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2-2. 王道の序章(7)

「とりあえず森の賢者には使者としてよいっちゃんを向かわせる・・・のが13時ね。人間の村に関しては、ふみちゃんの話を個人的に聞きたいから、ふみちゃん、ここちゃん、ちょっとお話を別のところで聞かせてもらっていい?雨降らせるならここちゃんにもお願いしないといけないしね。フットマン達のレベリングに関しては森の賢者の件が落ち着いたらやってみようかな。あ、レベリングは私も一緒に行くからね、レベリング♪レベリングぅ♪」


と言いながらふみとここを連れて主が出ていくのをカラスは見送った。

11番目の眷属である与一のことを、主がよいっちゃんと愛称で呼ぶことを初めて知った。

何とも言えない歯がゆさが残る。


「ポンゴが愛嬌のない生物で助かりましたね。」


ななんが机の上にメモを並べながら微笑する。

どうやらカラスに向けられた言葉であったらしい。


「ケット・シーとの違いがよくわかんないですぅ・・・」

「猿と違って猫はそこまで臭くなかったっすよ!」

「匂いっつ~か、見た目な気もするけどな。みょんみょん様がアレをもふりたいっておっしゃったらどうしようかと思ったぜ。」


濃墨と薄墨は自分の部屋でもないというのに、手ごろな椅子を見つけて座りくつろいでいる。

カラスはななんが机に貼っているメモを見るが、達筆すぎて多くは読めなかった。


「殲滅するつもりなのか?」


カラスには先ほどの話し合いにおいて、ななんは友好的にことを進める気がないように見えた。


「みょんみょん様もポンゴの殲滅に忌避感をお示しになられなかったですし、この森から消えてもらいましょう。恨みはありませんが、都合がいいですので。」


ポンゴを主に直接見せたのは、主のポンゴに対する反応を見るためだったということだ。


「幼体の扱いは注意しろ。みょんみょん様は幼体には特別にお心を砕かれる。」

「蜂の子はあまりご慈悲を与えてはいらっしゃらなかったように見えましたが?」

「おそらくだが、知性のある幼体がご慈悲の対象のようだ。」

「うむ、そうですか。了解しました。あ、そうでした、そうでした。」


ななんは部屋の奥から黒光りする丸い生物の死骸を取り出す。


「昨日、森の東側でデスウィーバーが頻回に目撃されることを共有させてもらいましたが、その蜘蛛をあの捕虜が持ち歩いていました。脚をもぎ取って携帯し、毒腺や糸疣(蜘蛛の糸を出す器官)を利用するようです。脚が無くなってしまいましたがあまり見ないタイプのデスウィーバーですのであなたにも姿を見てもらっておこうと思いまして。」

「へんな蜘蛛だな。脚はどんな感じだ?」

「脚も黒く、細長くて針金のような印象だと聞いています。」


ななんは半ば強引にカラスにその死骸を手渡す。


「頃合いを見てみょんみょん様にもお伝えください。どのような御反応だったか、また教えていただければ。」


森の東側にいるアラクネと思しき女王蟲もいずれ対峙することとなる。

同族に対して主がどのような反応を示すのか、ななんも少しずつ探っているのだろう。

それ自体は理解できるが、カラスはあまりななんからの頼みごとを聞きたくはなかった。最近ななんと自分が連携しすぎているので、主は快く思っていないだろうことが容易に想像できるからだ。


「よろしくお願いしますね。」


ななんの笑顔はそれを見透かしているようで、憎たらしかった。


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