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幕間:感情度Maxも困ったものです

幕間:感情度Maxも困ったものです


主と眷属達が見知らぬ世界に転移し、主から眷属として守るべき3つの命令が下された。

これはそのちょっと後のお話。


いよいよこれから全員そろって初めての夕食、という時になって5番目の眷属であるここは眷属全員の前に立った。


「もう夕食の時間ですが、先に通達があったようにみょんみょん様は眷属全員での夕食をご希望です」


ここは眷属全員の前で腕を組んで声を張り上げる。

食料班のリーダーとして、今回の夕食は気合を入れて取り組まないといけなかった。

なんといっても主が初めての眷属とともにするディナータイムである。

どんな些細な失態も許されるはずがない。

眷属が無能だと思われてしまえば、自分たちは主に見捨てられる。


「優雅なディナーのご相伴に預かるというのに、まさかあなた達は料理を手づかみで食べようなんて思っていないでしょうね。栄光あるみょんみょん様の眷属とあろう者が!」


先ほど主から話があった。

眷属はみな主の姿を拝謁し、声を拝聴したことで気分が高揚しているのこともあって、ここの話は上の空のようだ。


「ちょっと!私の話に興味ないのもわかるのだけれど、あなた達が下品で野蛮に食事をとって、みょんみょん様のご不興を買ったらどうするつもりなの!?ふみから聞いたのだけれど、昨日の昼間、濃墨や薄墨が大サソリにかぶりついたのを見て、みょんみょん様は大層不快になられたそうよ!」


その言葉に濃墨は気まずそうに苦笑いをするが、薄墨は不満そうだ。


「みょんみょん様はそんなこと気にしてないっすよ!」

「黙りなさい、みょんみょん様はお優しいからあなたに何も言わなかっただけで、あなたが気付かないところで眷属の評価が下がってるの!」

「食べることに夢中なあなたは気づかなかったようですが、無作法なあなた方の食べ方を見てみょんみょん様は絶句されておりました。」


ふみがここに同調する。

薄墨も反論できないようで、それ以上は何も言わなかった。


「みょんみょん様はナイフやフォークといったカトラリーを用いて食事をされるわ。私たち眷属もそれに倣うべきなのはわかるわよね。重鎖に全員分のカトラリーを作ってもらったから、これらを使いなさい。ちろに今から使い方の手本を示してもらうわ」


するとフットマン達が簡易の机と椅子を運んできて、そこにちろが座る。

そこに重鎖がナイフとフォークを置いた。


「ナイフは右手、フォークは左手です。このあたりをこのように指を添えて持ち・・・」

「ナイフとフォークを23個ずつとか言われたから作ったけどよ、なんで俺たちがここの言うことに従わねぇとなんねぇんだ?」


得意げにレクチャーを開始しようとしたちろの言葉を、重鎖が遮る。

重鎖はその場で胡坐をかくとここを睨みつける。


「みょんみょん様の役に立てるってぇ話だから仕方なく従ってるけどよ、本当にみょんみょん様のためになんのか?俺はまだいいけどよ、食料班のやつらは気の毒だぜ。なんでメスの言いなりになんねぇといけねぇんだよ。」

「あのねぇ、私はみょんみょん様の為に」


ここも喧嘩を売られて買わないような性格ではない。


「みょんみょん様の為になんなら何でもやってやらぁ。でも、メスに偉そうに言われんのは気に食わねぇ。食器なんざ適当に使うさ、もう部屋に帰っていいか」

「まぁまぁ、重鎖。とりあえずちろの話は聞こうぜ?どうやら俺たちが汚ねぇ食い方してみょんみょん様の気分を害したのは本当らしいさ、お前だってみょんみょん様のご不興を買いたくはねぇだろ?」


見かねて仲裁に入ったのは濃墨だ。


「うっせぇな。俺はメスの言うこと聞くなんてまっぴらごめんだ。メスなんてさっさと出て行けばいいのに、いつまでたってもいやがるのが目障りなんだよ。俺がお前らを追い出してやってもいいんだぜ」


そういって広間に隣接する武器作成室のドアをあけようとする重鎖の手をしたたかに打ち据えた者がいる。

ななんだ。


「言わせておけば、みょんみょん様を第一義に考えるべき我々が、貴方は言い出した相手がメスだからとかいう取るに足りない理由のためにみょんんみょん様の至高なるディナータイムの雰囲気を損ないみょんみょん様がご不快になられても構わないと。」

「いや・・・」

「そもそも、ここは食料班のリーダーだと了承はいただいているし、そんなここ達に協力するよう先ほどみょんみょん様もおっしゃった。さらに言うと、みょんみょん様は眷属同士ある程度仲良くしろともご下命いただいただろう。その神々しくも清らかに澄んだお声がまだ私の体の中では響いているというのに、なんだね貴方の先ほどの態度は。」


重鎖が何かを言いだそうとしても、ななんのまくしたては止まらない。


「なにより、みょんみょん様は眷属を大事にされる方だから、貴方がメスを毛嫌いしていることを知れば、さぞ深く悲しまれることだろう。そしてもし誰かがみょんみょん様に貴方の発言を上申したら、巣から追い出されるのは貴方の方ですよ。」

「なんで俺・・・」

「メスたちの方はメスを毛嫌いしている貴方とも上手くやろうと歩み寄っているというのに、貴方が不和をまき散らすからでしょう?気の毒に、巣から追い出されてしまったら貴方が大好きな炉の手入れもできないし、鉄に触ることもできない。なによりみょんみょん様のお役に立つことなんて絶対にかなわない。みょんみょん様は他の眷属と融和できない不出来な貴方のことでさえも大切に思われているから、貴方を放逐する際にもきっと深く心をお痛めになるだろう。なんとも主不幸な眷・・・」

「わぁった、わぁったよ!ちろの話も聞くし、メスとも最低限の付き合いをする、それでいいだろう?」


重鎖もさすがにきまりが悪かったようで、逃げるようにちろのテーブルの前に座った。


「だからみょんみょん様に告げ口なんてしないでくれ」

「そんなことはしませんよ。そもそも、みょんみょん様の深淵なる英知は全てお見通しです。ですので、もしも私達が品行方正である貴方の讒言をしようとも、それはみょんみょん様にとっては小童の空言でしかありません。」

「ななんもさ、時間もねぇしとりあえず、ちろの話聞こうぜ?」


ななんの主語りが始まる気配を察して、濃墨が先手を打つ。




「え、ななんちゃん、自分より私の方が頭いいと思ってるの?嘘だぁ~www」


みょんみょんこと私は、念願だったホームの南側にある大きな湖に散歩に来ています。


水がとっても澄んでいて、小さな小魚や水生生物が楽しげに泳いでいるのがよく見える。

満潮時のマングローブみたいに浅瀬に根を曲がりくねらせ水面から幹を出す木が天高く垂直に伸びて、木漏れ日が水面で踊っている様はとても幻想的だ。


「それか、みんなの前で私は頭がいいと印象操作しておくことで、そのうちに私がぼろを出したときにみんなが私に失望するように仕向けている・・・とか?」

「いえ、みょんみょん様は神の叡智をお持ちだとななんは(・)判断しているようです」


カラス君、その“は”というのはなんだね?

まるで本当の私は神の叡智を持っていないと言いたいとでもいうのかい?

そうだよ、そんなものは持ってないよ!正解!!


「『みょんみょん様は眷属を試すために今回の一件を企画されたという可能性に気づいていたのにもかかわらず、行動を起こせなかった。意志薄弱な自分に忸怩たる思いだよ。』などと言っていました」


私が出奔した一件はななんちゃんの中では、命令に盲目的に従うのではなく命令の意図を理解して自分で判断し行動する試練だったことになっているらしい。

苦し紛れのあの言葉本気で信じてるの?

もしかして、ななんちゃんの高INTは忸怩たるとかいう難しい言葉が瞬時に出ること以外に有効利用できてないの?


「と、とりあえず、ななんちゃんに失望されないように、ななんちゃんの前ではぼろ出さないようにがんばろ・・・」


期待を裏切られて逆恨み、ホームごと蒸し焼き心中エンドとか嫌だもんね。

ななんちゃんはそんな陰湿キャラじゃなくて、華麗に裏切ってくれる方の陰湿キャラだからね、大丈夫大丈夫。


次から2章です。しばらくお休みします。

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