄なポンゴは小柄なポンゴを見ると、手にした獣の生肉を頬張りながら不敵に笑んだ。
「おお、ポーニヌ。帰ったか。北に湧いたニンゲンの巣はどうだったか?」
「ガラーネサマ!あれはたくさんのニンゲンをチャームでシタガエたクモでした!」
小柄なポンゴは身振り手振りも駆使し、自分が持ち帰った手柄を自慢する。
「なに、蜘蛛か。じゃあ、東の女王蟲の仲間か。」
「イイエ。」
「違う蜘蛛か。」
「ハイ。」
小柄なポンゴは懐から血の滴る心臓を取り出す。
「ニンゲンのシンゾウにドクをいれ、ニンゲンギライなリュウオウにオソわせる、ドクでヨワッタリュウオウをタオしたクモ!とてもヨワい、ツヨそうにするのがウマいだけのクモです!」
「蜘蛛ごときの幼稚な罠で死ぬとは、頭が弱いトカゲの最期は哀れだな!」
「ハイ。」
「それで、蜘蛛自体はどれほどの強さなのだ。」
「とてもヨワい、ガラーネサマのヒッサツファイヤーボールでイチゲキ!」
「まぁ、それはそうだな!」
大柄なポンゴは口に含んだものを飛ばしながら上機嫌に笑う。
「でもリーベー、シッパイしてクモをこのムラにヨんだ。クモたち、このムラシってる。」
「ああ、リーベーか、猫の村に行っておめおめと逃げ帰ってきおったが、つけられていたのか。全くなんと情けない。もう一度行かせたが、また帰ってくるようなら串刺し係に降格だな。・・・で、それはどうした?」
大柄なポンゴは、手に残った少し長い骨で小柄なポンゴの頭に乗った紫色の帽子をこづいた。
すると小柄なポンゴは懐からこぶし大の石を取り出す。
霊鉱石と呼ばれるその石は、青黒く深い光を放っている。
「センリヒン!センリヒン!」
「はははは、いいものを取ってきたじゃないか。それも似合ってるぞ」
大柄なポンゴは霊鉱石をうけとると、残っていた果実水を一気に飲み干す。
その満足そうな姿を確認し、小柄なポンゴはその場をあとにした。




