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2-2. 王道の序章(3)

「おかえりなさいませ、みょんみょん様。」

「ただいま、ななんちゃん、みんな!階段つくってくれたのね、ありがとう!」


翌日、帰ろうとする私をケット・シーさんたちは私を何とか引き留めようとしていた。

森の賢者の報復を恐れているのだろうと想像できたので、トゥトゥー君と飛竜ゾンビを村に滞在させて、私は引き揚げてきた。

ケット・シーさん達もかわいいけど、やっぱりNPC達と暮らしたいからね。


で、ホームに帰ってきてみたら、ホームの入り口から崖の上まで階段が作られていた。

崖を掘って作った階段をコンクリートで補強して、さらに彫刻まであって奇麗に飾られている。

おそらくケット・シーのメル君とソー君のために作ってくれたのだろう。

私だって毎回崖をよじ登るのも面倒だったから普通にうれしい。


「少しお休みになられますか?食事の用意もできているとのことです。」

「そうね、丸1日外に出ちゃったけど、変わったことはある?」

「変わったことではありませんが、いくつかご報告があります。」

「じゃあ、まず報告を聞こうかな。」


森の賢者とか東の女王蟲に関して、情報共有もしておかないといけないしね。


ということで、いつもの上位ナンバーの子たちの部屋に移動する。

手が空いているNPC全員と情報共有はしておきたいものの大人数での話し合いも大変なので、上位ナンバーの6人と濃ちゃん、薄ちゃん、カラスちゃん、そしてふみちゃんといういつものメンバーでの報告会だ。

ただ、今日はメル君とソー君も一緒だ。

二人を見やると、高レベルのNPCに囲まれて落ち着かないのか、あたりをきょろきょろと見まわしている。


上位ナンバーの子たちの部屋は、いつもは個室を仕切るカーテンが開けっぱなしなのに、今日はきっちりとカーテンを閉め、中が見えないようになっていた。

中央のテーブルの上も、少し片づけられていて明らかに客人が来るのを意識されているようだった。

それでも書類やメモが多く置かれていて乱雑な印象はあるのだけれど。


「・・・それで、人質が2人になっちゃったの。」


私はことのあらましを説明する。

ななんちゃんはカラスちゃんから情報収集して知っていそうだけれど、他の子がどこまで知っているかわからないので初めから全部説明させてもらった。


「ふむ、ケット・シーは初めて見ましたが・・・全身毛だらけですね。」


ななんちゃんはケット・シーの2人に興味津々で、2人の周りをぐるぐる回りながら嘗め回すように観察している。

他の子達はちょっと侮蔑というか、汚物を見るような目で2人を見てる。

昔、実家で飼ってたハムスターのためにミルワームという虫を冷蔵庫で保存してたけど、それを見るお母さんの目、あれと一緒だ。


「こっちの大きい子がソー君で、小さい子の方がメル君ね。さっきも言ったけど、客人として丁重にもてなしてね。」

「客人じゃない、俺は夫だ。」


この状況でもソー君は毅然としている。


ソー君の言葉にきゅ~たんの表情が俄然険しくなる。

Lv.99に囲まれてそのうえ隠しきれない敵意にさらされているのに、さてはソー君、心臓まで毛だらけだね。


「個人的にお二人に聞きたいことは山ほどあるのですが、それは後程にさせていただくとして・・・」


ななんちゃんは笑みを絶やさず余裕の表情だ。

一度私の表情を窺うように私の方に視線を移したが、すぐにメル君に視線を戻してそのまま言葉を続ける。


「確認なのですが、眷属と客人とでは、優先順位は客人ということでしょうか。」

「まさか。ソー君とメル君には申し訳ないけど、私にとってはNP・・・眷属のみんなの方が大切よ。」


メル君とソー君のいる前でこう言い切るのも申し訳ないけど、二人には同様のことを帰り道で伝えてあるから耐えてもらおう。


「了解いたしました。」


二人の観察はもう満足したのか、ななんちゃんは私の方へ振り返り、軽く頭を下げる。


「では、客人は客人として丁重にもてなすとのことですので、今は空き部屋となっている会議室の隣の部屋を使っていただく用意をしています。私たち眷属はみょんみょん様にご報告したいことが多くございますので、客人はお部屋でくつろいでいただきましょう。はっち、案内お願いできるかな。」

「うぇ~僕ぅ・・・うぅ、じゃあお前らはついてこいください・・・」


NPCのみんなはケット・シーと一緒にいたくないのか、流れるようにメル君とソー君を用意した部屋に案内、もといこの部屋から追い出した。

はっち君も指名時にはとても嫌そうな顔をしたが、一応客人として丁寧に接する気があるようだ。


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