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1-8. 再始動(4)

「みんなこれを見て。これは焼印です。先を火鉢で熱して皮膚に押し付けると、先端の形に応じて火傷になって痕が一生残ります。火傷なので結構・・・かなり痛いです。」


本当はタトゥーにしたかったんだけどね。

タトゥーは流石のきゅ~たんもできなかったんだ。

まぁきゅ~たんは悪筆だって私が設定しちゃったものだから、彫れたとしても文字を彫らせるのは危なそうだな。


で、きゅ~たんにタトゥー彫れる?って聞いたら、眷属にするのなら簡便な烙印にするのはどうかって言われたんだよね。


家畜っぽくて私は少し抵抗があったんだけど、相談した濃ちゃん達は忌避感ないみたいだし、ファッションで焼印を押す人もいるっちゃあいるらしいしね。


「この先にある文字はローマ数字というものです。1(Ⅰ)から23(ⅩⅩⅢ)、AからZまで作ってもらいました。」


いや~、仲間NPCの体に通し番号を入れるの、やりたかったんだよね~

でも、それを思いついたのが11番目の仲間NPCのよいっちゃんのキャラデ考えてるときで・・・

よいっちゃんから入ってるのにえっ君までに入ってないのも悲しいから、結局やってなかったんだよね。

ふみちゃんには設定として書いてたけど。


「この焼印は私のN・・・いえ眷属であるしるしでもあります。この標があるということは私の大切な存在だということで、私はそんな大切なあなた達を捨てたりはしません!」


今回、NPC達の間で“自分たちは主に捨てられた”というデマが広がり、それがショックで体調を崩した子が多かったということをうけて、しっかりと目に見える形が残ったほうがいいかなとも思ったのね。それで、以前から画策していた通し番号を入れることを思い出した所存です。

ちなみに、みんなを捨てるなんて私には考えられません!

っていうか、私はNPCいないと食料調達もできないから、捨てられると困るのは私の方なはずなんだけど??


「ちなみに、どこに焼印を押すかは私の気分次第です。はい、異論ある蜘蛛は挙手!」


はい、予想通りだれも異論言ってくれない~


みんな私の手元にある焼印を興味津々で見てる。


仕方ない。


「じゃあ、濃ちゃん、前に来てくれる?」

「あ、はい」


事前に伝えてなかったので少し驚いたようだけど、濃ちゃんは前に来てくれた。


「こうやって熱々に熱した焼印を・・・今から押し付けます。ここ、服めくってくれる?めっちゃ痛いけど動かないでね」

「はい」


私は先端が赤くなった焼印を持ち上げ、小さく「痛いよ~」「痛いよ~」って繰り返す。

濃ちゃんは私が指示した通りに服をめくりあげて、平然としている。


正直、私の方がビビっている。

焼印なんてやったことがない。

震えだしそうな腕を、震えないように虚勢を張るので精いっぱいだ。


濃ちゃんの表情をうかがうと、物おじしている私に気づいたようで、他のみんなが気付かない程度に微笑み返してくれる。


「大丈夫ですよ」


他のNPCに聞こえないように言う、すごいちっちゃい濃ちゃんの声。


私は意を決して、濃ちゃんの臍の右上あたりに焼印を押し付ける。


ジュっという音とともに、ふんわり肉の焼けた匂いがする。


焼印を引くと、濃ちゃんの皮膚はうっすらⅠの形に赤くなっている。

これでいいのかな・・・


「い、痛かったでしょう?」

「まぁ、痛いですね」


濃ちゃんは平然と言ってるから、めちゃくちゃ痛いというわけではなさそうだけど。


「これ、応急手当<トリート>かけてくれる?ばい菌入っちゃいけないし。応急手当<トリート>だったら痕は残るから」


私に言われて濃ちゃんは低級治癒魔法の応急手当<トリート>を使用する。

応急手当<トリート>なら私も使えるんだけど、ここから他のNPC達に焼印していくうえで、私が焼印した後で濃ちゃんに治癒魔法かけてもらう都合上、濃ちゃんの火傷も自分で治してもらう。


治癒魔法を使うと、赤いだけだった皮膚がⅠの形の赤黒い瘢痕を形作る。

本来は水疱ができたりする過程があるけど、そこをぶっとばしてすぐに出来栄え確認できるの、やっぱり魔法って便利だな。

なにより、すぐに魔法で治すから、痛みも焼印押す時だけだと思うと私の精神的負担も少ない。


「いい感じね。じゃあ、ここからみんな順番に焼印入れていくから、濃ちゃん終わった子の手当てお願いね」

「了解しました」

「あ、濃ちゃんはデモンストレーションとしてみんなの前でやってもらったけど、服をがっつり脱いでもらわなきゃいけない子もいるから、ここからはカーテンで隠すね~順次入ってきて!」


織糸スキルで作ったカーテンでスペースを作る。

その中に入る前に濃ちゃんをちらっと見ると、興味津々なきゅ~たんに瘢痕を見せていた。

その表情はどこか誇らしげで嬉しそうだった。


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