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2-3. 森の賢者(1)

3.森の賢者


昼は仕事のため外出しているNPCも多いことから、最近は昼ご飯を個別に取ることにしていた。

しかし、せっかくケット・シーの2人が来たことだし、今日はホームで手が空いているNPC達とケット・シーの2人で昼ご飯を一緒に取ることにした。


「もんもんの手下は人間ばかりなのか?何人いるんだ?さっき蜘蛛も見たけど、あれはもんもんの夫の一人なのか?」


ソー君とメル君は一番末席になるから、私とはかなり距離がある。

メル君は好奇心が抑えられないのか、隣に座っているふみちゃんを質問攻めにしている。しかし、ふみちゃんは完全に無視を決め込んでいて、隣から大声で質問を浴びせてくるメル君を意にも解さない。


「みょんみょん様とお呼びせぇ、トカゲの残飯は頭も舌も煮えとるんか。」


無視しきれなかったのか、一悟君がフォークで威嚇する。


「俺は残飯かもしれんが、メルヴァシェルシュは龍王のところに行ってない、訂正しろ」


ソー君も強気です。

とりあえず、二人がおびえる毎日を過ごすことはなさそうなので、そこはよかったと思おう。


「メル君、私の仲間はみんな私と一緒でこう見えて蜘蛛なのよ。濃ちゃん、薄ちゃん、村にいたネクロマンサーのトゥトゥー君もね。蜘蛛の姿をしている子たちはホームの掃除とかの下働きをしてくれている子達で、その子たちも私の大切な仲間なの。」

「人間じゃないのか!どおりで臭くないと思った!!」

「他種族に囲まれる状況で大変なこともあると思うけど、困ったら相談してね。夕ご飯はいつもみんなとここで取るからその時にでも。」


二人の席を見ると、白い肉団子に餡がかかった料理が置かれている。団子の上には少量、飾りの様に細長いリーフが添えられていて目にも華やかだ。

仲間NPC達は相変わらず四角いハンバーグ的なものがお皿の上に飾られることもなく置いてあることと比べると、人質の2人の方が豪華に見えるぐらいだ。


「ちろちゃん、ケット・シーの2人の料理は何なの?」

「はい、猫はマグロ等魚も好むと聞き及びましたので、眷属があまり食べない魚料理にしてみました。北の山の急流に住むイワナに近い魚は、白身ですが味は濃厚で旨味が多く、赤身魚に近い味がします。その肉をミンチにして団子状にし、スープをからめております。名づけるとすれば、『白身魚のブレ~猫草を添えて~』です。」

「客人をもてなす料理も完璧にこなすのね、さすがちろちゃん!」


ちろちゃんはその言葉に満足そうな笑みを浮かべ、恭しく礼をすると厨房の方へ戻っていく。

あの反応を見るに、別に蔑視感情をふんだんに盛り込んで出した料理というわけでもなさそうなので安心した。


そこで改めて部屋を見回すが、仲間NPCの半分近くは席についていなかった。

探索班と食料班の子たちがいないのはいつものことなんだけど、こういう臨時の食事会の時もたいてい顔を出よんよん君がいないのは意外だった。


そういえばよんよん君は先ほど、おしゃべりタイマーというアイテムを貸してほしいと言いに来て許可を出したところだった。

これは、『メガラニカ』ゲーム中の音を録音して、その音を特定の時間になったら流すことができる目覚まし時計的なものだ。

10パターンの録音ができるのだが、『メガラニカ』ではイベントに出てくるえっちぃNPCのボイスをいかにエロく録画することができるかがSNSで盛り上がったっけ、懐い。

よんよん君がそんなやましい使い方するとは思えないし、野鳥の声とかを録音する趣味でも見つけたのかな。


「これ、美味いぞ!!」


その大声にケット・シーの2人の方を見ると、メル君が口いっぱいに肉団子を詰め込んでいる。

喜んでくれているようでよかった。


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