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1-9. 異世界での日常(2)

「では、少し先を見てきます」


カラス君はかなり不満な様子だが、濃ちゃんと薄ちゃんに目配せすると自分は東側の方へ走っていった。


あの一件以来、カラス君は私が無謀なこと言い出してもあんまり反論しなくなった。

私をあまり縛り付けると極端に無謀なことを突拍子もないタイミングでしでかすという前例ができたので、締め付けを緩めたらしい。

申し訳ないとは思うんだけど、私も適度にガス抜きはしたいからね、ある程度自制をしながらね、ね?


濃ちゃんは少し私から離れて前を進んで、薄ちゃんは私にぴったりくっつく。


ヒーラーが前を進んでタンクが守る対象にくっつくのはゲーム慣れした私には変な感じがするけど、敵がどこから来るかわかんない状況でこの二人で私だけはなんとしても守るという想定ならこういう感じにならざるを得ないのかな。


『みょんみょん様、南東の方角500mから何者かがこちらに走ってきています』


カラス君から伝達<コール>だ。

他の2人にも伝えているようで、薄ちゃんが私の斜め後ろで臨戦態勢を取る。


『敵はLv.1、ケット・シー・・・の幼体のようです。まっすぐこちらに向かっていますが、このままの速度ですと接敵はおよそ100秒後。』

「Lv.1にしても遅いっすね。用心するにこしたことはないですし、とりあえずみょんみょん様はちょっと動かないでくださいね」


薄ちゃんはぶ厚い大盾を構えて、敵の方向を凝視している。

ケット・シーというのは猫の妖精で、「メガラニカ」では猫に羽が生えた可愛らしい存在と聞くけど、レアモンスターなので遭遇したことがなかった。

是非この目で拝んでみたい。


『さらに後ろ100mほどにも敵性反応あり・・・こちらはLv.5の魔狼と思われます。ケット・シーは手負いです。おそらくケット・シーは魔狼に追われ逃げているようです。』


手負いの子供と聞くと俄然ケット・シーを助けたくなる。

獲物を追ってるらしき魔狼には何の罪もないけどね。


『ねぇ、そのケット・シーを助けて、魔狼を追い払うことはできる?』

「とりあえず、やってみましょう」


言うないなや、濃ちゃんは走り出す。

藪をかき分けるガサガサ音が遠ざかっていき、程なくしてギャンギャンという狼の悲鳴が聞こえた。


『魔狼は追い払いましたよ。』


濃ちゃんの報告が入ったので、私は薄ちゃんを連れて該当の方角へ進む。


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