1-2. 山のふもとにて(1)
2.山のふもとにて
ある日突然、あなたに48人もの子供ができたらどうしますか?
それも……とびっきりかっこよくて
とびっきり素直で
とびっきり愛らしくて
とびっきりの淋しがりや。
しかも、そのうえ……
ってどんなマザプリだよ。
眷属作成。
それはゲーム「メガラニカ」内で複数の種族が持つスキルで、例えば吸血鬼であれば同じ吸血鬼や蝙蝠を仲間NPCとして作成できる。
アラクネもメスは眷属作成スキルを所持していて、仲間NPC・メイドNPC数の枠内であれば、デスウィーバーという蜘蛛モンスターを眷属として作成可能だ。
何故メスだけが眷属作成スキルを持っているのか・・・それはそのスキルを試しに使った時に判明した。
アラクネの場合、眷属作成とは卵を産んで生まれたデスウィーバーを使役できるスキルだったのだ。
そのため始めのうちはいろいろあったが、何はともあれ、「無課金」勢の私は現在のところ仲間NPC23人、メイドNPC25人、総勢48人もの眷属を抱えている。
デスウィーバーはレベルなどの一定の条件を満たせばアラクネ/アトラークという上位種に進化可能であり、私の場合は仲間NPCを全て上位種に進化完了させている。
だから見た目は人だが、濃ちゃんも薄ちゃんもアラクネなのだ。
説明が長くなったが、つまりはゲーム「メガラニカ」内で私の保有している全NPCはすべて私の眷属という扱いであり、ゲームの設定上は主人である私に絶対の忠誠を誓っているということになる。
まぁゲームの設定上は、という話だ。
要領をつかめたことをいいことに、伝達<コール>を使って眷属全員とグループ通話を試してみた。
グループ通話自体はうまくいった。
だが途中から堰を切ったように全員が思い思いの言葉を発言し始め、収拾がつかなくなった。
とりあえず、眷属のうちメイドNPCを除く仲間NPC全員でこっちに迎えに来てもらいたい旨を伝えて、いったん伝達<コール>は終了になった。
「メガラニカ」内では一緒に戦闘に参加することができる仲間NPC以外のNPCシステムとしてメイドNPCというのがある。私の場合、このメイドNPCが偶然全員オスだったので、フットマンと通称している。
このメイドNPCはゲームの仕様上は家具アイテムと同様の扱いであり、外見を設定したり設定欄に文章を書きこめたりはできるものの、ホームから外に出すこともレベル上げをすることもできない。
なのでフットマンたちは全員Lv1であり、足手まといだと判断されて今回の移動ではホームで留守番ということになった。
私としては留守番させる理由として「外に連れて行くのは危険だから」と言ってほしかった。
しかしまぁ全員が口をそろえて「邪魔」などというもんだから、私としてはもやってしまう。
Lv1ではあるし蜘蛛モンスターの初期アバターのままとはいえ、全員設定は練りに練って性格も“本来の”姿もしっかり設定している大切なNPCなのだ。まぁ蜘蛛なのだが。
何度かの休憩をはさんで、砂漠を抜けて荒野に差し掛かった。
眼前には急峻な山がそびえたっており、私というお荷物を運びながらの移動は困難を極めただろう。
今晩はここで夜を過ごし、明日の朝にはお迎えと合流できるだろうということで、今現在は仲間NPCの4人が野営の準備に取り掛かっていた。
「ここなんて、なかなかいいと思うんですけどっ」
濃ちゃんが岩肌にあるくぼみを覆うツタ植物を素手でぶちぶちと引きちぎっている。
どうやら私が夜を過ごすスペースとしてそのくぼみを確保しようとしているらしい。
「濃ちゃん、素手じゃ大変でしょ?これあげるから使って」
私はアイテムボックスからレイザーエッジを取り出して濃ちゃんに渡す。
レイザーエッジはステータスのよい短剣なのだが、霊鉱石という比較的よくドロップする素材から作れるわりにショップで高く売れるため、手軽な財力源としてたくさん作成していた。
「俺に・・・?あ、ありがとうございます!」
濃ちゃんは戦士職を全く取得していないとはいえ、ゲーム内でも装備すること自体はできる。
ただ、やはり短剣技能がない分、扱いづらいのか、何度も持ち替えながらツタ植物と格闘していた。
ツタ植物を排除し終わると、ふみちゃんが織糸スキルでくぼみの壁面をきれいにカバーし、ふかふかなベッドも作ってくれた。
そうして寝床が確保されたので、今度は夕飯なわけなのだけれど・・・
濃ちゃんたちは先ほど見つけて狩ってきた狼型のモンスターを夕飯にするようだが、大きな問題があった。
昼ごはんもそうだったのだが、仲間NPCにはどうやら料理という概念がないようなのだ。
いや、存在として料理は知っているのだが、自分の食事を調理するという感覚がない。
つまりは生で丸かじりだ。
ふみちゃんは蜘蛛の胴体にある第二の口でちゅうちゅう吸って食べるので、変な話だが逆に許容できる。
だが、ほぼ人間と見た目が変わらない残り3人が大きなサソリを生で丸かじりという絵面はなかなかだった。
そして今度の食材は狼だ・・・
ちょっと流石に、許容できない。
「あのね、その、せめて火を通さない?」
焼いて切るだけでも、だいぶ見た目はましになるはずだ。
男の子たちはきょとんと私の方を見ている。
「ほら、寄生虫とか・・・いるかもしれないし」
「はい・・・では、そのように」
少し納得がいかない様子だが、みんな私の指示に従ってくれた。
「ふみ、ファイヤーボールをお願いできるか?」
カラス君は食材を1か所に山積みし、ふみちゃんにファイヤーボールを放つように頼む。
少し戸惑いながらもふみちゃんが食材に向けてファイヤーボールを放つと・・・
食材は見事に爆発四散した。
「こ、これでいいんです?食べやすい大きさには・・・なりましたね!」
焼け焦げて飛び散った肉片の一部をつかむと薄ちゃんは口に運ぶ。
「お、味がちょっと変わって・・・これはこれでおいしいっす!」
「威力が大きすぎたみたいね。量が減っちゃってごめんなさい」
「みょんみょん様が謝ることではありません。考えなしにファイヤーボールを撃った私めが悪いのです」
「これだけありゃあそれなりに腹は満たせますよ。さ、食事にしましょう?」
濃ちゃんが散らかった肉片を集めるとふみちゃんがお皿の代わりに糸で作ったマットをひく。
思惑とは違う形にはなったが、狼丸かじりの風景を見ながらの夕飯は阻止できたので、満足するとしよう。