1-8. 再始動(1)
8.再始動
私が目を覚ますと、驚くべきことに夜になっていた。
8時間も寝てしまったらしい。
体を起こすと、部屋の隅で恐縮しているAちゃんがいた。
「ふふ、Aちゃん、こっちきて?体の方は大丈夫?」
私はAちゃんをもふもふしながらまだ寝ぼけている頭で思案する。
考えなければいけないことは多いけど、とりあえずNPC褒めちぎり部屋巡りを再開しよう。
いや、まず先に・・・
「ギギギ・・・ギギギ・・・」
Aちゃんの話では、お風呂も夕食も準備ができてるらしい。
NPC達にとって、最優先すべきは私。
つまり、まず私のことを最低限は済ませておいて、褒めちぎり部屋巡りはそのあとの方がいいはずだ。
「Aちゃん、夕食をお願いしてもいい?」
「ギ」
Aちゃんは見事な素早さで部屋を出る。
しばらくするとAちゃんと一緒にちろちゃんがいつものカートに乗せた豪華な夕飯を持ってきた。
「ちろちゃんも回復したのね、よかった!」
「ご心配賜りましてありがとうございます。しかも、みょんみょん様は外にお出になられている間もアイテムボックス内の料理を召し上がっておられたとのことで、大変光栄でございます。アイテムボックス内の料理は補充しておきましたので、御入用の際は使用くださいますよう」
病み上がりの体なのにえっ君が言及していたように大量の料理を作ったようだ。
「ちろちゃんのご飯はすごくおいしいから、もうちろちゃんが作ったご飯以外は私食べられないよ!つまりはちろちゃんの体調不良は私にとっても一大事だからね!」
ちろちゃんは、私に人間を使った料理を出したことで私が怒って出奔したと思い込んで、私がいなくなった直後に厨房ですべての腕を自らかみ砕いたらしい。
こんなかわいいお手手を傷つけるなんて、ダメ、絶対!
「なんというお言葉!幸甚の至りでございます。」
ちろちゃんは細めた目を潤ませて、体を喜びに震わせる。
しかし職務を思い出したのか、頭をぶんぶん振ったかと思えばしっかりとした手つきで料理を取り出して私の前に並べる。
「前菜は蜂の脳のグリルマリネでございます」
お皿の上にはこぶし大のザ・脳みそがきれいに並べれている。
美的センスの差異まで思い出させてくれるの、ちろちゃんは優秀だと思うの。




