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2-2. 王道の序章(2)

時間は夜になって・・・


「俺じゃダメですか?」


いろいろあって絶賛壁ドンされ中です。


イケメンケット・シーことソー君の吐息が頬にかかって熱が伝わってくる。

まっすぐな視線に射抜かれると、恋愛対象に猫が入っていない私でもちょっとドキドキする。


なんというかこの猫、艶っぽいというかセクシーなんだよね。


仲間NPC達は主人である私にこんなこと絶対できない。

だからこそ私は、このシチュエーションに胸がキュンキュンしている。

どうやら私はこういうところでも“押しに弱い”らしい。


それはそうと、順を追ってこの状況を説明しよう。


まず、ケット・シーの村を救った私たちは昼ご飯の歓待を受けた。

そこでこの村の首領というメスのケット・シーから、私に従属させてほしいという旨の相談を受けた。

私は、まるですべてその場で決めたかのように条件を提示して最終的に承諾したんだよね。

本当はななんちゃんがこれを見越していて、昼ご飯前にもろもろ相談してたんだ。ななんちゃんぐぅ有能じゃない?


貴重なお酒もふるまってもらい、気分良くダラダラしていたら夜になっちゃったので、観光ついでに今日は村に泊めてもらおうという話になった。


お部屋でくつろいでいたら、貢物を献上したいと昼からちょくちょく目にするイケメンのケット・シーがメル君を連れてやってきた。

村の従属の条件に文字が読めて知識の豊富なケット・シーを人質としてもらい受けることがあったんだけど、その人質にメル君を出したいということだった。

子供のメル君を人質っていうのは私には抵抗があったんだけど、人質って言っても情報源としていろいろ聞いた後は解放つもりだったこともあって、結局了承した。

さらにイケメンケット・シーが続けて言うには、この村では恩人に対し首領の息子を夫として差し出す風習があるという。

で、選ばれたのがこのイケメンケット・シーことソー君、本名はソールヒェガン・ンル・エイナーブ君です。


そして壁ドンな今に至る・・・と。


「いやいや、急に夫と言われましても、困るというか!!」


異類婚姻譚の中には確かに押しかけ女房も多いが、実際押しかけられると困惑しかない。

そもそも、押しかけ女房ももっと時間をかけて妻のポジションを勝ち取るものだろう。


警護のために横に控えていた濃ちゃんを見ると、止めに入ったほうがいいのか止めなくていいのか困惑している様子だ。

確かに「好き嫌いなんてしないで何でも食べる」とは言ったけど、そういう意味じゃない!


「ちょっと、ちょっと待って!今そういう気分じゃないの!」


意を決してソー君の体を押し返す。

圧倒的なSTR(腕力)差があるので余裕です。

ソー君も壁ドンをあきらめて私の目の前に正座した。


「そもそも、ソー君が私のところに来るなら人質2人になっちゃうじゃない。人質は1人って話でしょ。」


まだどぎまぎしているのを隠そうと、出来るだけ冷静を装う。


「伝え聞くところによりますと、神蟲は交尾した夫を食ってしまうとのことでしたので、別にもう一人必要かと思いまして。」

「それは夫と言えるの・・・?っていうか、その神蟲って以前も他の人が言ってたけど、なんなの?」


ケット・シーにおける夫の概念が私の思う夫の概念と少し異なりそうだということも気になるが、神蟲というワードも気になる。

以前、森の中で会ったブラハさんという人。

その人も私のことを神蟲と呼んでいた。


「はるか昔に存在した人間の神が、蟲を従えていたそうです。その蟲は上半身が人間、下半身は蜘蛛の姿をしているとのことで、人間は神蟲とよび信仰していると聞いています。真偽は不明ですが、東の女王蟲はその神蟲の末裔だと称していて、西の龍王は神蟲のことも調べていたのです。聞いていた神蟲の姿が貴方様のお姿とそっくりでしたので、貴方様も神蟲様の血族かと・・・」

「そういえばソー君は生贄として龍王のところに行ってたところを逃げて来たんだっけ。それで知っているのね。話を聞く感じでは、その神蟲っていうのは私と同じアラクネだと思うけど・・・神蟲と私は同じ種族ってだけで関係はないわ。」


ソー君、西の龍王のところにただ食べられに行っていたわけではないようで、なかなか有能な匂いがする。

ただのセクシーキャトではないということだ。


「貴方様の夫にしていただければ妹は安泰です。何卒よろしくお願いいたします。」

「俺の方からもよろしくお願いいたします。」


三つ指をつくソー君を見て、メル君は慌てて土下座する。


そんなこんなで結局、押しに弱い私は、ソー君とメル君の両方を連れて帰ることになりました。

なお、念を押しておくと、私の夫というのはソー君の自称です。

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