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2-2. 王道の序章(1)

2.王道の序章


おばあちゃんケット・シーの話を一通り聞き終わると、お礼に食事をふるまいたいと強くせがまれて断りきれずに村に滞在しているみょんみょんこと私です。


部屋でじっと待っているのも暇なので、何か手伝えることでもないかと外に出る。

すると飛竜ゾンビの横にトゥトゥー君がいて、私に気づいたトゥトゥー君は畏まって片ひざを折った。


トゥトゥー君は白い短髪の男の子で、少し伸ばした両耳の前の髪をピンクの髪留めでくくっているのがチャームポイントだ。

ネクロフィリアのネクロマンサーだけど、蜘蛛の巣のようなデザインのフード付きトレンチコートの下にタンクトップとショートパンツと明るい印象を受けるかわいい系男子だ。


「みょんみょん様、今日もお美しいお姿を拝見でき、この上なく嬉しく存じます。」

「ありがとう!トゥトゥー君も、飛竜ゾンビ送ってくれてありがとうね。」


このアラクネの姿も神アバター師にちょっと頑張って(お金を払って)作ってもらったものなので褒められると少しうれしい。


「この飛竜ゾンビの記憶を読みましたが、どうやらこの飛竜が西の龍王で間違いがないようです。」

「やっぱりかぁ~飛竜なのに龍王ってのはちょっと誇大広告だよね。」


2週間前から姿が見えないってあたりから、うすうすそんな気がしてはいた。

どうやら西の龍王は私たちがこの世界に来た初日に仲間NPC達にあっさり撃退され、食料として貯蔵されていたのをゾンビにされたようだ。


龍王という2つ名に身構えていたけど、ゾンビ化してレベルが半減してLv.20なら、もともとのLv.は40程度だったはずだ。その飛竜と似たようなレベルなのであれば、森の賢者とやらもそこまで警戒しなくてもいいのかもしれない。

油断するわけにはいかないけど。


「おい、女王蟲!」


飛竜ゾンビが懐いてじゃれてくるので、鼻筋を撫でていると、後ろから声をかけられた。

メル君だ。

横にはイケメンなケット・シーも一緒だ。


「あら、メル君。そうそう、私は君の言う東の女王蟲じゃなかったから、私のことはみょんみょんって呼んでくれない?」

「ええ!女王蟲じゃないのか?もんもん・・・言いにくい名前っ!!??」


目にもとまらぬ速さで、トゥトゥー君がメル君の頭を押さえつけている。


「やっぱり、生きてるって愚かなことだと思うんですよ。崇高なるみょんみょん様と僕以外の生物はいったん全員殺して、ゾンビにしてしまえばこの世界はオールハッピーだと思うんですけどねぇ!」

「すみませんが、その手を放していただけませんか。」


イケメンケット・シーはメル君の関係者なのか、メル君を助けようとトゥトゥー君の腕をつかむ。


「汚らわしい猫が、トカゲ臭さが移るから僕に触るなよ。ゾンビじゃなくてスケルトンにしてやろうか?」

「せっかく助けたんだから、乱暴なことはしないでほしいな~。」


トゥトゥー君は短気な子じゃないから本当に殺しはしないと思うけど、一応釘は刺しておく。私の仲間NPC達、他の種族に乱暴な子が多いからね。


飛竜ゾンビの腐った皮膚がちょっと手についたのを布で拭い、改めてメル君の前に腰を下ろす。


「それで、私に何の用?」

「えっと・・・それは、だな・・・」


自分から声をかけてきたというのに、メル君は言いづらそうにもごもごするだけだ。


と、背後に何か気配のようなものを感じて、後ろを振り返る。

目の前には横にいた薄ちゃんの大盾があって、少し先で小さなボールのようなものが跳ねていた。

どうやら背後から飛んできたボールを薄ちゃんがガードしてくれたようだ。


「みょんみょん様、申し訳ございません」


向こうから濃ちゃんが駆け寄ってくる。

濃ちゃんの向こうには数人のケット・シーの子供が木の陰に隠れ、こちらを恐る恐るうかがっていた。


「あら、遊んであげていたの?」

「ケット・シーたちの手当てが終わったのですが、みょんみょん様はケット・シーの長老とお話をされているようでしたので、この村の首領と名乗る雌猫の話を聞いていました。あいつらは・・・じゃれてくるので適当に相手していただけです。」


どうやら濃ちゃんは子供に好かれるタイプのヤンキーのようだ。

実にほほえましい絵面だ。


「ケット・シーさんたちが、お礼に食事を出してくれるというのだけれど、濃ちゃん達の分もあるというし一緒にどう?」

「俺はかまいませんが・・・みょんみょん様のお口に合うものが出るのでしょうか。」

「ちろちゃんのおかげでずいぶん美食に慣れてしまったけれど・・・でも私、好き嫌いなんてしないで何でも食べるのよ。まだ昼まで時間はあるし、もうすこし子供たちの相手をしてあげて?」


私はボールを拾って濃ちゃんに手渡す。

子供は好きなので、私も一緒に遊んでみたい気持ちもあるが、この図体では怖がられても仕方ない。濃ちゃんが子供たちを遊んであげているのを遠巻きに眺めておくことにした。


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